マガジンのカバー画像

Cの時代

12
私たちが日々感じている「何か」を書き起こした連作小説です。
運営しているクリエイター

#社長

Cの時代 〜時の流れに身を任せ〜

Cの時代 〜時の流れに身を任せ〜

――2か月後。
「お疲れ~」
「わあ、久しぶり!」
原宿駅の表参道口改札を出てすぐの柱に立っていた二人の友達が私を見つけるなり駆け寄ってきた。年末の原宿は普段以上に人で溢れていた。彼らはやり残したことを今年中に片付けたいというようにどこか急いていた。その流動する空気の中にいると、自身の時間感覚もまた早まっていくような気がした。
「人が多いね~」
「それねー、外国人とか多くない?」
「なんか、海外っ

もっとみる
Cの時代  〜一緒に働く〜

Cの時代 〜一緒に働く〜

10月25日(木)15時、神保町。

サトウとの打ち合わせに「大学生の女の子」は現れなかった。

「ごめんなさい、彼女、都合が悪くなっちゃったみたいで、明日の夕方なら空いてるみたいなんですけど、もし、社長の都合がよければ明日の夕方にセッティングし直しますけど?」
「・・・そうだね、そうしてもらおうかな」
正直、スケジュールを調整し直すのは面倒だか、若者の都合に合わせるしかない。

翌日。

もっとみる
Cの時代 〜出逢い〜

Cの時代 〜出逢い〜

10月最後の金曜日。
アミカさんに呼ばれ、渋谷に来ていた。夕暮れのハチ公前広場は相も変わらず人でごった返している。習い事をしている場所が宇田川町なので、渋谷を使うことは少なくなかったが、こうして人と待ち合わせをするのは久しぶりだ。JR山手線の改札前でぼんやりと突っ立っていると、道行く人々が肩で風を切って移動しているのが分かる。その速さは歩くというより強歩だ。
普段の自分もあんな感じなんだろうな。せ

もっとみる
Cの時代 〜大学生の女の子〜

Cの時代 〜大学生の女の子〜

2018年10月24日(水)

会社を立ち上げてから約5カ月が過ぎた。
社長の仕事というか目に見えない事務や経理・財務関係の仕事は思ってたより忙しい上にスムーズに進まないことが多かった。書類を作成したり、書き間違い書類を再度提出したり書類審査を待ったりと登記してからの3カ月は役所への届け出や銀行口座の開設など仕事をする前段階の準備に追われることが多かった。

3カ月目に初めて会社の口座に入金が

もっとみる
Cの時代⑧ 〜同人誌即売会と廃情報回収の依頼〜

Cの時代⑧ 〜同人誌即売会と廃情報回収の依頼〜

「部数確認して」
「本、この辺に置けばいいのかな?」
「誰かー、ポスカ持ってる人!」

慌ただしい声が各所で飛び交っている。
開店前のこの熱気が文化祭の前日のような空気を醸し出していて、
一番好きかもしれない。

本日は同人誌即売会。
二次創作もオリジナルもプロもアマも関係なく、渾身の作品を世に出す日だ。
予定のない私は売り子として販売の手伝いに来ていた。

「椅子、もらってきました。

もっとみる
Cの時代 〜レールから外れる〜

Cの時代 〜レールから外れる〜

2018年10月17日(水)

労働市場について調べ始めて1週間。その間、サトウとは何度か電話やメールでやりとりをしながら調べる内容やまとめについて話し合っていた。

「・・・そうだね、厚生労働省と内閣府、総務省のデータは使えそうだね。このデータを掛け合わせて言える事ってなんだろうね?・・・まっ、またデータが揃った段階でまとめる方向性については考えよ。はい、じゃあ、引き続きよろしく」

もっとみる