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地元主要銀行グループが出資で目指す、地域活性化の鍵とは ー出資者・肥銀キャピタルとの座談会

熊本大学発ベンチャーとして、2019年に創業した株式会社CAST(以下、CAST)。薄型・耐熱・フレキシブルなセンサーをコア技術に、配管減肉モニタリングシステムを展開しています。

今回は、CASTに出資している肥銀キャピタル株式会社(以下、肥銀キャピタル)代表取締役社長の横山 輝(よこやま あきら)さん、担当の中川 邦彦(なかがわ くにひこ)さんを迎え、CASTとの歩みや今後の未来について語っていただきました。

肥銀キャピタル様は、肥後銀行グループのベンチャーキャピタル(以下、VC)です。座談会中、話題はビジョン実現に留まらず、地域活性化の具体策へ。熊本の未来を見据える2社の視点に注目です。



技術以上に「人」が出資の決め手

CAST代表 中妻 啓

中妻(敬称略):
肥銀キャピタルとの出会いは、2017年の「熊本テックプランター」でしたよね。当時は資金調達後の構想が描けていなかったこともあり、CASTへの評価は高くなかったと記憶しています。

その後、二度出資いただきましたが、なぜCASTを支援していただけたのでしょうか?

中川(敬称略):
CASTのセンサーが社会実装することで、製造現場における「狭所・高所・高温」箇所の点検業務の課題を解決できると感じたためです。また、中妻さんの真面目で誠実な人柄を知り、「この人なら」と思えたことも大きかったですね。

横山(敬称略):
肥銀キャピタル側のCAST担当として成長を支えていた浦田さんが、思い入れを持ってCASTに参画されたことも、出資する決め手の一つになりました。

中妻:
浦田さんは、2021年から肥銀キャピタルの担当者としてCASTに関わっていましたが、2023年4月にCASTに入社することになって……。私自身もまったく予期せぬ展開でした。

横山:
二度目の出資(2023年)前に、本人から「肥銀キャピタルを辞め、CASTに参画したい」という話を聞いていました。行員が同業他社や保険会社へ転職する例はよくありますが、支援している企業へ転職するというのは今まで聞いたことはありません。

銀行員を辞めてまで転職したいと思うベンチャー企業とは、一体どんな会社なんだろう?」と興味津々で中妻さんにお会いしたのを覚えています。

中妻さんは物静かな口調ながらも、「社会課題を解決できるセンサーを世に出したい」という強い信念を秘めた人だと感じました。その瞬間、「浦田さんは中妻さんに惚れ込んだんだ」と納得しました。大きなビジョンを持って進もうとしている中妻さんを、守り・支えたいと思ったのだと。

中妻:
後日談で、浦田さんからは「自分だから挑戦できることがたくさんあると思った」と聞きました。

肥銀キャピタル株式会社 代表取締役社長 横山 輝さん

横山:
出資するベンチャー企業を決める際、持っている技術だけでなく「その先にどんなイノベーションを起こせるのか」を重視することはもちろん大切です。

しかし、私はそれ以上に重要なのは「人」だと感じています。どんな人たちが、どういう想いを持って事業を行っているのか。私は中妻さんと浦田さん、2人の想いに非常に共感し、出資を決めました。

中妻:
肥銀キャピタルに出資いただけたのは、私にとってもうれしい出来事でした。会社経営をするうえでも、地元を代表する肥後銀行グループから出資いただくことは、アドバンテージになると考えていたからです。

当時、肥銀キャピタルとリアルテックファンドの2社にご支援いただいたのですが、思っていたよりもずっと多くのバックアップをしていただけました。創業して間もない頃は、肥後銀行の担当者に資金繰り表を作ってもらったこともありまして……(笑)会社としてスムーズにスタートを切れたのは、肥後銀行グループのおかげです。


企業・ビジネスパートナー・出資者は一つのチーム

中川:
事業を成長させるためには、さまざまな分野のビジネスパートナーが必要になります。CASTはその時々の良いタイミングで最適な企業と協業できていますよね。

中妻:
CASTは、1社では実現できないレベルの事業を行っていますからね。先駆者であるビジネスパートナーの技術・ノウハウを活用させていただきながら、インフラ作りから体制作りまでを取り組んでいます。とてもありがたいです。

中川:
業界のトップランナーであるビジネスパートナーが、自分の事業を考えるようにCASTのことを考えている。進むべき方向に導いているのだと感じています。

横山:
企業やビジネスパートナー・出資者は一つのチームですからね。出資者だけでなく、事業成長のキーとなるビジネスパートナーがCASTをサポートしていることは、とても大きなことだと感じています。

中妻:
資金融資はお互いが取引先という立場です。一方で出資は、「会社」というものを株式のかたちで「シェア」する「ホルダー」になることを意味します。同じ目標に向かって進む「シェアホルダー」になっていただいたことで、文字通りに関係性を強められていますね。

肥銀キャピタル株式会社 担当 中川 邦彦さん

中川:
私は「シェアホルダー」になったことで、一般的な銀行員ではできないことを経験させてもらっています。チームの一員として一緒にやれることも多く、日々学ばせてもらっています。


地域内で人材を流動させるモデルケースに

中妻:
冒頭でもありましたが、肥銀キャピタルの出資をきっかけに浦田さんが支援先のCASTヘ移ったのは、インパクトが大きかったと思います。人材流動については、率直にどのように感じていますか?

