うずらかご

下等遊民。本を大量に買い漁るのが趣味です。

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    とりあえずみんながんばろう

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古本コレクターの日常

僕の趣味は初版本の収集で、去年の1年間で814冊も買い漁るくらいには、狂ったコレクターをしているつもりだ。 特に興味があるのは近代文学。もうちょっとわかりやすく言うと、戦前に刊行された文学書をメインとして収集に励んでいる。 買う方法はいろいろあるけれども、やはり「世界一の古書店街」こと神保町は別格だ。東京でコレクターをしている以上、最低でも月に1回は足を運んでおいたほうがいい。 その理由は、「古書即売会」にある。 古本即売会、あるいは短く「古書展」と呼ばれることもあるが

    • 夏が終わる

      この土日でお盆休みが終わる。 下等なる遊民生活を送って久しかった僕だが、意外なことに正真正銘の無職であった期間はほぼなくて、休み休みでこそあれ労働はきちんとしていた。が、なにぶん正規の仕事ではなかったので、年末年始とかお盆とかそういう長期の休みとは無縁で生きてきたのだった。 そこにきて、今年から会社勤めになってしまったので、もったいなくもお盆休みをいただけることになった。期間は10日間。短いようで長いような、いかがなもんなんだろうと思っていたが、とってみるとこれはけっこう長

      • されど吾が積ン読の日々

        4月以降、なんだか暇が取れない感覚が続いている。 せっかく正社員になったのだからとガラにもなく規則正しい生活を心がけていて、夜は10時半には寝、朝5時半に起きるという生活をずっと続けている。まあ仕事中に寝不足とか人間的に無理をしているような辛さを感じることは現状なかったから、これはやはり良い生活なのだと思う。 一方で、時間の余裕はない。定時退社して家に帰ってからも2時間ていどしか時間がないのは、僕にとってけっこう息苦しいものである。というのも、これまでの生活では帰宅後も5

        • 僕はグローバル人材になれているのか

          職種がら、国際色豊かな労働環境であることは分かっていたけれども、実際に3週間やってみると想像をかなり超えていることが見えてきた。 僕はせいぜい英語しかわからないし、業務のこともまだよく判っていないことが多すぎるから、学生の対応を受け付けたとしても、基本的には他の人に振ることしかできない。一番多いのが「中国の先生お願いします」という注文で、あとはご指名の先生があったり、もろもろの申請の場合は僕でも少し案内できることがあったりするような感じ。 中国語、もっとマジメにやっておけば

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          社会人への助走

          3月の頭くらいだったか。ようよう4月からの正規採用が決まって、なんとなくほっとした心持で日々を過ごしていたところに連絡が来て、曰く「研修をするのだが、早めに参加できる人は3月最終週から来てもらえないか」とのことだった。 なにぶん遊民暮しなものだから、そのあたりの調整は自由である。あとは己の気分しだいだったけれども、逆に言うと正社員なんかやったことがないぶんの不安も大きいわけで、早めに慣れておきたいと3月から通い始めてみることにした。 で、1週間やってみてということだが、案

          社会人への助走

          春先の準備

          金曜付でバイトを辞して、火曜日からは新しい仕事場で働くことになる。それまでにやっておかなくてはいけないこと、行っておくべきところがあまりにも多くて、相変わらず寝る時間がない。 なんとなくタイミングがなく誂えできていなかった眼鏡を変えたのもそのひとつで、今使っているのは大学に入る直前に作ったものだから、軽く10年以上はかけ続けていたことになる。 視力はやや落ちたものの日常生活に支障はなく、どちらかというと眼鏡じたいの劣化、コーティングが剥げに剥げて視界の妨げになっているのはさ

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          新生活の訪れ

          母からお守りを贈られた。聞くところによると、僕は今年が方位厄なのだという。 ありがたく受け取りはしたけれども、そもそも「厄年」ってのすらよくわかっていないうえ、「方位厄」に至っては聞いたこともない。いったいに科学の子であるところの僕は、こういう神がかり的なものに一切興味がなく、信じようとする気持ちすら希薄なのがよくない。 ところで、4月から僕の生活は大きく変わることになった。簡単に言うと、「先生」になることが決まった。 まあ詳細はどうでもいいのだけど、自分が「新生活応援セ

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          道草も並木のにぎわい

          貧乏暇なしとはまことにその通りなのだが、ここnoteに駄文をものす程度の時間すら確保できないようなやんごとない身分ではない。更新の遅滞(あるいは途絶)は、ひとえに僕が持って生まれた怠惰の成果物である。 と、過去のエントリを見返してみたところ、前回記事を書いたのは約4ヶ月前。アリス展のレビューを書いたことなんてすっかり忘れていた。てっきり半年以上は無沙汰を決め込んでいるものと思っていたから、ブックマークツールバーに「note」の文字を見かける度に、記事を書こうとしない自分が厭

