kamisiro

大人向けライトFTを書いています。長らく自サイトに引き篭もっていましたが、少しだけ軒下…

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大人向けライトFTを書いています。長らく自サイトに引き篭もっていましたが、少しだけ軒下をお借りしに参りました。お手柔らかにお願いします。作品は http://byablue.web.fc2.com/ でも公開しています。

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  • 第四話 朔風花払――きたかぜはながはらう――

    『花巡る暦シリーズ』の第四話。年末が近付き慌ただしく過ごす中、兄の桐眞宛に差出人不明の恋文が届けられる。しかし、どうやらそれにモノが絡んでいることから、激怒する木栖家にまつわるモノたち。ところが、要対策の文字が掲げられたそばから、桐眞が攫われてしまった! 誰にも助けを求められない状況で、咲保は兄を連れ戻す決意をする。果たして、無事に助け出せるのか。また、恋文の差出人の正体は?

  • 第三話 山茶始開 ―さんちゃはじめてひらく―

    閑話。木栖家から戻りもう一日が終わろうというのに、茉莉花が遭遇するあれやこれや。乙女心は花のように乱されやすいが、しぶとくもあります。

  • 第二話 鹿肉蔦木喰―もみじつたきばむ―

    花巡る時シリーズ第二話。長きにわたる武家の時代が終わり、帝を頂点とする新政府が樹立してから多少、落ち着き始めた頃、 西洋から入ってくる新しい価値観により、古き伝統や風習が駆逐されつつあったそんな世で、生まれつき物の怪に好かれる厄介な体質をもつ旧公家の伯爵家の次女、咲保は初めて炉開きのいっさいを任されたが、弟の反抗期やら、友人から西の方で不穏な気配もあると噂を耳にしたりと、落ち着かない。果たして、無事に冬を迎えられるのか、一家を巻き込むてんやわんやのひと騒動の一幕。

  • 第一話 蟄蛇坏戸―へびかくれてとをふさぐ―

    和風ハイソサエティドメスティックFT小説『花巡る暦』のシリーズ一話目。 なんちゃって明治時代の世界で、旧公家の伯爵家の次女、咲保が遭遇する物の怪やモノたち、それらに対する家族や友人らとの交流や、悲喜交々の日常生活。たまにちょっとしたバトルもあります。

最近の記事

【小説参考資料】  第四話 朔風花払

現在、花巡る暦シリーズと題して、一話完結型小説の第四話までnoteさんで公開させてもらっているんですが、特に第四話については、ファンタジーと言いつつ現実とリンクしている部分もあるので、参考資料として紹介しておきます。 以下、外部リンクになります。 ・宇津田姫 里村紹巴「匠材集」 画像選択左列53行目。 上の画面向かって一番左端の記載がそれです。 当たり前に、いろは順に書かれています。 ほんの少しの手間で、家でこういうのが見られるというのは、すごいな。 膨大な量のこれらを纏

    • 第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十九)

      <全十九話> <一> <二> <三> <四> <五> <六> <七> <八> <九> <十>   <十一> <十二> <十三> <十四> <十五> <十六> <十七> <十八> <十九> <十九> ◇◇◇    ざりざりとしたこめかみ付近の刺激で、咲保は目を覚ました。みぃの鼻面がすぐ目の前にあった。少し魚くさい。枕のすぐ横に寝転びながら、咲保の毛繕いをしてくれたらしい。ぐるぐると喉を鳴らす声が大きく聞こえる。優しくしてくれているのだろうが、猫の舌は痛い。 「目ぇ覚

      • 第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十八)

        <全十九話> <一> <二> <三> <四> <五> <六> <七> <八> <九> <十>   <十一> <十二> <十三> <十四> <十五> <十六> <十七> <十八> <十九> <十八>    玄武は、おとなしくされるがままに縛についた。見るからに、戦意が喪失しているのは、やはり、目の前で仲間が残酷な目に遭ったからだろうか。それでも、恨むどころか、安堵の表情を浮かべていた。玄武にしても、この騒ぎは想定外だったのかもしれない。その時点で孔雀明王はお役御免となり