中川:
資金調達のプロセスやスキルを理解している人材が事業経営に参画することで、ベンチャー企業側がノウハウや考え方を学べるのがメリットですよね。VCとしてさまざまな事業を支援し、なかには失敗する例も見てきたからこそ、これまでの経験を経営に活かせるのではないでしょうか。

横山:
個人的には、浦田さんの事例は地域で人材を流動させる、良いモデルケースになったと考えています。

私は以前、グループ会社である肥銀ビジネス教育株式会社で、地域企業の人材育成に取り組んでいました。その際、「人材を育てなければ地域企業は持続できない」「地域の特性上、新たな人材採用が難しい」という課題を目の当たりにしていたからです。

浦田さんが肥後銀行・肥銀キャピタルで培ったスキルや経験を、ベンチャー企業であるCASTの事業成長に活かす。これまでにない、新たなベンチャービジネスのモデルが生まれたと感じています。

中妻:
熊本県内で産業が活性化するためには、人材が動くのはとても重要なことですよね。ましてやベンチャー企業はなかなか良い人材を採用できないため、肥後銀行グループからCASTへ人材が転職した事例ができたことは、今後大きな意味を持つと思っています。

横山:
肥後銀行グループは、地域企業の人材を育成するという使命も併せ持っています。将来的に、必要なところに必要な人材を派遣できる会社にならなければと感じています。

中川:
正直泣きそうですよ、個人的には(笑)浦田さんはかつてベンチャーチームのリーダーであり、私にとっても大きな存在だったので。

横山:
プライベートで3人で飲みながら語り合う時間も多かったので、浦田さんはもはや同志みたいなものだよね(笑)

肥銀キャピタルのことだけを考えたら、なんとしてでも会社に残って欲しかった。ですが、浦田さんの決意が固いのもわかっていたので、無理だったでしょう。私も一度話を聞いたら、「応援しよう」という気持ちに変わっていましたから。今は後任の中川くんがリーダーとして育ってくれているので、心強いです。

 

肥後銀行グループとともにビジョンの実現を目指す

中川:
CASTとの出会いとなった「熊本テックプランター」は、熊本県・肥後銀行・熊本大学などで組織された「熊本県次世代ベンチャー創出支援コンソーシアム」が運営しています。熊本から世界を変える起業家を育成することを目的とした創業支援プログラムなので、ぜひCASTにはモデルケースになって欲しいと願っています。

CASTのセンサーが世界に広まることで、「熊本県には面白いベンチャー企業がある」と認知されれば、IターンやUターンで就職しようと考える人が増えるかもしれません。

横山:
CASTが成長することで、地域全体の経済効果が高まることも期待されます。大学発ベンチャーとして地域を活性化させるところまで、ぜひ目指していただきたいです。

中妻:
CASTの大きな目標は、熊本からグローバルビジネスを作っていくこと
です。熊本はTSMCの工場新設をきっかけに、県外の資本が集まってきている状態です。そんななかでも、私たちは県内の資本として、グローバルに勝負できるビジネスを作りたい。

この大きな目標を達成するためのマイルストーンとして、2035年までに「人・お金・知識」が循環する、地域のエコシステムの中核になることを目指しています。CASTが成長することで人材が集まり、会社として資金を出せるような状態になっていたいです。

横山:
先ほど中妻さんに「シェアホルダー」と仰っていただいてとてもうれしかったのですが、これからも同じ目標に向かう仲間として、精一杯支援させていただきます。

中妻:ありがとうございます。ただ、今後CASTが上場するタイミングを迎えたら……現在の肥銀キャピタルとの関係は終了することになりますよね。

その場合は「CASTが海外進出する・新規事業を立ち上げる」など、攻めのファイナンスを行いたいときに、肥後銀行がメインパートナーとなります。たとえ関わり方は変わっても、肥後銀行グループとともにビジョンの実現を目指していこうと思います

横山:
肥後銀行グループがファンドを設立している理由は、地域企業の皆様とともに、未来へ進んでいきたいという想いがあるからです。中妻さんが仰ったように、この先も長くともに歩みを進めるパートナーとして、肥後銀行・九州フィナンシャルグループのリソースを最大限に活用していただけるとうれしいです。


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企画・編集:小溝朱里
取材・執筆:ヤマダユミ



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