見出し画像

社会人への助走

3月の頭くらいだったか。ようよう4月からの正規採用が決まって、なんとなくほっとした心持で日々を過ごしていたところに連絡が来て、曰く「研修をするのだが、早めに参加できる人は3月最終週から来てもらえないか」とのことだった。

なにぶん遊民暮しなものだから、そのあたりの調整は自由である。あとは己の気分しだいだったけれども、逆に言うと正社員なんかやったことがないぶんの不安も大きいわけで、早めに慣れておきたいと3月から通い始めてみることにした。


で、1週間やってみてということだが、案外なんとかやっていけそうだなという感想を抱くことが出来たのは幸いだった。

ただし初日は地獄のように疲弊して、背中を曲げて家にたどり着くのが精いっぱいであった。研修に参加した新人がなんと20人ちかくいて、お互いに名乗るいとまもないままに必死に勉強した一日だったから、息苦しいことこの上なかったわけだ。
しかし2日目3日目とすごしていくと、まあ嫌でもお互いの名前とかキャラクターとかが掴めてきたりして、隣の人との雑談なんかもしやすくなってくる。他の会社の研修がどういう雰囲気なのかはわからないけれども、かなりシステマティックにザーッと練習ができるようなプログラムになっていたのもあって、徐々に塩梅がわかってきつつも毎日違う刺戟を受け続けるのが楽しくもあった。


まあ要するに先生をやるので、研修では当然、教える練習というところに大部分の時間が割かれた。
これから勤める学校が標準とする教え方は、他の学校、あるいはこれまで業界でスタンダードと見なされていた方法とかなり違っている。それは採用される前からわかっていたことではあったが、いざ授業体験→模擬授業(実践)をやってみると、改めてその難しさも見えてくるし、一方では良さとかやりやすさも肌身に感じられた。

なかなかハードなタイムテーブルで、だいたい1日に2つくらいずつの模擬授業をした。さらには、扱うテーマとか一緒に授業をつくるメンバーが決まるのは直前だったりしたので、十全な準備をすることができる状況ではなかった。もっとも、いくら時間をつかったところで先輩からなされるひとつのフィードバックには到底及ばないところがあると思うので、自分の対応力を発揮しつつ、いまこの場でできることをやってみるというのは賢いやり方だと思う。

グループは毎日シャッフルされたので、4日間の研修で20人ほとんどの人とお話しすることが出来たのも幸いだった。このなかで専任講師は僕を含むごく一部なのだが、非常勤であっても学校で顔を合わせることはあるわけだ。同期どうしで助け合う場面も多いという意味で、きちんと関わり合うことが出来たのはうれしい。


僕としては1週間すごしてみて、自信めいたものを獲得できたのが意外だった。
初日の段階だと、非常勤の方々の中にはすでに何年も経験を積んだ人が散見されていたこともあって、僕が果たして専任としてやっていけるのかという不安は増大していた。
が、いろんな人の模擬授業を見ている内に、失礼ながら、経験が必ずしもよい先生であることを保証しないのだということがわかってきた。有り体に言うと、人前で話すのがうまくなかったり、学生の前で使う言葉がどうも難しかったり、そういう素質的な部分での弱さみたいなものが、学生のロールプレイをしていて見えてきたのである。
翻って、僕は人前で話すのはそんなに不得手ではない(嫌いではあるけどパフォーマンスとしては悪くない)ので、相対的に先生に向いているんだなぁと思うことができたのだった。

この慢心は、初週で抱くにはさすがに早すぎるから、むしろマズいことだと考えている。自分はダメだ、と追い込んでおいた方が、現実に向き合ったときに気分が楽になるものだ。少なくとも僕はそうやって生きて来たのではなかったか。



夜型生活から朝方生活へのシフトがうまくいったのも僥倖である。

現状、夜22時すぎに寝て朝は5:30起き。学校の最寄に7:30くらいについておいて朝マック、9時に登校というリズムを守っている。多少バッファを持たせる——この言い方すら最近覚えた——くらいにしておけば、最悪すこしばかり寝坊しても対応できるというものだ。

食に興味がないので、毎日同じメニューでも飽きない

慣れるにしたがって気持ちが切れてからが問題だけれども、とりあえずは先輩方もやさしいし、頑張ればうまくやっていけそうな感じがしている、というところで、社会人第一歩を踏み出したのであった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?