        • 第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十七)

          <全十九話> <一> <二> <三> <四> <五> <六> <七> <八> <九> <十>   <十一> <十二> <十三> <十四> <十五> <十六> <十七> <十八> <十九> <十七>   「白姫?」  鯉のことらしい。はっ、と嘲りの声がついて出た。腹立ちまぎれに力を込めて、鯉の身体を足で踏み躙った。先ほどよりも、焦げた臭いが強くした。 「しろひめっ!」  初めて、幼子のように形振りかまわず、女が叫んだ。 「返しませんわよ。これは連れ帰ります。うち

        【小説参考資料】  第四話 朔風花払

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        • 第四話 朔風花払――きたかぜはながはらう――
          20本
        • 第三話 山茶始開 ―さんちゃはじめてひらく―
          3本
        • 第二話 鹿肉蔦木喰―もみじつたきばむ―
          13本
        • 第一話 蟄蛇坏戸―へびかくれてとをふさぐ―
          6本

        記事

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十六)

          <全十九話> <一> <二> <三> <四> <五> <六> <七> <八> <九> <十>   <十一> <十二> <十三> <十四> <十五> <十六> <十七> <十八> <十九> <十六>    まぁ確かに、と咲保は硬い音を響かせて争う孔雀明王と玄武を、後方の離れた位置から眺めて思う。みぃは眠くなったらしく、あくびをしながら足元で横たわっている。抱き上げようとしたが、臭いで嫌がられた。鯉は諦めたのか、ぐったりとして動かない。心がへし折れたなら、重畳だ。  それ

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十六)

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十五)

          <全十九話> <一> <二> <三> <四> <五> <六> <七> <八> <九> <十>   <十一> <十二> <十三> <十四> <十五> <十六> <十七> <十八> <十九> <十五> ◇◇◇ 「坊ちゃん、だめですよ」  こっそりと背後から忍び寄ろうとする気配に、まるおは前方を見据えたまま注意をした。ちぇーっ、とつまらなさそうな声が答えた。 「まるおは後ろに目でもついているの? どうして僕ってわかるんだよ」 「気配でわかりますよ。どうしたんですか。と

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十五)

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十四)

          <全十九話> <一> <二> <三> <四> <五> <六> <七> <八> <九> <十>   <十一> <十二> <十三> <十四> <十五> <十六> <十七> <十八> <十九> <十四> ◇◇◇  ドン、と突き飛ばされるように、縛られたまま桐眞は板の間に転がされた。 「姫、すこし外の様子を見てくる」  身体を捻りながら、なんとかゆっくりと起き上がると、いつの間にか男がいた。否、書生姿から言って、あれが咲保の言っていたクロタケに違いない。つまり、玄武が人

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十四)

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十三)

          <全十九話> <一> <二> <三> <四> <五> <六> <七> <八> <九> <十>   <十一> <十二> <十三> <十四> <十五> <十六> <十七> <十八> <十九> <十三> (四天王かしらね?)  考えられるのは、様子を見に水面まで出た鯉が門を閉じようとしたかしたために敵と見做され、増長天辺りが戟で調伏しようとしたのかもしれない。 (ざまあみろ、だわ!)  意地悪く咲保は笑うと、袂から透明な珠を取り出した。 (そろそろいいかしらね……)

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十三)

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十二)

          <全十九話> <一> <二> <三> <四> <五> <六> <七> <八> <九> <十>   <十一> <十二> <十三> <十四> <十五> <十六> <十七> <十八> <十九> <十二>  離れに戻ると、炬燵を囲んだ三人のモノたちがあれこれと活発に話し合いをしていた。会話からはいくつか物騒な単語もまじっていたが、まるおもいつもの調子に戻った様子に、咲保は安心した。 「ただいま」 「お話し合いはどうでした? ご家族には納得していただけましたか」 「一応はね。

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十二)

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十一)

