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Cの時代 〜大学生の女の子〜

2018年10月24日(水)

会社を立ち上げてから約5カ月が過ぎた。
社長の仕事というか目に見えない事務や経理・財務関係の仕事は思ってたより忙しい上にスムーズに進まないことが多かった。書類を作成したり、書き間違い書類を再度提出したり書類審査を待ったりと登記してからの3カ月は役所への届け出や銀行口座の開設など仕事をする前段階の準備に追われることが多かった。

3カ月目に初めて会社の口座に入金があった時は、心躍った。少額ではあったが、会社が動き出した事を実感し、自分とは違う人格というか社会的な別の顔を持てた気持ちになった。3カ月の間に支払いが貯まっていたので、入金された10日後には数万円残してほとんど無くなってしまったが、入金と支払いを終えたことで、社長の仕事を肌で感じ取る事が出来た。

今月も、月末が迫り請求書を作ったり経費の精算をしながら忙しく過ごしていた。

「そういえば、労働市場の分析はどうなったかな?」

サトウに仕事を任せてから1週間、社長業が忙しく途中経過は報告されていたが細部の確認までは出来ていなかった。〆切まで残り1週間。サトウの事だから大丈夫だろうとは思ったが、レポートを提出する前に細部を確認する必要性を感じていた。

呼び出し音・・・2回。

「・・・はい、サトウです」
「もしもし、今、大丈夫?」
「はい、大丈夫です」

「あの、労働市場の分析、あれどう?あと1週間だから細かい部分も詰めた方がいいかなと思って。明日、打ち合わせ出来る?」
「はい、いいですよ。昼間に少し用事があるので、3時頃からだったら大丈夫です」
「うん、わかった。そしたら、また、いつもの場所に3時で」
「わかりました。あっ、あと、ひとつご相談なんですけど、ここから、細かく調べることが多くて前にも手伝ってもらったことがある大学生の女の子にリサーチを手伝ってもらおうと思ってるんですけどいいですか?」
「うん、別にいいよ。僕の方はかまわない。時給1,000円でよければだけど・・・」
「はい、そしたら、この前少しだけ内容を話してあるので彼女に連絡して進めてもらうようにしますね」
「・・・あっ、それと、その大学生に一度会わせてもらえないかな?今後、いろいろと手伝ってもらう事が多くなるようだったら、社長として一度会っておきたい。もし時間が合えば、明日連れてきてもらえるかな?その方が話早そうだし」
「はい、わかりました。そしたら、彼女に聞いてみますね、聞いてまた連絡します」
「よろしく、そしたらまた明日」
「はい、お疲れさまです」

電話を切った。

大学生の女の子。
僕の方から直接仕事をお願いしているわけじゃないが、サトウの仕事を手伝ってもらってる以上は、一度会っておいた方がいいだろうと直感的に思った。もし、彼女と僕の相性がよければ会社として継続して仕事をお願いすることだって出来る。

サトウの仕事を手伝ってくれている大学生の女の子。どんな子だろうか?

電話を切ってから5分ほどが過ぎ携帯が鳴った。サトウからだった。

「もしもし、サトウです。今、大丈夫ですか?さっきの女の子に確認したら明日空いてるそうなので連れていきますね」
「あっ、早速ありがとう。明日よろしくお願いします。と伝えてください」
「はい、わかりました。そしたら明日、よろしくお願いします」
「お疲れさま。ありがとう」

社長になってから初めての事だらけで戸惑ったりする事も多いが、
初めてサトウ以外に給与を支払い予定の知らない大学生の女の子。

会うのが楽しみになってきた。

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