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【広告展覧会・10の視点】 第二章 超現実を、あなたに。

化粧品の広告販促表現は薬事(現薬機法)による制約を受ける。けれども、いやだからこそ、化粧品のクリエイティブにはこれだけ多様で優れた“非直接的” コピー/ビジュアルが花開いたのではないか。
イメージ訴求、百花繚乱。商品メッセージはいったん純度の高いイメージへと圧縮され、脳に到達したのちに解凍される。現実的すぎるありきたりなイメージは訴求力が弱いし、奇をてらっただけの脱現実では商品の本質が正しく伝わらない。そのギリギリ手前、超現実にこそ正解はある。卓越した超現実クリエイティブは美しいアートへと昇華することも…。



ファンデ1
「AVONファンデーション」ブランドイメージ

AVON社のファンデーションは優れた品質にもかかわらず、私から見ると表現がそれに伴っていないと感じることも多かった。キャンペーンと称して常に価格訴求をしているので、どうしても安っぽいトーンに流れがち。ファンデーションだけでいくつもブランドがあったから、全体が低価格帯ブランドのイメージに引っ張られることもあった。
そこで私は「AVONファンデーション」全体を統合するイメージ、高品質の象徴となるようなビジュアルとメッセージを作ろうと考えた。
それが「THE FOUNDATION IS ART. AVON」である。

ファンデ2
「AVONファンデーション」ブランドイメージのためのスケッチ

オリエン時、私はA方向(モデル案)とB方向(ブツ案)を提示した。数日後、ADの吉田さんが上げてきた表現プランには、さらにC方向が加わっていた。私はすぐさまA方向とB方向をボツにし、C方向に舵を切った。それはモデル案とブツ案の融合という提案だった。
そのC方向をさらに加速させるために、吉田さんに送った私のメモがこれである。電話で「おそらく、まだ誰も見たことがないビジュアルになるはずだ」と説明したのを覚えている。
興味深いのは当初、私が黒バックを想定していたこと。高級で引き締まったトーンにしたかったのだろう。結果的には白バックで正解だった。このメモを見ると、私は日本語キャッチコピーを入れることにもこだわっていたようである。その考えもラフ段階で自らボツにした。



クレンジング
「ミッション クレンジングオイル」イメージ

「このオイルのクレンジングパワーを、ワンビジュアルで美しく表現する」というテーマに挑んだもの。AD吉田さんのグラフィック合成テクニックと、ヘアメイク田中さんのメイクアップ テクニックが、この一瞬に見事に注ぎ込まれている。



ペンシル
「ソフトスティック」浮遊するペンシルアート

愛用者が価格に惹かれて購入するロングセラータイプの商品だったから、無理して表現に凝る必要はなかった。にもかかわらず、「浮遊するペンシルアート」を作ってしまうのがクリエイターのさが



リップ
「クラシック リップ」復刻新発売イメージ

象牙調パッケージが人気だったロングセラー口紅「クラシック リップ」。何年も前にすでに生産終了となっていた。待ち望まれていたこの商品の再発売が決定し、復活を告げるイメージ広告を作った。AD横井さんが、50年代のアメリカのポスターを彷彿させる大胆で“クラシック”なビジュアルを発想。スタイリストの犬走さんがイメージ通りのドレスをキャスティングした。私はこの世界観をじゃましないよう、あえて「Your Lipstick is BACK!」というシンプルな直球コピーを添えた。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。(第三章に続く)


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