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文学作品

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高校生の頃に作ったものを手直ししています。あとは最近の作品です。
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#発達障害

幼き日の遠い記憶

幼き日の遠い記憶

幼い子どもの頃、隣のさやちゃんとよく遊んだ。
さやちゃんは同い年だけど大きなお姉ちゃんがいたせいか、ませて僕のことをいつも子ども扱いしていた。だから遊びはいつもおままごとで、僕は子どもの役ばかりだった。本当は嫌だった。けど当時の僕は幼い子どもで、さやちゃんに嫌だって言えなかった。だからさやちゃんがお母さんになって、ご飯を食べたり、一緒に横になって寝たりして遊んでいた。

その日も相変わらずのままご

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はじめての彼女は天然で天真爛漫な人だった

はじめての彼女は天然で天真爛漫な人だった

これは僕の初めての彼女の思い出。
彼女は時々突拍子もないことを言い出して、僕を困らせた。天然で天真爛漫。そんな言葉がピッタリだ。例えを言えばキリがない、毎日がそんな感じだ。でも僕には初めての彼女だった。だから女子ってこんなもんかな、くらいにしか思わなかった。

彼女に出会った日のことは忘れられない。
その日は朝からの雨で、学校帰りの道はしっとりと濡れていた。曇り空から細やかな雨粒が落ちてくるのを、

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熱帯夜

熱帯夜

激しい金切り声に目を覚ますと、辺りは一面の熱帯夜だった。

ひどく蒸し暑い夜だ。身体中が汗ばんでいた。襲ってきた重い頭痛に舌打ちして辺りを見わたすと、錆びた扇風機が唸りを上げて熱波を運んでいた。殺風景な天井をぼんやり見つめたが、頭では何も考えられない。現実世界がうまく認識できない。テーブルのタバコに手を伸ばすと、ガラスの小瓶が転がった。何かのクスリの瓶だ。見覚えはないが、そんな気がした。

手にと

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