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夜明けのすべて、読みました〜。

1週間前に本屋に立ち寄った際に、タイトルに呼び寄せられていると勝手に思い込んで購入した「夜明けのすべて」という本が、今一番心がうずうずしているのを感じて、積読の順番を乗り越えて真っ先に読むことにした。

本屋でこの本を購入するまでの経緯は以前書いたのでご参考までに。

夜明けという言葉と成り立つ環境、加えて頻繁に比喩として使用されるポジションとしても個人的に思い入れがある。そんなことを書いた。

全くの事前知識なしの状態で読み始めた。
とりあえずこの本は小説という認識で間違ってないんだな、と確認するところから始まった。

細かく分けて読むと物語の進行の一連性に歪さを生んでしまうことが多いと知っているのに、あろうことか冒頭の数ページは短い休憩時間にスタートさせてしまった。
休憩してるのにスマホを見ているのもなんか寂しいと思って、手持ち無沙汰になった結果、本に手が伸びたまでだが、10ページだけ進めて3日ほど放ってしまっていた。

なんとなくの入りを確認して、本腰を入れて長く読むとなったときは、最初から読み返していた。

だったら最初から気持ち入れて読めばよかったのに。

と言いたそうな表情を浮かべた皆さん、一つだけお伝えしたいことがあります。

私はこういう人間だ。

どこかで聞いたことあるようなセリフを残したところで満足したので話を戻す。

(ネタバレを極力避けて書いていくが、多少の内容の判明はご容赦ください。)

夜明けのすべて

今作のメインの登場人物の2人は、それぞれ、PMS(月経前症候群)とパニック障害を患っている。

PMSとは....月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するものをいいます。女性ホルモンの変動などの要因により、情緒不安定、イライラ、腹痛、眠気、集中力の低下、抑うつなどの症状がみられます。(日本産婦人科学会HPより引用)
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=13
パニック障害とは....特に身体の病気がないのに、突然、動悸、呼吸困難、めまいなどの発作(パニック発作)を繰り返し、そのため発作への不安が増して、外出などが制限される病気です。耐えがたい恐怖に襲われ、過度な不安によってパニックになったり、パニックになりうる状況(渋滞や電車内、バスの中など)を避けていったりして、一人で外出することが困難になり、学校や会社に行きづらくなります。
(心療内科ながうしクリニックHPより引用)
http://www.n-ushicli.com/mentalsupport/panic-disorder.html

それまでは日常として成り立っていたことが、突如できなくなる。
普段は当たり前のように仕事をして、積極的にコミュニケーションをとって人間関係を築いてきたのに、途端に症状が顔を出すと、制御が利かなくなってしまって周囲に迷惑をかけたと思うしかできず、退職せざるを得なくなり、すべてをなげうって小さな会社に転職してやってくる。

理解という理解を得られず、周囲に打ち明けるのは怖いことだと知らされて、何もかもを失った気がして、気力も喜びも湧いてこなくなっていた。のだが、相手のことは助けてあげたい、とお節介を焼くようになる。

そのお節介というのがなんともかわいらしくて、どこかおかしくて、登場人物をどんどん好きになっていく。

読み終えての所感

そんな2人を中心に進む物語。内容は是非とも読んで欲しいのだが、この本の特徴としては、病気のことについて確かに書かれているのに、話が重くならないという点だ。

昨今、性教育が遅れていると言われていたり、精神的苦痛を口にするものは弱いものだという見えない圧を感じてSOSを出しづらかったりする世の中で、自分の病気やマイノリティーさについて声を上げられない人は山ほど存在する。

(言うべきなのかどうかではなくて、あくまでも言えるか言えないかについて、という点で話を進めていることはご了承いただきたい。)

それは当たり前のようにやってくる1日を当たり前に過ごせて当たり前だ。という健康バカの考えがまかり通っているせいで、一抹の不安を抱えているだけで自分を過剰に卑下してしまう要因にもなっている。

隠しておくだけならなんとかなることであるならまだしも、突然様子が豹変してどうにかなってしまうことを、周囲に伝えておくなんて、そんなハードルの高いことはかなりの力を振り絞らなきゃいけない。
その上で相手が理解してくれて面倒を見てくれるかどうかを窺わなきゃいけない。ただでさえ申し訳ないと感じてしまうのに、「相手に伝える」という難易度MAXのミッションに飛び込むのはそう簡単なことではない。

身体の中で生み出される葛藤を抱え込みすぎて、マインドまでもが消極的になりがちだ。

これが答えとまではいかなくても、それっぽいヒントを与えてくれる場合もあれば、別解として利用していくのもありだ。もちろん物語に沿って答えに近づけていくのもベリーグー👍だ。(あり得ないぐらい古い言葉の使い方、本当に新作の本を読んだのか?)

「夜明け」とは一体なんのことなのか。少なくとも、夜明けオタク(そんなものはない)の私はおぉ〜となった。なんらかの機会でこの部分に触れていきたいなとは思っている。色々と余裕があれば、の話だが。
(思い切り内容に触れるものを書いてもいいかなとは思いつつ、今日ので大体わかるよな、やっぱやめようかなとも、、、)

そしてやはりネタバレと感想の境目がわからない。どこまで書いていいのかわからない。

何はともあれ、おすすめできる一冊だ。

病気について知りたい人や、瀬尾まいこさんの「そして、バトンは渡された」で本屋大賞受賞後第一作として期待している人は早速手に取っているかもしれない。

一冊読んでみて、特に読んでもらいたいのは、後ろめたさを感じて実体の見えない不安を抱えてしまう人だ。

誰かのせいにできなくて、とにかく自分を攻め続けてしまい、生きづらさを感じてしまっているのであれば、この本の重くない雰囲気とゆっくりと進んでいく一歩一歩の小ささが、前進するのに苦労している自分の支えになってくれるだろう。

夜明けのすべてとまではいかなくても、一冊の本が鏡となって自分を一部分を知るきっかけになればと。

人生は思っていたより厳しいけれど、救いだってそこら中にある。
生きるのが少し楽になる、心に優しい物語。
(作品紹介文より引用)

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