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『PERFECT DAYS』(2023)
「光源」から照射された「影」
PERFECT DAYSが指すものは平山のルーティンワークである。トイレ清掃員として、箒をかける音で起き、家の前の自販機でコーヒーを買い、カセットテープを流し、清掃、木漏れ日を見る。居酒屋の女将から「平山さんはインテリね」と言われるような平山の生活は、私たちが見過ごしていた何気ない瞬間を大事にしているのだ、と思うかもしれない。本当にそうなのか。
親族と別れたあとの涙
『憎しみ』(1995)
「保守的」でも「進歩的」でもない若者
この映画に出てくる若者は、パリ郊外の移民スラムに住んでいる。彼らの生活は大麻とコカイン、窃盗、どこのだれとヤッた、など反体制を無意識に背負ったものとなっており、映画終盤のレセプションパーティーでの「普通の人々」との所作や言動の違いが浮き彫りになる。彼らが自分たちの生活に満足していないことは、屋上で兄貴が弟を逃がす場面や、妹に学校に行くよう促す場面、たまり場と