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出資元・出資先との関係性が事業拡大を推進 ―リアルテックファンドとCASTの歩みを振り返る

株式会社CASTは、配管減肉モニタリングシステムの防爆認証取得に向けた研究開発及び営業体制確立のための資金調達を実施したことをご報告いたします。

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前回の資金調達に続き出資いただいたのは、リアルテックファンド(以下、リアルテック)様です。出資元・出資先としての関係性は約1年ですが、それ以前より関係性を築いていた両社。大学発ベンチャーであるCASTと、その発展を支援してくださったリアルテック様との歩みを座談会で振り返ります。


丸 幸弘さん

リアルテックホールディングス株式会社 代表取締役/株式会社リバネス 代表取締役CEO 他

福田 裕士さん

リアルテックホールディングス株式会社 グロース・マネージャー/株式会社リバネス

中妻 啓さん

株式会社CAST 創業者・代表取締役社長

浦田 拓さん

株式会社CAST 取締役



中妻さんのプレゼンには大きな夢があった

福田(敬称略):
リアルテックからCASTへの資金調達は、今回が2度目。改めて両社の出会いや、これまでの歩みを伺えたらと思います。そもそもCASTは、リアルテックの出資元、リバネス社が運営している熊本テックプランターから生まれた企業ですよね。

中妻(敬称略):
2回目である2017年に初めて出場しました。当時は私ではなく他のメンバーが出ていて。

福田:
CASTは法人化前だったから、「研究チーム」という認識でした。ただCASTのサイトを見て、「これならテックプランターにいける」と思いましたね。

中妻:
最初は他のメンバーが出ていたこともあり、僕は深く関わっていなくて。「リバネスって何?」みたいな状態でスタートしています(笑)

丸(敬称略):
その後、ディープテックグランプリには中妻さんが出ていましたよね?

中妻:
そうですね。他のメンバーは海外出張があったので、僕が出るしかないという(笑)

丸:
そうだったんですね(笑)

ただ私はディープテックグランプリのプレゼンをすごく覚えているんですよ。デジタルツインの話をしていたでしょ。

ディープテックグランプリの様子

中妻:
しましたね。CASTの技術って基本的に材料技術なんですけど、僕はもともと情報系の研究者でして。センサーから取得したデータをどのようにフィードバックして、シミュレーションに活かすか。システムとして構築したとき、どうしたらお客様が使いやすいものになるかという視点があって。デジタルツインを最終的なイメージとしてお話ししたと思います。

丸:
私もその頃、デジタルツインに興味があって研究していたんですよ。例えば、自分の体のデータを全部取って、デジタルの世界にもう1体自分を作れたら面白そうだなと思って。

中妻さんのプレゼンを聞いたとき、工場にデジタルツイン技術があれば、経年劣化など色々なシミュレーションが、工場を建てる前からできる時代が来るんじゃないかと思ったんですよね。

ディープテックの会社って、「部品売り」に留まってしまうともったいない。その先の大きな夢を掲げられる人が研究者になかなかいないんですけど、中妻さんのプレゼンには大きな夢があった。あれはとてもよかったですね。「自分はこういう世界を創りたい!」と語れる人には投資できるなと思いました。

中妻:
2017年に熊本テックプランターとディープテックグランプリに出た時、あるのは夢と技術だけ。その後2020年に出場する時には随分事業らしくなりました。

丸:
そうですよね。プレゼン内容がどんどん変わっていきました。

中妻:
CASTが2019年に法人化したのもありますね。

丸:
熊本テックプランターには法人化前と法人化後に出てるんですね。

中妻:
はい。とはいえ、2020年にテックプランターに出た時は、まだCASTの市場が見えていなくて。「サンプルを買ってくれる人はいる」というのは分かってきたものの、どの市場に売っていけばいいかまでは絞り込めていませんでした

2022年にリアルテックさんにスピード出資いただいてようやく、少しずつ市場が見えてきて。次の資金調達もあるぞというタイミングで、本腰を入れてターゲットを絞り込んだ。それが今回の資金調達の目的でもある、「製油所向けにCASTの技術を展開していく」ことに繋がりました。


出資を受ける前から試行錯誤してきた会社は強い


丸:
最初に出資を受けたのはいつでしたか?

