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マスクの向こうの笑顔、その一瞬に救われた。

わたしは着るものにほとんど気を遣わない。

それは今に始まったことじゃないけれど。

よくおさがりをもらったりする。

おさがりっていうのかな。

祖母が着なくなったグレーのニットの

アンサンブルはずっと勝負服のように

着ていたことがあった。

昔は弟の着なくなった飽きちゃった

ブランド物のシャツとかも、もらって

着ていたりした。

それメンズですよねって言われて。

弟のなんですみたいな、えへへって。

すごい仲がいいわけじゃないのに

ちょっとよそよそしいこともあるのに

服はもらう。

本も昔は貸し借りしていた。

貸していたことも忘れていた頃にしか

戻ってこないけれど。

そして服の話。

最近は母からもらうものが多い。

母はわたしより派手好みなので、ピンクとか

オレンジとか黄色とかを好んで着る。

わたしは寒色系が好きだ。

できたら着ていることすら感じさせないぐらいの。

目立たぬようなもの、ザ・地味っていうのが

好みなのだ。

服の量がわたしの3倍はあるんじゃないかって

いう母がときどきこれは「いらんものです」

ケースの中にいろいろ入れてある。

そして、あれあげるよって言われて。

あれはどうかな派手だけどって思いながらも

いらないの? まだ着れるのにって言われると

すみません、いただきますみたいな感じで

わたしのクローゼットに収まる。

そしてこの間、とあるシャツを着ていた。

駅でタクシー待ちをしていたらわたしの前で

降りたお客さんがビジネスマンたち

だったのだけれど。

ひとりの欧米系の男の方が、タクシーを降り際に

どうぞ乗ってくださいの仕草をしてくれたあと、

何度か歩いたと思ったらきびすを返して戻って

来た。

ちょっとだけ後ずさったその数秒後。

わたしが着ていたシャツの言葉を読んだみたいで、

彼の視線が動いた。

マスク姿のまま目元は笑ってるそんな表情のまま

すぐさま親指をたてて、ウインクみたいなことを

してくれた。

え? なになに? って母からもらったシャツの

胸元をよく見ると

わたしは勝つために乗っている、

失うものなど何もないから、


みたいなことが書かれているみたいで、

のけぞりそうになった。

そんな大層な目標をこの方持ったことがない。

正月の抱負もちょっと途方に暮れるタイプだ。

Tシャツの英語はそんなことが書かれていた

みたいで、恥ずかしかったけど。

だけど、その時マスクの向こうで笑ってくれた

その人の笑みをみたとたん。

緊張していた想いやわだかまりや、あやまり

きれていない想いなどが去来してきて。

ふうっと、ほどけてゆくような気持ちになった。

コミュニケーションと一言でいうけれど。

それは話し合って理解を得てとかだけじゃ

なくって。

そんな時間を越えたところのコミュニケーション

というものもあるんだなって思ったのだ。

マスクのムコウ側で、見知らぬ人がわたしの

着ていたTシャツの言葉に笑ってくれている。

たったそれだけの出来事だったけど、

ちょっと、ふさぎこんでいた心に新しい

風が吹き込んだような、その人に一瞬を

感じた。

これが一期一会ということかもしれないって。

その時着ていたTシャツはこの映画から

イメージされたって後から知った。

母からのおさがりだったけど、思わぬ

おみやげをもらったみたいな気分だった。

さいごに南堀江のおもしろTシャツも貼り付けて

おきます。


あの街にいる ひとりいる ひとりのひとと
この街に ひとりぼっちの ひとりのひとが


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