マガジンのカバー画像

父親が「ヤコブ病」と診断された

68
運営しているクリエイター

2019年10月の記事一覧

祖父と父親の話

祖父と父親の話

10月31日 家族と祖父が父親のことで衝突する。

昨日の夜、浣腸をし腹痛が治ったのと、眠剤が効いたおかげで、父親はぐっすり眠ることができた。食事も充分に摂り、いつもより意識して水分を飲ませたおかげでトイレに行った際にきちんと尿が出ていた。おもしろいことがあれば笑うし、表情も和やかで、こんなに意識がはっきりしている父親を見るのは久しぶりだった。

父親は御朱印集めを趣味の一つにしていた。今日は、一

もっとみる

排泄トラブルが患者に与えるダメージ

10月30日 父親が浣腸と摘便を受ける。

ここ数日、便秘が続いていた父親は、腹部がパンパンに張ってしまい、苦しそうな顔をしていた。便意も感じていないので、排便のために力むことも難しい。嚥下が困難になっているので、水分も取りづらく、それも便秘の原因になっていた。トイレにこもって足湯をし、腹部をあっためて、ウォシュレットでシャワーをしても無駄だったので、訪問看護師を呼ぶことにした。

訪問看護師は浣

もっとみる
意識と無意識

意識と無意識

10月29日 父親の親友たちが見舞いに来る。

父親は最近、意識と無意識を短時間で行ったり来たりするようになった。いつも全身は不随運動に苦しんでいるが、それでも意識があるときは笑ったり、返事をしたりする。逆に無意識のときは目を見開いてまばたきもせず、口は尖ったり開いたままになったりして、体は右側に倒れている。残念なのは、意識がある状態は5秒続くか続かないかで、ほとんどは無意識の状態でいること。無意

もっとみる
涙もろくなった父親

涙もろくなった父親

10月28日 私の顔を見て、父親が声を出して泣く。

今日は、病状が一気に進行したように思えた。

歯磨きは完全にできなくなり、吸引歯ブラシを購入して、私が父親の歯を磨くことになった。
父親の歯は銀歯だらけで、前歯の裏側はタバコのヤニで真っ黒だった。こんなことにならなければ、一生見ることはなかっただろう。

座ることが困難になり、太ももを下に抑え込みながら膝の裏側を強く押すことで、15分ぐらいかか

もっとみる
父親がみんなの前で泣いた日

父親がみんなの前で泣いた日

10月27日 父親が家族の前で泣く。

あんなに泣いた父親を、初めて見た。

最近、父親はほとんどぼーっと過ごすことが多く、呼びかけにも答えなくなってきて、目が開いたまま意識がなくなりそのまま眠ることも多くなっていた。日常の動作は介助なしでは出来なくなっていた。介助といっても、父親が自分で行動するのをサポートしているのではない。父親の体を借りて実際には私がやっているようなものだった。

例えばトイ

もっとみる
伯母の存在について

伯母の存在について

10月26日 父親の友人たちが会いに来る。また、伯母の言葉に救われる。

今日は11時から理学療法士による派遣マッサージを予定していた。父親がなかなか朝食を食べ終わらず11時半からマッサージがスタートした。施術中、父親はとても気持ちよさそうにしていて、笑顔のまま眠ってしまうほどだった。私が遠くから親指を立てて首を傾げ、「良い感じ?」のサインを送ると、うんうんと頷いて答えていた。施術後は今まで不随運

もっとみる

「介護拒否」という壁

10月25日 介護拒否が顕著になる。

介護拒否とは、読んで字のごとく介護を拒否することだ。プライドが高かった人や、情けない、迷惑を掛けたくないと思っている人によくあるという。残念ながら父親にはすべてがあてはまっていて、先日より介護拒否が度々見られたのだが、今日は特別顕著だった。

