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夢をあきらめない 〜思いよ届け、舞いあがれ〜

母の遺していたノートに、新聞の切り抜きが一枚挟まっていました
それは 解きかけの数独でした

またあとで続きをしようと思っていたのか、
途中で諦めて放棄したのかはわかりません

母は昨年9月に亡くなるまで 大阪の実家で酒屋を営んでいました
暇つぶしにお客さんのいない時間に店先でやっていたのかもしれないし
店を閉めてから夜寝る前にやっていたのかもしれません

数独なんてやってたんだ
ずっとやっていたのかな
気まぐれにやってみたのかな

わたしは離れて一人暮らしをする母を気にかけていたつもりだったけれど、あとに残された様々なものから、母自身のことや日々の生活のことを よくわかってなかったんだなぁ って思い知らされています

母は、わたしに心配をかけるような言葉や声や表情を何ひとつ見せませんでした
いつでも強くて明るかった
そう見えていました
何を聞いても「だいじょーぶぃ 」としか言わなかったし、わたしが心配を口にしても「毎日ほんま幸せやねん」とからりと笑ってのけました

けれど、もしかしたら胸のずっと奥のほうには 不安やさみしさがあったのかもしれない
悟られまいとするごまかしか、母自身も気づいていない潜在意識か、
自分にできることを探しながら なんとなく気持ちを紛らわせながら日々を過ごしていたのかもしれない…

そんなことを考えると、 頼りない筆跡の数字にも、埋められてないマス目にも、なんだか切なくなりました

「なにゆうてんのん、そんなんちゃうちゃう〜」
そんな母の声が 空から聞こえてきそうだけれど
うん、ただ楽しんでいただけかもしれないけれど…



昨年度に続き、今年度もNHK全国短歌大会にチャレンジしました
そして ひとつ、というか ふたつというか…
ひとつの歌に 複数の選者の方から賞をいただきました
そして更に3首に入選をいただきました

すべて 母を詠んだ歌でした

母を亡くしてからバタバタと過ごすなか、締切ギリギリで応募しました
前回は 手書きの応募用紙を郵送しましたが、今回は間に合わず 携帯からインターネット投稿しました

NHK全国短歌大会
・自由題部門
・題詠部門(今年度は『 千 』: 与えられた題字を短歌のなかに入れて詠む)

自由題2首、又は 自由題2首+題詠1首 をひと組として応募する
ひとり何組でも応募可能
(応募には投稿料が必要)


【選考】
全応募作品の中から 予選選者18名によって予選選考を行う
予選通過した入選作品の中から、10名の本選選者それぞれが入賞作品を決定する
(入賞選出作品が重なることがある)

入賞
⭐︎特選 一席(自由題)1首
⭐︎特選 二席(自由題)1首
⭐︎特選(題詠)1首
⭐︎秀作(自由題+題詠)計25首
⭐︎佳作(自由題+題詠)計55首

本選選者それぞれが選出した入賞作品のうち、自由題 特選一席と題詠特選 が大会大賞候補となる
この中から大賞が大会の最後に発表される
(今回は、題詠特選が 選者おふたりで重なったため、大賞候補は19作品となった)


【今年度 本選選者】
江戸 雪 、小島 なお、三枝 昂之さいぐさ たかゆき、笹 公人、
佐佐木 定綱、高野 公彦、俵 万智、千葉 聡、
永田 和宏、ひがし 直子
(五十音順、敬称略)

今年度 応募総数(自由題+題詠)17,004首
うち、予選通過作品 3,404首

今回、自由題2首+題詠1首を 二組(自由題 4首と題詠 2首)6首を提出しました
(昨年度は自由題2首と題詠1首の 3首を提出、うち ひとつ入選をいただきました)

少しでも成長できていたら嬉しいなと思います

特選、秀作には 作品の入った賞状が贈られます


選んでくださった江戸 雪さんも俵 万智さんも、奇遇にも わたしの故郷 大阪のご出身です
江戸 雪さんは朝ドラ、NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の短歌指導を担当されているそうです