中妻:
2020年です。最初はエンジェル投資でした。その後、2022年3月にスピード出資を受けています。

丸:
研究チームだったCASTからの年数だと考えると5年経ちますよね。まだ事業として成り立っていない時から伴走するというのが研究開発型ベンチャーにとっては重要なんですよね。

中妻:
僕、福田さんに「誰が出資金を負担しているんですか」「何でこんなことしてくれるんですか」と聞いたことがあります(笑)

丸:
怪しいですよね(笑)しかも1社だけじゃないですからね、伴走してるのは。でも世界を変えるためにやっているわけですよ。

中妻:
そういうことですね。

丸:
ターゲットを製油所にした理由は何ですか?

中妻:
お客様が教えてくれたんです。CASTの技術や商品は製油所と相性良さそうだって。

丸:
すごいですね。それがいいですよね。最初は市場が分からなくてもCASTが動き続けたから、課題が向こうからやってきて、掴めたんだと思いますよ。出資を受ける前から試行錯誤してきた会社は強いですね。

我々が支援した企業が大成功して、「リバネスのおかげです」と500回言ってくれたらリバネスにはリターンするんです(笑)。僕らが出資するとイノベーティブなことができると感じてもらえたら、僕らの資産になる。だからCASTには絶対に成功してもらわないと(笑)

中妻:
2020年のディープテックグランプリに出たときに、以前は出場者だったACSLの鷲谷さんが審査員とスポンサーになっていたんです。「3年前は、出場者として座っていました」と言っていたのがかっこよくて。次はCASTもスポンサーとして戻ってこようと。熊本のディープテックが発展するサイクルの一員になれたら、それが恩返しかなと思っています。


テックプランターの繋がりを活かし、資金繰りを相談

丸:
ターゲットが絞れたとはいえ、それは最近のこと。経営課題はありつつも、CASTは社員が増えているじゃないですか。それはどう思っていたんですか?自信があったのか、申し訳ないなと思うのか。

中妻:
自信はありました。けど、プレッシャーを感じたのは最初の社員が2名入社した時ですね。払い方が分からなくて。未だに覚えているのは、2人から「そろそろ給料もらえないですかね」と言われたことです(笑)

2人の入社時は、政策金融公庫でお金を借りました。士業の担当者は、テックプランター出場者の先輩でもある、トイメディカルの竹下さんに紹介してもらって。

丸:
そうだったんですか?いいサイクルができてますね!先輩から後輩へ。

中妻:
今思い返しても「こいつ、資金繰りのこと本当に分かっていないな」と思われていたと思います。日本政策公庫に提出する資金繰表を、肥後銀行の担当者に作ってもらいましたから(笑)

丸:
すごい。熊本テックプランターの仕組みが機能していますね。

中妻:
「複式簿記とお小遣い帳は違うんだよ」というところから教えてもらいました(笑)

丸:
大学の先生が起業するって、こんな感じですよね。正直なところ、研究者って自分のお金を管理してる人自体少ないじゃないですか。研究者あるあるなのかもしれないですね。

中妻:
最初の融資を通帳に印字した瞬間と、最初の売上を印字した瞬間は写真を撮ってメンバーに送りました(笑)

丸:
最初の入金は嬉しいですよね!分かる。これはぜひみなさんに経験してほしいですね。


熊本でメガベンチャーを目指す意味

丸:
熊本から東京への移転は考えないのですか?

中妻:
会社を経営していくうえではどこでも事業できるから、移転する理由もないですね。今、開発メンバーとしてオフィスに来ている社員は「熊本に帰れる」と思って来てくれていますし。

丸:
CASTで働くために、熊本に人材が集まってきているらしいですね。

中妻:
CASTが熊本で成長してメガベンチャーになれたら、地域にもいい影響があると思います。それを熊本の人と共有できたら。

丸:
これからは地域ディープテックが面白いと思う。政府としてもグローバルに活躍できる地域ディープテックに予算がついていますからね。

中妻:
以前旭サナックさんに「東京や大阪に本社があったらもっと売れましたかね」とお聞きしたら、即答で「関係ないです」とおっしゃって。

丸:
グローバルに見たら、本社が地方とか東京とか関係ないんですよね。面白い!

2度目の挑戦で実施できた、資金調達

丸:
ちなみに、リアルテックについてはどう見ていましたか?

