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散文

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2021年7月の記事一覧

ray

ray

あなたに会いたくて
生まれてきました

光に身体をまとって遥々

はじめて名前を名乗りあったとき
はじめて名前を呼んだとき
はじめて瞳で語りあったとき
はじめて手の温もりにふれたとき
はじめて限りある時間に泣いたとき

人間であることの恥ずかしさと悲しみ
そしてそのすばらしさを想った

あなたがいなくなってもわたしは
なにも変わらず生きていくでしょう

それでもわたしは
あなたに会いたくて

息を

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しーんとするとき

しーんとするとき

二年前の秋に、母方の祖母が亡くなった。体調を崩して入院し、その後肺炎が悪化して、帰らぬ人となった。祖母は小柄で静かな人だった。でも話し出すと面白い人だった。

入院中、祖母はよく病室をぼんやりと見回しながら「変なものが見える」と話していた。「変なものって、なにが見えるの?」とたずねると、「うまく言えない」と言う。

そして亡くなる少し前に、ベッドの上で何か手作業をしていたところ、祖母ははっと後ろを

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