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マネージャーが副主将…常識を、壁と一緒に越えていけ!/高校野球ハイライト特別編・綾羽

2021年に1年生大会準優勝。注目のエース・野川新を始め、投打ともに「充実の戦力」と評価を受ける今年の綾羽。しかし、千代純平監督には不安があった。

「もちろん大きな期待をしているチーム。ただ、絶対のリーダーがいない」

主将の山本多玖や副主将の平野七都は周りを気遣うバランス型。秋の県大会で初戦に敗れ、起爆剤を求めた千代監督は副主将の追加を決断する。1人は主力内野手の池田龍成。もう1人は、マネージャーの馬場美波だった。

副主将兼マネージャーの馬場美波

中学時代はソフトボール部で主将。確かに競技理解もあって指示が出せる存在だったが、マネージャーと副主将では発言の重みが変わってくる。サプライズ指名にも見える中で、馬場自身はこの肩書きをプラスにとらえていた。

「自分もチームの1人だと思うことで、選手との距離が縮まった。ベンチからアドバイスも声かけも積極的にする。メンバーを外れた選手のフォローもする。最後の1年を後悔したくないから」

自分と選手との壁は、甲子園への壁にもなりかねない。マネージャー業との兼務も想像を超える忙しさだったが、試合終わりには監督の言葉を積極的に伝え、部の方針を決める幹部ミーティングにも参加。信頼の厚いコミュニケーションの要を中心に加えたチームは春の県大会で3位に入り、夏のシード権を獲得した。

今年の春は彦根総合がセンバツ甲子園初出場。同じ私立の綾羽にとって、そして千代監督にとって、先を越されたことになる。

「正直に言えば…本当に正直に言えば、めっちゃ悔しかったんです。ただ、だからこそ原点に立ち返れました。うちはうちらしく。綾羽に来て良かったと思ってもらえるチームにしたいんです」

「マネージャー兼副主将」という常識外れの決断は、跳ね返され続けた壁に挑むチームへ監督が与えた刺激でもあった。スローガンは今年も「明るく前向きに」。綾羽らしく戦う夏が、また始まる。

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