          <全十九話> <一> <二> <三> <四> <五> <六> <七> <八> <九> <十>   <十一> <十二> <十三> <十四> <十五> <十六> <十七> <十八> <十九> <十一> ◇◇◇  母屋の両親の部屋を訪れた咲保が見たものは、お通夜状態としか言いようのない家族の姿だった。部屋がますます暗く感じる辛気臭さだ。憔悴とやる場のない怒りと困惑と悲しみ。その他、さまざまな負の感情が視覚でも、ぶつかってくる刺激でも感じとれた。特に両親は、ここ数週間の身体

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十一)

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十)

          <全十九話> <一> <二> <三> <四> <五> <六> <七> <八> <九> <十> <十一> <十二> <十三> <十四> <十五> <十六> <十七> <十八> <十九> <十> ◇◇◇  この状況で、どうすればいいんだ――?  自身の置かれた状況に、桐眞は戸惑った。 「なぜ禰古萬がっ、禰古萬がいるのっ!? どこから入り込んだの! ああ、なんと恐ろしい……ゲン、ゲン、お願い、早くなんとかしてちょうだい!!」  猫を古い呼び名を叫びながら怯えるのは

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (十)

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (九)

          <全十九話> <一> <二> <三> <四> <五> <六> <七> <八> <九> <十> <十一> <十二> <十三> <十四> <十五> <十六> <十七> <十八> <十九> <九>  父が帰宅したのは、それから間もなくのことだった。『あわいの道』を使ったにも関わらず荒い息をついている様は、それだけ動転していることが察せられた。顔色も悪く、目の下にうっすらと隈も浮かんでいる。父こそ、今にも倒れそうだ。 「お母さまは大丈夫ですわ。疲労が溜まっているところに

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (九)

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (八)

          <全十九話> <一> <二> <三> <四> <五> <六> <七> <八> <九> <十> <十一> <十二> <十三> <十四> <十五> <十六> <十七> <十八> <十九> <八> ◇◇◇  咲保は、浜路の忠告に従い、まず着替えることにした。普段着だが、ちょっとした外出にも着ていけるよう護法を仕込んだ市松柄の紬だ。簪も同様に取り替えた。おそらくこの先、感情的になる場面が増えるに違いないと予想された。そのための自衛だ。いちいち倒れたりしてはいられない。  次

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (八)

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (七)

          <全十九話> <一> <二> <三> <四> <五> <六> <七> <八> <九> <十> <十一> <十二> <十三> <十四> <十五> <十六> <十七> <十八> <十九> <七>  咲保は、わっ、と泣き伏したくなった。だが、できなかった。気を緩めれば、二度と立ち上がれなくなる。彼女が取り乱せば、弟や妹も混乱させる。だが、この嵐の中にいるような、荒れ狂う気持ちをどうすればいいのかもわからない。 (足が冷たい……寒い。ああ、竈に火を入れなきゃ。お部屋にも炭

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (七)

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (六)

          <全十九話> <一> <二> <三> <四> <五> <六> <七> <八> <九> <十> <十一> <十二> <十三> <十四> <十五> <十六> <十七> <十八> <十九> <六>  「お手伝いできなくて申し訳ございません。情けないことですが、どうにも濡れるのは苦手で……平気なものもいるのですが……」 「気にしないで。わかっているわ」 「ありがとうございます。それで、あちらで若さまがお待ちですので、いらしていただけますか。まずは、お庭をご覧いただきたく」

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (六)

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (五)

          <全十九話> <一> <二> <三> <四> <五> <六> <七> <八> <九> <十> <十一> <十二> <十三> <十四> <十五> <十六> <十七> <十八> <十九> <五>  「じゃあ、その頃、坊ちゃんを見初めた可能性もあるねぇ。輝陽か行き帰りの『あわい』でかはわからないけれど……とりあえず、その大旦那さまの屋敷周辺から調べてみるのがいいだろうね」 「すみません。お手数おかけします」  手をついて、桐眞は暁葉に向かって、再び、深々と頭を下げた。

          第四話 朔風花払 ―きたかぜはながはらう― (五)