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自作詩(こうだたけみ名義)

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こうだたけみ名義で書いている詩。たまに朗読
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2020年10月の記事一覧

上書き落書きの教室

上書き落書きの教室

あくびは奥歯で噛み潰すし、タイクツの踵は踏み潰すって思ってたコーコーセーのあたしの足にルーズソックスはなかったけれど、なんの根拠もなく無敵だと信じてた。教室に居場所はなかったし、お弁当の時間はユウウツだった。けど朝には、体育館の裏で落書きだらけの上履きをつっかけて、三年後には見事、下駄箱の位置さえも忘れた。ステージの上のグランドピアノに飲み物を並べ一列になっては声を出す。あめんぼってあかいの? ら

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本と雨のはなし

本と雨のはなし

あー、こんだけあるとどれ注文していいかわかんないよねえ。じゃあこの本と……雨のはナシで。人気が高いから種類も多くてさ、全部頼むとほら、棚に入りきらないんだよね。うち狭いから。定番のやつと、新商品から二つ。それで限界かなあ。傘とか紫陽花とか、画数を増やすといいかもね。目新しくて。卯の花腐し? 変化球過ぎて一般受けはどうかな。五月雨くらいにしといたら? あと季節感も大事だけど、今が必要な人ばかりじゃな

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さよなら鉛筆、トンボ印のちびた秋

さよなら鉛筆、トンボ印のちびた秋

親指と人差し指と中指で
支えるように持つのは
箸と鉛筆と歯ブラシと
お道具箱のひきだしの中
噛み跡だらけにしたのはだあれ

初めて手にした六角形は
金色のトンボがついていた
削っていくといいにおい
鉛筆削りのひきだしを
くずで開かなくしたのはだあれ

漢字練習帳に秋と書くたび
ちびてゆくトンボたち
小指を真っ黒にした手を
太ももの下に隠して
校舎の裏に忘れものしたのはだあれ

トンボの羽はパリパリ

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きみのすべてよ応答せよ

きみのすべてよ応答せよ

前は子供なんてぜんぜん好きじゃなかったけど最近は他人の子供見てかわいいって思うのね、だって未来の塊みたいでしょ。

そんなふうに力説する人とランチを食べた

生物がなぜ子孫を残すようにプログラムされてるのかわからないんです、なぜ自分の分身みたいなものをつくるのかが。

そんなふうに訴える人とお酒を飲んだ

昨日の朝、帝王切開で女の子を出しました。変な顔だけど可愛いです。名前はまだないのでまたお知ら

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ベンのテーマ

ベンのテーマ

オナカスイタ
の後につづけ白米の塊の雲
悲鳴の前にうれしみは見当たらず
ココナツカレーのおいしさだけが救い
ひとさじ掬っては運ばれるオイシイが
溢れないように咀嚼するよ何度も
席を外してくれたマスター
きみに幸あれ

この曲なんだっけ聴いたことある、
たしかUAがカバーしてた
これ小野リサだよねボサノヴァの
そうなんだけど、なんだっけかな

悲しみには終わりがない、
幸せには終わりがある。
なのに

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曇天サーカス

こうだたけみ

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「曇天サーカス」

生活は、明転しつづけているけれど自然過ぎて気づかれない木馬は、煌びやかな光を放ち回転するファンファーレ、流れつづけていれば腐らないってほんとなの水が、八十パーを占める身体きよらかであれ永遠の、愛があるかどうかなんてのはもうどうでもよくてその手を、離さないで離れないで迷子探しは御免です。テス、テス、ただいまマイクのテスト中、〈ほんじーつーはー、ご来園、誠にありがとうございます、間

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春とバナナとシーラカンスの速さ

春とバナナとシーラカンスの速さ

やっぱりシーラカンスは
水の中でじっとしている
静かな静かな海の底
エンジンが故障しているからだ

 わたくシの計算したところによりまスと
 マグロの三十倍ぐらいのガソリンを
 こやつは必要とするのでありまス
 マグロの三十倍ぐらいの回転速度が
 が、しかシ、

そもそもエネルギーが足りないの
朝食は何でもいいから食べなさいと
バナナ一本でもいいからと電話口の母は言うが
いったいバナナなんてどこに

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魚とバナナとラクダの話

魚とバナナとラクダの話

魚のキーホルダぶら提げて、この通りを下ってくると、彼が追いついて耳の上にキスをくれる。黄緑色のリュックサックの下に手を突っ込んで、わたしの腰を抱えながら彼は歩くのが好きで、彼の彼女になるんなら、ハイヒールなど捨てっちまいなさい。

お豆腐みたいな携帯電話に頬ぺたをくっつけていると、横目で見たバナナの茶色い斑点がキリンに見えなくもない。

わたしはいつも首を傾げているので、この前独逸語の先生に首がお

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よこしまなきみとさかしまなぼく

よこしまなきみとさかしまなぼく

画面上に寝そべったきみはぼくの
趣味どストライプだったのだけど
いま目の前で三次元になった途端
ボーダーラインに立ったんだとさ

案だクスい指プスはギにチ交タヨ
外なゾトうしのトかンなェ差テコ
広ん|ラかたこラつガるッし糸糸
いてンイらととイてムよクてがと

きみは無邪気さと邪悪さを合わせ
持つあまの邪鬼な小悪魔天使さま
だから全身よこしまコーデで目が
チカチカしちゃうブルーライトだ

  傲思で

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カラカラ、

カラカラ、

海底を歩くシーラカンスの群れが
一斉にでんぐり返しする
脊柱の中の体液が
きゅう
と静かに鳴る

剃り上げた襟足に風を当て
コーヒーをすする
飲み下した熱い液体に
爛れた胃が驚いて
きゅう
と静かに鳴る

ぶらぶらさせた白い足に
突っ掛かけたベージュのパンプス
ポトリと床に落ちた片方へ
爪先を差し込んだ瞬間
きゅう
と静かに鳴る

ハンドルを握る汗ばんだ手が
葉書を飲み込むポストの投函口が
一眼レ

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やまおりたにおり、折り目正しい但書付き

しとしとと雨が降っている。ゲリラ豪雨って
やつに二日連続やられたから、こういうのは
新鮮だ。一昨日は悲鳴を上げた折り畳み傘で
さえ柔らかくたわんで受け流せてる。ふと、
新規の取引先の受付にいた加藤さんってコを
思い出す。まだ話したことはないんだけど、
こんなふうにやさしい感じで笑っていたな。

#

キツくて辞めたいと訴えたら売り場から本部
へ移動になって二年。企画なんて立てられる
わけもなく、つ

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雨中遊泳

雨中遊泳

雨のなか傘を差す
魚みたいな子供たち
誰一人笑わないから
かえって可笑しい見開かれた目

視界に言葉が散乱する
散乱した言葉たちが産卵する
そこから魚たちが生まれてきては
身体をくねらせている

秋は梅雨時より雨が多いと知った
曇天を横切る快速電車の中で
今日も遅刻しそうになりながら
もっと大きな何かを諦め始めている

特異な季節であなたとわたし
ひとつの接点をふいにする
雨の日は遊泳禁止です

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病葉堆積

病葉堆積


 っ
  黒の背景に白い文字の浮かぶサイトで
タイトルに溺れているこんなにもたくさん
の言の葉が降り積もっては小さく発光する
さまはいつだって完全なる健康体でいられ
ないからだわずかに発酵をシつづける生と


 の
  プロセスが青い光を放つと知ったのは
かなり前のことだけど誰かのリツイートで
久しぶりに見たしここへ報告する私には死
とは暗い緑色をしているという刷り込みが
あったとして緑が好

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