排泄トラブルが患者に与えるダメージ

10月30日 父親が浣腸と摘便を受ける。

ここ数日、便秘が続いていた父親は、腹部がパンパンに張ってしまい、苦しそうな顔をしていた。便意も感じていないので、排便のために力むことも難しい。嚥下が困難になっているので、水分も取りづらく、それも便秘の原因になっていた。トイレにこもって足湯をし、腹部をあっためて、ウォシュレットでシャワーをしても無駄だったので、訪問看護師を呼ぶことにした。

訪問看護師は浣腸と摘便を行ってくれた。処置中は、辛そうな声がずっと漏れていた。看護師の指示もうまく理解ができず、ただ腹部の激痛だけ感じ取れて、なんとなく恥ずかしいトラブルを起こして皆に迷惑をかけている、とだけ感じていたのではと思う。父親はまた泣いていた。

浣腸が終わるとすっきりしたようで、父親は多分「よかった...」と呟いた。子音の発音が難しくなった父親だが、音の高さと発話された母音をヒントに、なんと言っているかだいたいわかるようになってきた(母音の順番はあべこべだが)。外国語や言語学を勉強してきてよかったと思った。

父親は苦痛に耐えて、数日ぶりに安心した表情を見せた。排泄のトラブルは患者に一番の心的負担をかける。知ってはいたが、身をもって体感した。

夜に飛び起きてしまうことが続いたので、このことも主治医に相談した。主治医は精神安定剤を処方して、今日から薬が一種類増えた。

夜、父親はぐっすり寝ていた。時々起きて寝言を言ったり動くことはあるが、そのまま自力で継続して寝ることができていた。朝はスッキリ目覚めて、意識もはっきりし、調子も良くなった。

根本的な治療にはならなくても、父親の体調が少しでも良くなって安心した。今回が、父親のこの病気ではじめての対症療法だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?