この大会で知って 初めてドラマを観るという失態…
その登場人物のひとりは 歌を詠み、短歌賞に挑戦し、賞を獲って歌人の道へと歩んでいました

ストーリーはもう終盤
昨年10月からスタートしていました
3月いっぱいで最終回を迎えます
過去回を検索して辿っています


夢へかける思い、挑戦、葛藤
プロとして歩む道のりとその苦悩
家族、家庭、家業に直面する問題やその行く末
家族や仲間との絆、思いやり、信頼関係
言葉の温度、言葉の力、気持ちを言葉にして伝えることの大切さ…

あらゆることが自分にも重なって胸に響きます
物語の舞台となる町もまた 大阪なのでした



“ 入選や入賞するというのは、たまたまクジに当たるようなもの ”
そう選者の方はおっしゃいます
だから選にもれたからといって、悪いことでも落ち込むことでもない
それも たまたまのこと
選ぶのもまた人なのだから
なので もっと気軽に楽しんで、どんどんチャレンジしてほしい、と

それは、どんなコンテストや試験や試合などでも同じなのだと思います
コンディションやタイミング、インスピレーションは“運”みたいなところがあります
それもまた 出会いのご縁や巡り合わせ

うまくいかなくても 諦めずに続けていたら “幸運”が巡ってくるかもしれません



母はよく「やってみなわからへん」と言っていました
それはつまり、やってみなさいということです
やらないことには始まらない

「買ってみなわからへん」
そう言って何十年も買い続けていた宝くじは、結局 最後まで当たらずじまいでした

「楽しいからええねん」
「当たればラッキー、儲けもんやん」

夢はもっていても、はじめからそれほど期待はしていませんでした
簡単なことじゃないって知りながら、ほんの小さな可能性を母は楽しんでいました

「こうしとけば良かったって あとで後悔するんが一番イヤやねん」



チャレンジすることは、自分を成長させるために必要なことです
前進するための発見が必ずあって、どこかに課題が見つかります
それをクリアするために自分なりに努力します
たまたまだとしても、こんなふうに評価をいただけた時には 大きな自信にもつながります

“いつかきっと成功する”
最初からあきらめずに そう自分を信じてみることが、初めの一歩なのかもしれません


まもなく新年度のスタートです
みなさんも 趣味や生活、仕事、学業、恋などで
ぜひぜひチャレンジしてみてください

わたしも、精一杯の思いを込めた作品を作って また挑戦したいと思います
ダメ元!当たって砕けろ! この意気込みで
後悔しないように
夢をもって 楽しみながら

「やりたいと思ったことはやんなさい」
「小さい失敗は いくらでもしたらええねん」



桜は満開を過ぎて早くも散り始めました
わたし頑張ってるよ って 天まで届きますように
春の風に乗って 花吹雪とともに
思いよ届け!舞いあがれ!

どうぞ よい一日を、よい一週間を、新しい春を



短歌、今ちょっとホットなようです…




#103.   〜 入賞・入選作品 4首 〜

⭐︎ 残された母のノートに一片の途方に暮れたままの数独
(第24回 NHK全国短歌大会 自由題部門 入賞
【秀作】江戸 雪 選)
(同大会 入賞【秀作】俵 万智 選)
(同大会 入賞【佳作】東 直子 選)

⭐︎ 「お父さんの歳を三つも越えたし」とさやかに笑い逝く秋の空
(同大会 自由題部門 入選)

⭐︎ 秋夕焼 母の遺した自転車にまたがるサドルの低く低く
(同大会 自由題部門 入選)

⭐︎ 恐ろしき千里眼なり 命日となる日に母は丸を遺して
(同大会 題詠部門 入選)

     ー ちる ー

第24回 NHK短歌大会 入選作品集

今回残念ながら選外となった2首も
とても思い入れのある作品です
機会があれば またエピソードと一緒に
ご紹介させていただこうと思います

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