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【広告展覧会・10の視点】 第八章 趣味、改善。

人気ドラマの女性外科医の“趣味” は手術である。内科治療は選択しない。とにかく切除という手段にこだわる。それでもドラマだから“失敗しない”。
一方、クリエイターは企業の主治医だ。コミュニケーション分野における患部と病状を指摘し、正しい処置を施す。風邪薬を出してくれという患者に、そのまま風邪薬を出してはいけない。本当に風邪なのか? まずは自分の頭で考えて診察してからだ。その後、適切な改善で業績を回復させる。臓器移植だろうが漢方薬だろうが、手段は問わない。改善と回復が最終目的。
さらに言えば、ある者にとってそれは趣味。


「SALEキャンペーン」カタログ表紙

一般の消費者に対して、「半期に一度のお買い得セール」を告知する表紙。誰のどのようなディレクションに基づいてこうなったのかは不明だが、以前のカタログ(左)では、そのデザイン意図やキャッチコピーの意味がわからなかった。化粧品会社らしさも皆無である。
改善後の表現がパーフェクトだとは言わないが、少なくともSALEキャンペーンであることと、女性向けの美容・ファッション カタログであることは理解していただけるようになったと思う。
SALEキャンペーンは新規顧客獲得の絶好の機会でもある。既存顧客にのみ通じる特殊なコミュニケーションではなく、その会社やブランドをよく知らない消費者に対しても通じるものでなければならないのだ。

ちなみにこの表紙。SALEの高揚感を表現する最高の写真を撮るために、スタジオではモデルに何度も何度もジャンプをお願いした。さすがプロ、ポーズも笑顔もキマっているが、内心ムッとしていたかもしれません…。ごめんね。



別冊パンフレット「夏フェス」

前年までは、ごく普通に商品を並べただけの表現(左)。改善後のデザイン(右)では一人の女の子がフェス会場を巡りながら買い物を楽しむ、という構造になっている(この画像では小さすぎてわからないですよね。すみません…)。
※女の子のイラストは、第六章「ファンタジー最強説。」でご覧いただけます。

さらに色合いも夏らしいビビッドなイエローにして目立たせた。コンセプトが「夏フェス」なのだから、表現もそれに沿うべきと考えたのだ。このコミュニケーション改善により、同企画での売上げ対前年比、同年目標、ともに上回ることができました。



保存版「ポイントプログラム」パンフレット

どちらのデザインが美しいか、というよりもそれ以前の問題として、改善前の構成(左 18年前期)では「英文ロゴ」に最も大きなスペースを割いている。ポイント交換でもらえるプレゼントの紹介パンフレットなのだから、そのプレゼントを主役にして、さまざまなジャンルから選べることを写真で伝えたいと考えた(右 18年後期)。さらに言えば、保存版なのだから、地味で暗いよりは、取っておきたくなるほどキレイで楽しい方がいい。
目的を明確にしたらデザインは必然的に決まってくる、という例。



改善には覚悟や勇気が要ります。なぜなら責任を伴うからです。今までのやり方をなぞっていれば、基本、極端に批判されることはありません。けれどもそこに問題点が見えていたり、さらによくなる可能性を感じたら、勇気をもって改善していくことが必要ではないでしょうか。
失敗するかもしれません。笑われるかもしれません。それでも小さな改善の第一歩が踏み出せたら、それはきっと誰かの改善マインドを刺激するはず。小さな改善が連鎖して、気がつくとみんなで大きな改善を成し遂げていた、なんて素敵ですよね。
さあ、改善を楽しもう。政治でも、生活でも、創作表現でも、私やあなたの日々の仕事でも。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。(第九章に続く)

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