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発達障がいとはなにか~ある母の告白

「Uくん、最近、とっても頑張ってますね」

我が家の子どもUは,胎児の頃から先天性の疾患がある(300以上ある子どもの特定難病だ)。だからUは,親のわたしにも病院の医師にも学校の先生にも,産まれる前から常にマークされている。

「生まれる前はいいんです。お母さん,大変なのは生まれてからですよ」

妊婦健診で胎児の異常が見つかり,即日,子ども病院(地域で1つしかない重症患者を診る最大規模のトップオブトップの病院で,医師からの紹介じゃないと受診できない子ども専用の病院)へ転院が決まった日から,わたしはUの将来を心配するのを止めた。

Uの発達について心配するのをあの日から忘れてしまったから,まわりが重症妊婦ばかりの中で,1人お気楽妊婦だったわたしに,医師はたしなめるように言った。

どのくらい重篤かと言えば,わたしが入院したその日,ナースセンター横のNICUの部屋に「ここしか空いてなくて」と,入れられたけど,隣のベッドの彼女は,死産の子どもを荼毘に付してきたばかりの人だったくらいのヘビーさ。

翌日には,大部屋に転室したけど,昼間はみんな明るく笑って喋っていた。けれども,夜になると,健診から救急車で直に子ども病院に搬送されて以来,一度も家に帰れない妊婦や年少の子どもに会えない妊娠ばかりで,夜になると,カーテンの奥ですすり泣きが漏れ聞こえる。

そんな具合。

だから,産まれる前までは何の問題もない妊婦だったわたしは,午後のおやつでカステラを食べて(妊娠糖尿病だったけどおやつに出た),夕食後に陣痛が始まって分娩台に移動して15分で自然分娩し,産後も回復がすこぶるよかったので,「ベッドを待っている人がいるので,1日早く退院して下さい」と追い出されたほど。

幸いにも子どもも健康で生まれ,検査を終えたら,親子で一緒に退院できた。

でも,退院してから,生後1年までは,最初は1か月,その後は3か月ごとに赤ちゃんだったUをつれて,新生児外来など3科を掛け持ちし,1日丸つぶれのフォロー受診があったので,ヘロヘロだった。

だから,フォローが半年に1回になった科ができた時は,嬉しかったし,3年に1度の受診でいい科もあり,本当に嬉しい。

Uの疾患は,見た目にはわからない内的な疾患なので,「ヘルプマーク」の対象者だけど,運動制限もない。

だけど,「前例がない」ということで,子ども園の入園を断られたこともある。その後,きょうだい3人8年間お世話になった,新設子ども園に受け入れて頂いた時は,本当に嬉しかった。

話は飛ぶが,その子ども園は,キリスト教系の園。障害児保育にも明るいところで,Uの他にも病気を抱えている子どもさんが一緒に普通に生活するインクルーシブ教育を字実践している。園長先生,子ども園には大変感謝している。

公認心理師(心理学初の国家資格で,公的資格で臨床心理学の最難関資格の臨床心理士とは別の資格。わたしは臨床心理士歴が長いので公認心理師の資格で仕事はしていない)の勉強のために,精神保健福祉士の参考書を読んでいたら,Uの病気が「発達障害」のくくりに載っていて,初めて,自分が「障がい児の母」なんだと思い知った。

よく考えたら,わたしは精神保健福祉士の資格(精神科を退院する人のソーシャルワークをするソーシャルワーカーの国家資格:PSWからMHSWに日本語表記が変わったらしいけど)も持っているので,授業では習わなくても(教員はしばしば必要ではない項目を飛ばす),教科書に載っていたはずだ。

でも,Uが生まれてくるまで,その病気のことを知らなかったし,記憶にもなかった。

それが資格勉強のために開いた教科書で,「あなたの子どもは《発達障がい》なんですよ」と,わざわざ念押しされたようで,少しだけ泣けた。

「あのUは発達障がいなんですよね」

主治医に確認した。

「はい,そうです」

あっさり,肯定。

事実だからいいんだけども……。

今でこそ,発達障がいは,ADHD(注意欠如多動性障害)やASD(広汎性スペクトラム障害で,昔の「自閉症」)が知られるけれど,それらは神経発達のくくりだ。

乱暴な言い方をすると,脳神経系の発達の育ちなのだ。

だけど,実は,ADHDやASDだけが発達障がいではないのだ。わたしは心理士なので,そのことは当り前に知っているけれど(じゃないと,仕事にならない),一般的には知られていない。

そもそも,治る疾患は「病気」で,一生抱えて生きていくものが「障がい」なのだと,PSWの授業で習った。(ここだけの話,PSWは福祉の資格なので,心理学のわたしには深い溝を感じたし,PSWで食べていくより心理職がいいと職業アイデンティティが明確になった)

大学生の頃から,発達障がい児のサポートをしてきたから,彼や彼らのおしもの係を含めた療育(治療と教育)は,当たり前の日常だった。子どもたちは,体当りでわたしたち,治療者にぶつかってくるから,こっちも真剣にかわいがったし,遊んだ。

だから,妊娠が分かった時,羊水検査は受けなかった。

「この子がどんな病気を抱えているとしても,私たちの子どもとして育てようね」

2人の意見は一致していた。

だから,お腹の子どもがどうやら疾患を抱えているらしいことを告げられた時,転院の受け入れが決まるまで2時間ほど悩んだけど,後は,もう心配しなかった。

それは,司法試験に落ちた司法浪人で無職の彼と入籍した時と同じ,何だか知らないけれど,「未来は明るいから大丈夫」だという根拠のない自信があった。

そして,その自信は,確信に変わった。

夫は,無事に司法試験に合格して,わたしが産休に入るのと引き換えに司法修習生になった。

つづく

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