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ハウ・トゥ・サバイブ ベルリン移民に聞くジャスィとアスィール(パレスチナ) -5 「パレスチナのムスリムもクリスマスを盛大に祝う」

・西側メディアはパレスチナの宗教やカルチャーの多様性を隠している


E: パレスチナの人は主にどういう仕事をしてるの?

A: お金を盗んでる。(笑)

E: は?

A: 50%くらいの人はパレスチナの当局関連の仕事をしてるよ。

E:  公務員ってこと?警察官も含めて?

A: ううん、当局の別の部門で。
パレスチナではお金は実質上の首都のラマッラーかベツレヘムに集中してて、ラマッラーは大都会だから、お金以外にもパーティとかドラッグやアルコールも出回ってる。
て言っても、こっそりとね。
(ネットの写真を見せながら)これがラマッラーの17年前に爆撃された時の写真よ。
私はここに住んでたわ。
Jassiはこの時エルサレムに住んでた。

J: でも、この時は飛行機から爆弾落としたの?

A: 戦車からよ。

J: ドローンじゃない?

E: イスラエルの軍隊って17年くらい前から既にドローンを使ってたの?
ドローンが使われ始めたのはせいぜい10年前くらいからだと思ってた。

A:(ネットの記事を調べて)ごめん、間違ってた。
戦車じゃなくてドローンからだった。
私の記憶の中では戦車のイメージが強烈に残ってたから。
私はパレスチナ大統領府の近くに住んでたので、(葬儀の後にエジプトから)移送されて来たアラファトの遺体も見た。
私の記憶にあるのはとにかく爆撃されてたこと。
窓に近づくことを禁じられてた。
もちろん弾丸が飛んできたりするからよ。

何故だかその時飛行機を見た記憶がないんだけど、でも、記憶がないから実際なかったとは言わない。

E: その時何歳だったの?

A: 6歳か7歳、今は25歳。
ほとんどの部屋に窓があったから私たちは廊下で過ごしてた。
ある時こっそり窓から外を覗いてみると戦車が車をぶっ潰してて、妹たちに「ねえ、こっち来て見てみな!」って言ってたのを覚えてる。

J: イスラエル軍は戦車で車を壊して遊んでたのよ。
沈黙を破る』っていう団体があって、イスラエルの元軍人が退役後に、自分たちはなんてことしてたんだろうと思って、彼らの視点から自分たちが実際にパレスチナでしたことを発信している団体なんだけど。
二人ずつで戦車に乗って路上に停まってる車をどのペアが一番たくさん壊せるか競ってたって彼らは言ってた。
ゲーム感覚なのよ、彼らには。

E: そういう親パレスチナ的なユダヤ人は増えているのかい?

A: うん、増えてはいるけど、そんなに多くはない。
他にも「ジューイッシュ・ヴォイス・フォー・ピース」っていう団体もある。

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(“A LIFE EXPOSED Military invasions of Palestinian homes in the West Bank November 2020”)

E: 彼らはイスラエル政府に影響力があるの?

A: イスラエル政府は彼らを嫌ってる、だって彼らは親パレスチナだから。
親パレスチナのユダヤ人もいるの。
知ってた?Jassiのお母さんもユダヤ人なのよ。
Jassiは半分パレスチナ人で、半分ユダヤ人なの。
なのでこれは反ユダヤ教とか反ユダヤ主義とかではないの。

ユダヤ人とはこういう奴らだとか、ユダヤ教はこうだみたいな話をしてるんじゃない。
ここにいる私の親友のお母さんはユダヤ人だけど、Jassiはパレスチナ人でもある。
例えば(イスラム教国の)モロッコにはアラブ人のユダヤ教徒が沢山いて、彼らはモロッコの社会でちゃんとリスペクトされている。
西側のメディアはこういうイメージを人々に見せたがらないの。
西側メディアは、パレスチナ人は全員ユダヤ人を憎んでいるみたいに思わせようとしている。

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(今は非公開設定になっているBoiler RoomのDJ Sama Abdulhadiの動画のページにあった書き込み)