中妻:
リアルテックも怪しいなと(笑)

丸:
やっぱり?(笑)

中妻:
リアルテックは当初、ユーグレナ社の中にあったんですかね?メールアドレスがユーグレナだったから。

丸:
リアルテックは、リバネスとユーグレナの共同出資で設立していて。

中妻:
リバネスとユーグレナとの関係性を分かっていなかったから、最初は懐疑的でした。出資してほしいという思いもなくて

丸:
リアルテックで2022年にスピード出資枠を作ったのが、CASTの資金調達のタイミングと重なったんですよね。

中妻:
そうですね。スピード出資枠の第一号はCASTです。

でもスピード出資の前、2021年夏にも資金調達に挑戦していて、ダメだったんですよ。一回気持ちが切れて、「リアルテックはもういいや」と思っていて。結局半年後にまたチャレンジして資金調達できたんですけど、当時担当者だった武川さんが「もう一度挑戦しましょう」と言ってくれていて。

丸:
武川さんはその時、池田泉州銀行からリアルテックに出向していて、私の直下で指導した銀行員なんです。スピード出資枠ができた時に、CASTと一緒に計画を立てていたんですね。

中妻:
ただ、着金した翌々日に武川さんが池田泉州銀行に戻っちゃって。


CASTという船に穴が開いていても、遠くを目指していた

浦田:
僕は当時、肥銀キャピタルに勤めながら武川さんとも一緒に動いていて、CASTが2021年夏に出資を受けられなかったのも知っていました。でも「一緒にやりたいね」という話はしていて、スピード出資を決めていただくタイミングに、肥銀キャピタルとしても出資したいと考えていました。

武川さんから「後は託しました」というメッセージを受け取って、気付いたら1年後にCASTにいるという。

丸:
すごいですね。浦田さんから見て、中妻さんはどのように見えていたんですか?ヤバい奴?(笑)

浦田:
ヤバい奴だったのは間違いないですね(笑)

でも中妻さんのヤバさは、僕にとっては気持ちのいいヤバさで。自分が絶対にできないことをやっているヤバさでした。だから中妻さんが管理面に時間がかかっているなら、僕に任せて、前に進んでほしいと思っていました。

丸:
浦田さんがCASTの役員になった話が一番面白いですよね。肥銀キャピタル側としては、色々な会社を見てきたわけですよね。何でCASTには思い入れができたんですか?

浦田:
ヤバかったけど、自分ができることが多くあるなと感じました。

丸:
泥だらけの船だけど、やりがいはあるだろうと(笑)

浦田:
僕が見てきた会社のなかで、正直一番泥だらけでした。泥どころじゃなく、水も入ってきていて(笑)

丸:
穴だらけなのに、船長は大丈夫だって言ってるし(笑)

中妻:
僕そんなに泥と思っていなかったんですけど……。

丸:
それが一番ヤバいんですよ(笑)

浦田:
その中妻さんのピュアさが一番よかったですね。船長は、舟に穴が開いていても遠くを目指しているなと。CASTという船が沈むのは嫌だなと思って。であれば、自分が穴を塞げばいいじゃんというかんじです。


リアルテックはビジネス視点でも信頼している

丸:
資金調達を経験して、VC業界をどう思いましたか?

中妻:
資金調達の仕組みをうまく使えるといいなと思いました。でも最初は相場が分からなくて。VCの人達っていきなり数字の話を始めるじゃないですか(笑)

丸:
そうですよね(笑)相場って、ないと言えばないんですけど難しいですよね。

本来出資には“シェア”の考え方があって。例えば「何%をあなたに預けたい」「じゃあ、何%支払いますか?」という話。支払うことで、利益もリスクも両方シェアして仲間になってくれませんか?ということ。つまり相場というか、価値は周りが決めるんですよね。

中妻:
そういう意味では、リアルテックを一番信頼できたのは事業会社2社が関わっていることです。リバネス・ユーグレナの2社の経営者がコミットしている組織であることに、ビジネス的な視点で安心感があります。

リバネスには法人化前からずっとお世話になっているので、経営の生々しい相談ができる。ユーグレナは代表の永田さんにお会いした時、自社で製油所を持っている話を聞いて。お客様になるかは別にしても、CASTに興味を持って話してくださったのはありがたかったです。

丸:
その謙虚さがすごく大切だと思います。浦田さんが「できることがたくさんある」と思ってジョインしたのも分かります。

僕も未だに「経営は分かりません」と言っていまして。そうすると、人材の流動化につながるんです。いい方向に進めると思いますよ。熊本発のディープテックベンチャーとして、ぜひいい事例になってください。



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新たな資金調達を経て、益々事業を拡大していくCASTにご期待ください!

またCASTでは引き続き、一緒に働く仲間を募集しています。エンジニア・営業・マーケティング等、活躍いただける方を多方面で募集中です。CASTで働くことに少しでも興味を持った方は、ぜひお気軽にご連絡ください。

▼Webサイトお問合せ先
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https://twitter.com/tsuma85
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▼浦田のTwitter
https://twitter.com/urata164


執筆:小溝朱里



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