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メルカリ初出品までのイバラの道

金がない。「金のある大学生」はネッシーと同じ類でこの世の中に存在しないものだと思っている。目撃談があったとしても、だいたいがでっちあげだ。辞書で"大学生"と引いたら類義語の欄に"自転車操業"と書いてあるんじゃないか。

1.「働く」か「売る」か

資本主義社会において金銭を獲得する方法は大きく分けて2つ。労働と売却。人生の夏休みと揶揄されながらなんだかんだ時間に制約のある大学生、アルバイトで稼げる金は限られている。そもそも「夏休み=暇」の等式が成り立っているのがおかしい。なんにもない田舎に帰らなければ夏休みだって忙しい。

「売却」を実現するメルカリという便利なサービスがある。時代の5歩後ろをのろのろ歩いている僕は、購入も出品もしたことがない。今こそ使うときだ。腐っても定義上はZ世代の人間、フリマアプリなど朝飯前だ、そう思っていた。

当たり前だがまずは売れそうなものを調達しなければならない。6畳半の自室を隅から隅までひっくり返してみた。「壊れかけのWiiU」「友人がくれた世界各国のお土産」「レポートのために買ったが1度だけ読んで放っておいた本」などなど、思ったより色々出てきた。

メルカリのために友人関係に亀裂を入れるほどバカではない。まずお土産は選択肢から消える。そしていくら任天堂の黒歴史とはいえ小学校からの思い出が詰まったWiiUを手放すのも惜しい。そもそもコードがボロボロで充電が電気自動車より遅いこいつが売れる気がしない。

かくして初出品の武器はレポート用に買い集めた10冊前後の本に決まった。それぞれ1,000円になってくれりゃ1万円。嬉しすぎる臨時収入だ。

2.本人確認

「はじめてのメルカリ」なんてサイトを流し見していたら、「本人確認をしておくと売れる確率がグッとあがります!」みたいな記述が散見された。

そりゃそうだ。身元のわからず人間かどうかすら怪しい存在の所有物を好んで購入する人はいないだろう。無償で譲ると言われても躊躇する。

本人確認にはスマホで簡単に読み込めるマイナンバーカードがいいらしい。先人のブログを鵜呑みにし、マイナンバーを保管していた引き出しをあけた。が、なかった。

そこから1時間、改めて6畳半の部屋を隅から隅までひっくり返してマイナンバーを探し続けた。マイナンバーの紛失はなんとなくとんでもないことの気がする。

星新一のショートショートが頭をよぎった。池に落ちて証明書一式をなくし、個人番号も思い出せずに社会的に"いない"ものとして扱われた男、最後はどうなったんだっけ。

探している間に我らが千葉ロッテがワイルドピッチで見事逆転していたがそんなことどうでもいい。こっちは社会的信用がかかっているのだ。なーにを呑気にボール投げてんだ。

あらゆる服のポケット、別の引き出し、バッグ、財布、色々みたあげく、結局お目当てのカードは引き出しと壁の隙間で発見された。どうやら引き出しの後ろのわずかなスペースをすり抜けて奥から落ちたらしい。ゴキブリかお前は。

やっと手に入れたマイナンバーカード。わけのわからぬ達成感に浸りながらいまこのnoteを書いている。本人確認?そんなのあとでいいだろう。

お金で買えないことも、世の中にはたくさんある。



….浅い

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