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茶髪をやめて、黒く染めたあの日。

髪を染めたことがかつてあった。

ビールとオキシドールで染めていた。

高校生の頃。

わたしの通う学校では髪色検査と

パーマ検査があった。

わたしは天パだったので、なぜか天パは

目の敵にされる。

天パは、遺伝です。

生まれつきです。

生まれつきを校則の中で疑われるって

どういうことなんだろうと。

理不尽を感じながらも、

もちろん校則的にはやっちゃ

いけないことだったのを承知で。

このやっちゃいけないことって

いうことをやっっちゃっていた。

個人的なことだけどわたしは

天パだったので、その学校では

生まれつき天パであることの証明を

させられた。

トイレに行って髪を濡らしてきて

パーマじゃないことを明らかにする。

そういうのいらんよって思ってた。

トイレに一人髪を濡らしに行く時の

わけのわからない屈辱感は、存在を

否定されている気分になる。

こういう気持ちだった。

生まれつきってだめですか?

そんな気持ちになって。

もやもやして。

その後、校則違反していないと

言われても

なんらうれしくない。

そんな日々に嫌気がさしていたのか

ある日、あ、髪染めようって思った。

生まれつきでも疑われるのだったら

もう染めてしまえと。

そして、薬箱からオキシドールを

もってきてじゃじゃじゃって髪を

染めた。

同級生たちもビールも染まるらしいよって

話していたから、父や母の残したビールを

ビール瓶ごとお風呂にもっていっていた。

そして実験みたいに染めた。

髪の毛がビールくさくなってゆく。

いいぞビールくさい高校生って

いいもんだぞってじぶんをなんか

ふしぎと鼓舞してた。

染めていったら叱られるのはわかって

いたけど、そんなことどうでもよかった。

やぶれかぶれだったんだろうなって

思う。

最初は部分染していたけど、もう

いいやどうなってもいいやと

オール染めした。

わたしが左利きであることもいちいち

学校に届け出をしなければならないこと

髪の毛だって天パであることと直毛で

あることの線引きはなんのために

あるのかって思ってたら、

そうしようと思っていた。

母もわたしのその髪をみて

え?

って顔したけど、したくてしたのは

あなたなのだから、自分で責任を

とれって言っていた。

染め直せとは言わなかった。

案の定叱られた。

停学になるかなって思ったけど、

担任のたーみんは、あんたなぁって言った

後、なんか理由があるんやろ? って

聞いてきた。

もぞもぞ言った。

たーみんは、いつもわたしの味方には

なってくれていた。

あの子は天然ですねんって、生活指導課の

先生に割って入ってくれていた。

たーみんはわたしも馬鹿げてると思ってるよ

あの校則ってぽそっとつぶやいた。

でも成す術をその頃は知らなかった。

じゃあどうしたらいいんですか?

とは聞けなかった。

そして一週間したのちにわたしは

黒くなって戻ってきた。

一週間だけ抵抗した。

黒くなってというのはわたしの地の色では

ない。

黒色のカラーリングをしたからだ。

黒く染めてきましたって生活指導の
先生の前に行った。

黒く染めてきましたよねわたしって
思ってた。

髪を染めるのが禁止っていうてたやんって。

茶色だろうが赤かろうが黒く染めたん
やって。

これも違反ですよね?

って言いたかった。

黒く染めてきて、先生たちは納得していた。

やっぱりわたしはその時思ったのだ。

天パ、左利き、髪の毛の色、もろもろ

うまれつきってだめですか? って。

あの日、叔父のハルヲさんが、

ぼんちゃんなにがあったかしらんけど

染めんとあかんでって黒の毛染めの

染料を買ってきてくれたことを

覚えてる。

ハルヲちゃんは白髪染めしたいん 
やけど、同じの使おうやって言った。

ハルヲちゃんはこうやるんやでって

楽しそうに洗面所の前にいた。

わたしもふてくされてその鏡の前にいた。

ツンとした染料の匂いに泣きそうになった。

何に対してなのかわからないけど

そんな感じがした。

でも泣くと、オール負けになる気がして

こらえていた。

ハルヲちゃんとおそろいやなって叔父は

言った。

父ともうまくいってなかったときに、叔父は

そうやってわたしの気持ちのそばにそっと

いてくれた。

あの日わたしはオキシドールやビールで
茶髪にした時よりも、

叔父のハルヲちゃんと共に黒く染め

あげたあの日のことを思い出す。





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