E: 日本のメディアでもそういう報道してると思う。

A: 問題なのはイスラエル国家よ。
問題なのはシオニスト国家であってイスラエルの人々じゃない。

例えばさっきも話したじゃない、パレスチナ政府はすごく問題があるって?
パレスチナ政府は私たちをレプレゼントなんてしてない。
パレスチナ政府は私が何者かをレプレゼントしてる訳ではないし、私のモラルをレプレゼントしてもいない。
これはもちん、他の人々にも当てはまることよ。
だから「え、あなたってイスラエル人なの?じゃあ、あなたはこれこれこういう人よね?」みたいな考え方は全くしてない。
イスラエルに一度も行ったことのないユダヤ人だって沢山いる。
彼らはただ宗教がユダヤ教なだけで、シオニスト国家のイスラエルとは全く関係がない。
私たちが戦っているのは彼らじゃないの。 
私たちが戦っているのは明白に、レイシストで植民地主義者のシオニスト国家イスラエルなの。
宗教とは関係がないのよ。
西側メディアが私たちの本当のカルチャーを見せないようにしていることを私たちはハイライトしなきゃといけない。
音楽でもなんでも私たちのカルチャーを見せないようにして、私たちが同じ人間に見えないようにしている。
だから私たちはこのパレスチナの文化を発信する団体を作ったの。
カウンターとして。
私たちのアートやカルチャーや、宗教さえも含めて、その本当の美しさを発信したい。
私はムスリムだけど、私は私のやり方でムスリムなの。
私は喫煙したり、お酒飲んだり色々やりはするけど、私は自分のことを文化的にムスリムだと思ってる。
お祈りもするし、最近はたまにサボってるけどラマダンでは断食だってするし、私はイスラムの教えを実践もしてる。
宗教が教えるように貧しい人に寄付もするし。
ベルリンのほとんどの人だって別に熱心なキリスト教徒って訳じゃないけど、みんなクリスマスとかは祝うじゃない?
キリスト教をカルチャーの一つとしてカジュアルに楽しんでるみたいな人が殆どでしょう?
だけど、なぜかイスラム教やユダヤ教では、そういうカジュアルな宗教との付き合い方が存在しないみたいな印象操作がされてるのよ。
あたかも、全てのイスラム教徒やユダヤ教徒はレイシストで原理主義的で女性蔑視でみたいな。

でも私に言わせればそれは全然事実じゃない。
イスラム教も、私たちをレプレゼントするカルチャーの一つなのよ。
私はムスリムで、ムスリムのカルチャーをレプレゼントしてるけど、私はパレスチナの人々が変わって来てるのを見てる。
知ってるでしょ、イエス・キリストもパレスチナで生まれたのよ。
だからクリスマスはみんな大騒ぎで、今や私たちのカルチャーの一つになってる。

クリスマスツリーがあちこちに立って、イスラム教の指導者もキリスト教の指導者も一緒にクリスマスを祝ってる。
パレスチナには宗教の多様性もあるのよ。
私はパレスチナにキリスト教徒の友達もいるし。

E: パレスチナにはキリスト教徒は多いの?

J: 今は多くはない。
歴史的にはキリスト教徒は沢山いたんだけど、1948年にイスラエルが建国されて以来、ヨーロッパの教会がたくさんお金を投資してパレスチナのキリスト教徒がヨーロッパに移住するよう支援したのよ。
だけどイスラム教徒にそういう資金援助はなかった。
だからキリスト教徒だけが減っていったの。
30年前とか50年前と比べたらずーっと少ないわ、ウェストバンクでもエルサレムでも。

A: でもベツレヘムにはーーそこはイエス・キリストが生まれた場所だけどーーキリスト教徒が多いよ。
まあでも……私やJassiはパレスチナ人の中でも相当オープンな部類なの。
多分、私たちくらいオープンなのはパレスチナ人の3、4%くらいだと思う。
80%以上のパレスチナ人はすごく保守的なの、実際。

J :私たちは恵まれた環境で育って、(人的文化的な)リソースも多かった。
例えば私たちは私立の学校に通ってたし、私の親は外国でも暮らしていたから私は外の世界も知っていた。
私たちは二人とも多くのパレスチナ人より恵まれた環境で育ったけど、だからこそ果たせる役割があると思ってる。

E: じゃああのBoiler Roomで踊ってた人たちもマイノリティなのかい?

A: そうよ。
あそこにいたのは皆んな私達の友達。
あそこは私たちが毎週木末パーティする場所なの。
私たちには金曜が日曜だから、木曜が土曜なんだけど。
でも、そんなにいっぱい人、映ってなかったでしょう?
そういう人は多くはないのよ。

J: 大都会のラマッラーで育ってたり、十代の何年かを外国で暮らしたり、平均より裕福だったり、あるいはとにかくオープンマインドで知らない文化とかに興味を持つ人はマジョリティじゃない。
多くのパレスチナ人は生まれた時からそういう状況で、外の世界に行ったことがないからそれを普通だと思っていて、変えようとするのではなく、耐えてしまう。
どうやったらこの状況が終わるんだろう……変わるんだろう…


E: でも外からパレスチナの人々をエンパワーするために情報を発信しようとしているのはメチャクチャいいと思うよ。

A: うん、正にそれがポイント。



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