目を開けたこともないのに、瞼を閉じて眠れない。

弱視の天才写真家に自身を投影させた102分。河瀬直美監督の映画「光」を観た。奇しくも、あなたの目の前にいる、ぼくは、右目腕で隠している。何度も視力を失うことを恐れてきた。24年間。絵を、太陽を。女性やプラネタリウム。鳥の羽ばたきに、ヨハン・シュトラウス
ピカソ
に花。器、言葉、声。ミニスカート通して、見ることを学び、見ることから愛するということを学んでいる。目を開けたこともないのに、瞼を閉じて眠れない。一度でもいいから、見て観たいものに出会いたい。

もし、視力が失われるとしたら、この指で輪郭をなぞりたいのは、誰の顔なんだ。そんな風に、誰かと出会えているでしょうか。滑らかな背中。頬、そしてつま先までの道筋を、脳裏に焼き付けたいのは。誰。ジブンのこともわからずに、誰かを、触れたり出来るのだろうか。見ることを、表面を攫うことでしか実践できていないぼくは、冷たい石を胸に抱えて劇場を出た。

いただいたサポートは、これまでためらっていた写真のプリントなど、制作の補助に使わせていただきます。本当に感謝しています。