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リポート 最新石拾い ❷

北海道の春は忙しい。雪解けで露出した石を拾う季節が始まる。今回もまた車を出してもらい札幌の郊外で石を採取した。車を使ったことに賛否両論あると思う。今回も見逃してほしい。採取場所は最寄りの公共交通機関から徒歩2時間45分だった。往復5時間半で復路は石を持っての2時間45分である。身体の異様な酷使は石拾い道に反する。体が資本。石拾いもまた我々に与えられた大切な資本なのである。文明の利器が使えるところではしっかり使った方が良い。

石拾いで思わず春をみつける

今回の石拾いの目的は7月に東京で予定している個展だ。私が現在保有している石は数が少なく実現したいインスタレーションの画には合わない形も多い。大きさも思い描くものとは違う。インスタレーションと単体の作品は別の風情を持つ。展示会場、7月中旬から8月中旬という時期、私が今までやってきたことの三点を統合すると、「この展示しかありえない」という鮮明な像が脳内に立ち上がる。今回はその像を追いかけての石拾いとなった。

石を拾うにあたり管轄の事務所に電話をした。拾っても良いとの回答を得たので揚々と拾いに行く。管轄を調べるのに役立ったのは国土交通省北海道開発局のページである。

きっとみんなが目をつけた川についてのページも国土交通省のサイトのどこかにあるはずだ。ダメだと言われるのを恐れずに一度管轄に電話をして尋ねてみてほしい。その際に重要なのは下調べである。国立公園などを避け、場所はポイントを絞って伝えること。自治体によって特別な条例などがあれば仕方がないが高確率で断られることはないだろう。少なくとも私は上記のことをして川で拾ってはいけないと言われたことはない。今回石を拾った場所についての詳述は避けるが、私は電話口で近くの橋の名前を伝えた。

了承を得ていることで心に大きな安寧がもたらされ、お目当ての火山石以外にも目配せする余裕が生まれる。川をよく見てみると錆び色の石がたくさんあることに気がつく。これは硫黄や鉄分が原因であることが多い。そしてこれらの成分が付着した石は思いがけぬものを連想させる。

パン石
スープに入れた食パンではなく川に浸かった石
パン石
食パン1斤ではなく石
パン石
踏まれたコッペパンではなく石

この川にはたくさんのパン石があり、春のパン祭が開催されていた。



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