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“一流の人”の仕事術

自分で書いておいて何ですが、いかにもありがちなタイトルだなと思います。
ものすごい肩書きや経歴を持つコンサルタントが登場しそうだし、最新のトレンドを踏まえた、クリエイティブかつ革命的なストーリーを聞かせてくれそうです。

残念ながら、というより当然ながら、これはそういった類の話ではなく、読んでもカリスマ的な経営術が身につくどころか、絶妙なお客さま対応ができるようにも、他に先んじるアイデア量産のきっかけが掴めるようにもなりません。

そういったタイプの知識や情報お望みならば、どうぞもっと相応しいページへ、と思いますし、皮肉ではなく、その意欲が身を結ぶことを祈ります。
自分のするべきことが明確に見えている、という状態は、得がたく尊いものだからです。


私はどちらかといえば、まだ進む方角のわかり辛い道を歩いている最中ですし、同じように、あれこれ考えあぐねている方が読んでくださることを願います。

私たちが選ぶ道や方向が同じでなくても、自分の最善を尽くしたい、持てる能力を発揮して、誰かあるいは何かに貢献したい、という思いは共通していると信じるからです。

仕事は目に見える愛だ

素晴らしい思想家のカリール・ジブランが言うことはもっともですが、ではそれをどのように形にすべきか、時々迷い、悩みます。

そのひとつのヒントとなりそうな会話を、つい最近ひとりの友人と交わしました。


彼女はヘアメイクのプロとして、カルチャー講座やプロ向けの講習会を開いていますが、そのなかで最も人気があり、受講者の多い教室を今期限りで辞めるといいます。

驚いて理由を尋ねると、そのセミナーを取り仕切る、責任者の名を上げて静かにこう言いました。

「あの人は最低限のことはしてくれるけど、一流の人とはとても言えない。人間的に信用できない人と、これ以上仕事を続けていけない」


この友人とは、以前“一流とは何か”を話し合ったことがあります。
私たちが考えた“一流”の条件は、技量や知識よりもまず、決して逃げないということです。

どのような仕事や条件下でも、自分のすべきことをまっとうすること。責任逃れをしないのはもちろんのこと、このくらいでいいや、とは夢にも考えないこと。
ある種の追い詰められ方をしながらも、肝を据え全力を尽くすこと。


その責任者の方は、普通の仕事相手としては無難であり、そこそこの働きをしてくれる。
けれど、自らの負担を減らすこと、収益を上げることだけに頭を使いすぎ、もっと何かを向上させよう、集まってくれる受講者さんたちを喜ばせよう、ということはみじんも考えていないそうです。

それでは物事は今以上に膨らまないし、どんな仕事にも部分的に関わるだけで、常に身の安全に注意している人は、いざ何かが起こった時も、決して矢面には立ちません。

そういった人と一緒では、自分もそこまでの仕事しか出来ずに終わってしまう。
私は自分なりに一流の仕事がしたいし、二流に甘んじていたくない。
だから講座自体を終わりにするのだ、という話でした。


私には彼女の言い分がよくわかります。
一流でいたいと望む限り、彼女がその人とやっていく選択肢はありえません。

もちろんこれは一流こそ素晴らしい、二流であることがいけないという単純な話ではなく、世の中にはいくつものレイヤーがあるということです。

その中で、ある人は危険をおかしてでもより良いものを目指したい、そのための全責任は自分が負うからとそこに挑むし、ある人は安定して決められたことをこなしていきたい、危険なことはしたくない、リスクも責任も自分は負いたくないというだけです。

自分の理想が叶わず、何より周囲の人に失礼になるからそれを終わらせる、というのは彼女なりの一流の判断です。

だから私は、もし自分が同じ立場でもそうすると伝え、彼女も他の稼ぎ口見つけなきゃ、と笑いつつ、自らの決断に満足しているようでした。


テレビや雑誌で取り上げられたり、セミナーを開く有名人でなくとも、一流の人は大勢います。

お年寄りを支えながら公園を散歩する介護士さんや、何を聞いてもすぐにその野菜の蘊蓄を教えてくれる八百屋さん、ベビーカーを押しながらもう片方の手で幼稚園児のコートの襟元を整えてあげるお母さんも。

気をつけていれば一流の仕事をする人たちをどこでも目にし、たとえどのような仕事に携わるのであれ、私もそのようでいたいと思うのです。


そしてそんな気概の前では、どんな仕事であれ、本質的に大差ないのではとも感じます。
マリアン・ウィリアムソンがこう言うように。

ウェイトレスから映画会社の社長まで、エレベーター係から一国の大統領まで、神の前で取るに足らない職業はない。
その仕事がどんな形をとったにせよ、内容は万人共通である。私たちは人間の心に奉仕するために生きている

これこそ一流の人の仕事である、と私は強く信じます。

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