          道草も並木のにぎわい

          イン・ワンダーランド

          みんな大好き『不思議の国のアリス』のはなし。 先々週から、森アーツセンターで「特別展アリス」が開催されている。こないだ横浜でもやってたじゃん、とか思ったけど、記録を遡ったらそれは2019年。すでに3年も前のことになってしまった。 前回のアリス展で会場限定販売された図録は非常に充実していて、いまだにちょっと調べたいことがあったりすると書架から取り出して眺めている。それに展示じたいも、かなり時間をかけて楽しんだような記述があったのだけど、当時僕が書いたレポを見ると次のように書

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          バーバーショップと円安

          相も変わらず、YouTubeで音楽を聴くとなったら選択肢はほぼバーバーショップに限られている。 改めて説明をしておくと、Barbershopというのは(基本的に)男性4人で構成されたカルテットがアカペラで歌う音楽のジャンルで、個人的な印象としてはアメリカを中心に盛んな英語圏の文化である。 ここ数年は流行感冒の影響もあって世界大会やらコンサートやらが中止の憂き目を見ていたのだが、今年は2年ぶりに大規模なイベントが催された。 あまりこういうのに縁のない人生を送ってきたのだけれど

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          ウエスト・サイドあれこれ

          少し鮮度の落ちたネタとなったが、スピルバーグ監督作品『ウエスト・サイド・ストーリー』を公開直後に観てきた。 僕は映画に詳しいわけでも、特別ミュージカルファンというわけでもないけれども、1961年のオリジナル版が映画史に残る大傑作であることは、疑う余地がないと思っている。 ただし、人はいったいに記憶を美化するものである。思い出補正込みで考えると、世間で言われる「傑作度」は、必ずしも客観的な評価とは言い難い側面があるとは思う。冷静になると実は凡作だった、というのは往々にして起

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          其の父の死

          父が死んだ。 59歳という享年は確かに早いし、僕からすれば、30年弱しか一緒にいられなかったのはとても寂しい。 父は2015年に仕事場で倒れてから半身が完全に動かせなくなり、それからはずっと隣県の施設で生活していた。当時僕は大学4年で、教育実習をしているときに一報を受けたのだった。 一命はとりとめたものの、なにぶん脳疾患だったものだから、運動障害に加えて言語障害も残った。口は上手く回らないうえ、そもそも頭で文章を作ることも難しくなっていたようだった。 もちろん自宅介護

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          私小説家の死に接して

          その時、僕は自宅のパソコンに向かって作業をしていた。 すこし休憩がてら、ちらとツイッターを見やるとTLがなにやら騒がしい。「ええ……」「ショック」「マジか」等々。誰も内容に言及こそしていないが、ただならぬ事態を予感させずにはおかなかった。(言うまでもないが、私のフォローしているのは古本関係者ばかりである) そこから状況を理解するのに時間はかからなかった。 芥川賞作家の西村賢太氏が亡くなったのだ。あまりのショックに僕は己の眼を疑った。 僕が新刊を追いかけている現代作家は

          私小説家の死に接して

          ミュージカル二題

          先日、ありがたいことにお誘いを頂いて、とぱーずさんとミュージカル『Grease』を観に行った。 ジョン・トラボルタ出演の映画すら観たことはなく、wikiで簡単にストーリーだけ予習して臨んだのだが、いざ観てみるといくつか知っているナンバーがあることに気づく。バーバーショップを通じて英語圏のアンセム的名曲を聴くようにしていたことが、ここにきて功を奏したわけだ(出典を知らないあたりは片手落ちと言うほかないが……)。 内容としてはそんなに共感できるとかとか泣けるとかいうものではな

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          わが青春の漫画

          日本人は「先生」という敬称を使って媚びがちである、みたいな言説は、水木しげるの漫画「ブリガドーン現象」でのセリフだったか。確かにあまり使い過ぎるとイヤらしく聞こえる表現ではあると思う。 日本語における「先生」は、基本的に教員に対して使われるのがメインで、少し応用的に作家や議員にも使用されるわけだが、なんとなくゴマすりな感じがするので、僕は教員以外にはあまり使わないようにしている。 まして会ったことのない人物に使うことはまずないのだが、例外がひとりだけいて、それというのが漫

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          記憶の固執

          先日、ガス会社との契約を改めた。僕の住むアパートは都市ガスではなくプロパンで、担当の業者が変わったというわけだ。 僕の部屋は元々コンロが備え付けられていなかったが、そもそも料理をしない僕にとっては、もし置いてあったとしても邪魔くさいだけからこれはありがたいことだった。 したがって、僕がガスを使うのはシャワーの時に限られる(風呂給湯器もなく不経済なので湯船に湯を張ることもない)ため、プロパンが都市ガスより高いと言ってもたかが知れている。聞けば上の階の方は2人家族で料理もする

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