特に食事の際は「赤ちゃんじゃない」「自分でできる」「全部食べられる」などしゃべることがあり、介護を拒否したいという何

もっとみる

同じ土台にいる祖父母の存在

10月24日 叔母のことについて伯母に話す。

父親は夜、やはり眠れなかったようで、何回か飛び起きていた。朝方になってやっと落ち着いて眠りにつき、昼頃まで私は同じ部屋で寝ていた。

父親の妹(叔母)は、前にも書いたがヒステリックな性格をしている。家事をやってくれるし、介護の経験もあるので助かっている部分も多い。だが、「~してあげる」という介護へのスタンスや、自分を心配してほしいことが分かるような言

もっとみる
はじめて聞いた言葉

はじめて聞いた言葉

10月23日 父親と本当の親子になる。

最近父親は、おそらく「夜間せん妄」という症状にうなされて、よく眠れていない。せん妄とは、認知症の方に多く見られる、幻覚、幻聴、妄想が一時的に起こり、混乱する状態のことだ。奇声とともに飛び起きたり、いきなり立ち上がろうとすることもあって危険なので、隣で寝ている私も異変を感じたらすぐに起きて、寄り添って安心させることが大切だ。どうやらレム睡眠(あまり深くない眠

もっとみる
認知症の急速な進行

認知症の急速な進行

10月21日 「近いうち限界がくるかも」と感じる。

今日の午前中の父親のようすは話しかければ反応があるし、トイレに自分から行きたいと言ったりと、割かし調子が良かった。

今後お世話になる訪問看護師の方が家にきてバリアフリーの状況を確認したりして、時刻は昼を回った。

私は風呂の大掃除をしたり、洗濯物をたたんだり、インフルエンザの予防接種に行ったりして、夕方まで忙しくしていた。その間父親は目を開け

もっとみる
どうしようもない苛立ち

どうしようもない苛立ち

10月22日 父親に、そして親戚に、どうしようもない苛立ちを覚える。

はじめてヤコブ病の父親に苛立ちを感じた。これはどうしようもない苛立ちだったので、すぐに自分で原動力へと昇華できた。

朝食をとっている時、介護役の私には他の家族から指示がとんでくる。「食べにくいだろうから切ってやれ」「空いたスプーンにおかずを乗せてやれ」といった「やれ型」の指示もあるし、逆に「今は噛んでるんだから邪魔するな」「

もっとみる
車いすでの外出について

車いすでの外出について

10月20日 父親と車いすで外出する。

昨日退院した父親を連れて、電気シェーバーを買いに行った。入院中に使っていたものの切れ味が悪くなってきたので、いっそのこともっと使いやすい物に買い替えてしまおうという話になったのだ。家電量販店に勤めている従弟の店に行き、仕事ぶりを見ながら買い物を楽しんだ。

今日は日曜日で天気が良かったせいか、ショッピングモールは家族連れでにぎわっていた。ショッピングモール

もっとみる
退院の日

退院の日

10月19日 父親が退院する。

父親の退院は、積極的な意味を持っていなかった。「現代の医学では治せない病気だと分かったので、これ以上病院にいても仕方がありません。ですので退院してご家族の時間を作ってください。」という意味での退院だ。つまり、消極的な退院だった。父親はこの退院の意味を理解していたと思う。症状は日に日に悪化していくばかりだし、治療も何もしていないのに突然退院することになったのだから当

もっとみる
違和感の正体をつきとめる

違和感の正体をつきとめる

10月18日 介護用品が取り付けられた家を見て、絶望する。

午前中、父親の洋服や寝るときのスウェットなどを買いに、一人で出かけた。父親が好きな色の、普段着ていたような安めの洋服を買って、自転車のカゴに突っ込んで帰ってきた。今後、簡単なひざ掛けがあると便利かなと思ったので、1000円ぐらいのものを退院祝いとしてラッピングしてもらい、それだけはハンドルにかけて汚れないようにして帰ってきた。

家に帰

もっとみる