見出し画像

【代表・中妻啓さん】“おもしろそう”から始まった、触覚センサーとの歩み

独自の薄型センサーをコア技術に持つ、株式会社CAST。製造業の課題解決を目指して、商品開発を進めています。

前回までは、創業ストーリーを2回に分けてお届けしました。研究に没頭していた約16年を経て、研究と開発を両輪で進める企業へと歩んできたことがわかりましたね。

今回は、代表の中妻啓さんにインタビュー。中妻さんは2012年から熊本大学の助教をしていますが、もともと熊本は縁もゆかりもなかったそう。ではなぜ、熊本で働くことになったのでしょうか。そもそもいつセンサーと出会い、なぜ研究の道に進もうと思ったのでしょうか。その歩みを聞きました。


【株式会社CASTとは】
・創業:2019年9月
・創業メンバー:中妻啓・田邉将之・小林牧子
・メンバー数:7名(2021年11月26日現在)
・所在地:熊本県熊本市中央区黒髪2-39-1(熊本大学内)
・事業内容:センサーおよび周辺機器・ソフトウェアの研究・開発・製造・販売
・ミッション:「あらゆる場所にセンサーを」



生命科学への興味がロボットに

中妻

私はセンサーそのものというより、「皮膚感覚」といって触覚に関する研究をしています。創業ストーリーの前半と重なるのですが、ロボットの表面に取り付けられるセンサーがないかを、熊本大学に着任したときには考えていたんです。

触覚関連の研究は、大学時代から行なっていました。出身校は東京大学 工学部 計数工学科です。学科は3年生になるときに選ぶ制度だったので、1~2年生の頃は生物や物理を広く勉強していました。

そもそも理数系の大学に進学したのは、高校のときに生物が好きで、大学では生命科学について勉強してみたいと思っていたからです。今とは違う分野に興味があったんですよ。


大学で生物を勉強していると、半年経たないうちに「ちょっと違うな」と感じるようになります。当時は高校と大学で勉強できる内容に乖離があったので、少しイメージしていたのと違いまして。かつ、生物の実験はうまくいくまでにかなり時間がかかるとわかって、ぼくは正直めんどくさいなと思ってしまいました。

それから触覚の分野に出会うわけですが、触覚の前に「ロボット」に興味を持ったんです。

夏休みの課題で、自分でテーマを決めて研究をしていたときにロボットを取り上げました。何でテーマをロボットにしたのかはあまり覚えてないけど、ロボットのブームが来ていたように思います。ロボットの研究プロジェクトが世界に出たり、ロボットのデザインが導入されたり。あとは宇多田ヒカルのミュージックビデオでもロボットが登場したこともあったし、ロボットが社会に接続されたような時期でした。


レポートを書いていたら、ロボットの研究をしている先生が1年生向けにゼミを開催する機会がありました。参加してみたら、研究内容がおもしろそうだったんですよね。どこの学科に進んだらいいか先生に聞いてみたら、機械系の学科か、計数工学科か、と教えてもらいました。

なかでも計数工学科は「数学と物理と人間を扱うようなシステムを作っている」と聞いたんです。医療工学や神経工学の先生も所属していて、仮に再び生物に興味を持ったら、選べる選択肢がありそうと思いました。完全に機械だけではない分野があるんだなあ、おもしろそうだなあ、と思って惹かれていきましたね。


センサーを作って動作を確認する、その流れが好き

画像2

計数工学科に進んだのですが、進学したころにはすでにロボットのボディの研究は終わっていました。流行ってから3~4年は経っていたので、ある程度の研究はできていたんです。だから次のフェーズの研究に進んでいた。それが「触覚センサー」でした。だから修士課程は触覚に関する研究をすることにしたんです。

実際に研究をしたら、自分に合っていたんでしょうね。「センサーを作って、それが設計通りにきちっと動くかを確かめる」、その一連の流れが好きなんだろうなと思います。楽しく研究していました。


修士課程を卒業する頃、就職するか進学するかで迷ったのですが進学する道を選びました。就職は、いつでもできると正直思っていたんです。一応会社見学は行ったもののそこで出会った同じ研究室出身の先輩からのひとことが後押しになりました。「進学がダメだったら就職したらいいじゃん」と。

「ああそうか」と納得したので、博士課程試験を受けたんですよね。とはいえ「いつでも就職できる」なんて、世の中を少しなめていた気もしますが……(笑)

その後、東京大学大学院 情報理工系研究科でシステム情報学を専攻し、博士課程を取得することになります。大学生の頃の研究を延長するようなかたちで、触覚センサーの研究を続けていました。

そして再び訪れた就職活動のなかで、たまたま熊本大学と出会ったんです。


急にご縁がつながった、熊本大学

画像1

就職活動では、入社したかった会社に採用いただけませんでした。どうしようかなと思いつつも、どこにも決まらなかったら東京大学でそのまま研究を続けてもいいか……と思うようになって。それでも研究室の先生相談してみると、「1年くらいは研究室に残ってもいいけど……」と。

そして次に出てきた言葉が「ちなみに、熊本どう?」だったんです。

いきなりですよ、いきなり。話を伺っていくと、同じ分野の計測の研究をしている先生が熊本大学にいて、若い先生を探している、と。だからどう?っていう内容でした。正直熊本には縁がなく、当時は思い入れもなかったので「1日考えます」と返事をしました。

考えたうえでの結論は、「熊本大学にいる先生に、会ってみないとわからないか」でしたね。なので一度熊本に行って、直接詳細を聞いたんです。その先生もいい方だったし、熊本で就職したからといってずっと熊本にいるわけではないだろうなあとも思っていたので、応募を決め、採用いただきました。

たまたまのご縁でしたが、熊本に来てもうすぐ10年になります。ずっと熊本にいるわけではないと思っていたのに、あっという間の10年でした。

2012年から助教として研究を続けて、大学の研修に参加したときに田邉や小林と出会ったのだから、よかったなあと思っています。

改めて振り返ると、大学1年生の頃から今までがすべてがつながっているのがわかりますね。


株式会社CASTは、「nano tech 2022」に出展中!CASTの出展情報はこちらです。
CAST独自のセンサー技術を知る機会として、気軽にお立ち寄りください。

【オンライン展示会】

2021年11月26日(金)~2022年1月28日(金)

次回は株式会社CASTのコア技術について、記事を更新予定です。
みなさま、よいお年をお迎えください。



コンテンツ設計・取材・執筆:小溝朱里


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?