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岩松勇人プロデュース@ビジネス本研究所:世界倒産図鑑 荒木博行

【世界倒産図鑑】はこんなあなたのための書籍です。

●今の会社に存続するか迷いがある人
●転職を考えている人
●経営者や個人事業主
●なんとか倒産だけは回避したい人
●これからの経営戦略を建てたい人

【世界倒産図鑑の目次】

はじめに
倒産とは何か
●戦略上の問題 編
「過去の亡霊」型
「脆弱シナリオ」型
●マネジメントの問題 編
「焦りからの逸脱」型
「大雑把」型
「機能不全」型
おわりに

アニメーションで解説はコチラ👇

動画を観る時間がない方に、イラストと文章で解説👇

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【要約】
今回は、
「世界倒産図鑑」
という本を解説します。

あなたはビジネス本を読んで
学んだけどイマイチ身についてないかも
と思ったことはありませんか?

せっかくビジネスの理論を学んだんだから、
「自社のヒト・モノ・カネのバランスは?」
「新規事業に取り組むべきだろうか?」
「チャレンジ精神はどこまで許されるのか」

この辺りのさじ加減も知りたいですよね。

業界の特色や時代背景、テクノロジーなど
目まぐるしく変わっていくので、
その時々で正解は違うでしょうし、
思い通りにいかないことがほとんどですよね。

そこで頼りになるのが本書の世界倒産図鑑です。

倒産するまでの事業のアップダウンが
系統別に25の事例として分類されているので、
反面教師にすることで、あなたのビジネスにも
大いに役立てることができます。

この本の結論は、

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という内容です。

本書では過去を振り返りながら
「なぜ倒産したのか」
「どこで間違えたのか」を考察するので、
現在の私たちからすると愚かな意思決定に
見える事例も中にはあります。

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しかし、当事者の立場に立って、
当時のその環境で自分は最善の答えを
導き出せたかをトレースしてみると、
自らの意思決定の不確かさを認識することが
できます。

これは失敗のケースだからこそできること。

倒産した企業にとっては実に不名誉ですが、
ビジネスの現場にいる私たちは
非常に影響力のある内容です。

本書では、倒産してしまう原因を
5つの型として解説していますので、
その5つの型をそのままポイントと
して解説していきます。

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それでは順に解説していきます。

まず1つ目のポイント

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1 過去の亡霊型倒産

ポラロイドカメラで一躍成功を収めた
ポラロイドは、分析を重視することによって、
可能性を逃しました。

当時、通常のカメラでは現像まで数週間
かかっていたので、インスタントカメラの
発明は画期的で、ポラロイドは著しい成長を遂げました。

しかしその後、カメラ業界の巨人・コダックが
通常のカメラの現像時間を60分まで短縮
することに成功すると、インスタントカメラの
優位性は一気に弱まってしまったんです。

そしてさらに、キャノンなどの日本企業が
より画質の良いコンパクトカメラを世に送り出し、
ポラロイドの経営は低迷していきます。

こんな逆風の中、ポラロイドは
次のイノベーションの戦略を持っていました。
1980年代半ばに、フィリップスと協力して
デジタル化へ踏み出そうとしたんですね。

しかし、デジタル技術という新市場の魅力は
既存のロジックでは分析できず、
デジタル化に向けた企画はすべて否決され、
研究開発費は既存製品のブラッシュアップ
に注ぎ込まれたんですね。

こうして1995年に訪れるデジカメの
波に乗ることができずに、時代から
取り残されて倒産しました。

このように大企業が革新的技術を導入
できない理由のひとつとして、
「存在しない市場は分析できない」
ことが挙げられます。

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分析できないから挑戦しないのではなく、
「分析できないことにはチャンスがある。
 失敗を通じて学習していこう」
というスタンスが大切なんですね。

この詳しい内容は、
経営学者クリステンセンの著書
イノベーションのジレンマ
で詳しく解説していますので、
興味ある方は、概要欄から動画を見てみてください。

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2 脆弱シナリオ型倒産

ここでは、事業意欲が先行し過ぎて
破滅してしまった鈴木商店が紹介されています。

鈴木商店は1874年、神戸で海外の砂糖
を輸入する会社として発足しました。

第一次世界大戦時、海外派遣員からの情報を
もとに全ての商品船舶をいっせいに買いつけ、
これが大当たりする。

そして、同社は一貿易商から三井・三菱と
肩を並べるほどの総合商社にまで急成長しました。
しかし、第一次世界大戦の終結で
雲行きが怪しくなります。

傘下の神戸製鋼所をはじめとする
造船所の残留船腹が不良在庫化し、
翌年の関東大震災による経済の大混乱と
相まって経営は大打撃を受けた。

鈴木商店の資金調達先は台湾銀行のみだったため、
銀行から新規融資停止を言い渡されると、
倒産するしか道は残されていなかった。

事業の中核が不安定な貿易業であったこと。
加えて、鈴木商店外の人間を意思決定に
関与させたくないという思いから、
株式会社化することもなく、
資金調達先を台湾銀行に依存していたこと。

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そして、同社は一貿易商から三井・三菱と
肩を並べるほどの総合商社にまで急成長しました。
しかし、第一次世界大戦の終結で
雲行きが怪しくなります。

傘下の神戸製鋼所をはじめとする
造船所の残留船腹が不良在庫化し、
翌年の関東大震災による経済の大混乱と
相まって経営は大打撃を受けた。

鈴木商店の資金調達先は台湾銀行のみだったため、
銀行から新規融資停止を言い渡されると、
倒産するしか道は残されていなかった。

事業の中核が不安定な貿易業であったこと。
加えて、鈴木商店外の人間を意思決定に
関与させたくないという思いから、
株式会社化することもなく、
資金調達先を台湾銀行に依存していたこと。

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こうした、「ポートフォリオ(事業構成)」
の組み方と「ファイナンス(資金調達)」
のあり方が、命運を分けました。

この例は、経営において
「ヒト・モノ・カネ」のバランスがいかに
重要なものであるかを教えてくれます。

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「モノ」商材に関する才覚があっても、
「ヒト」のマネジメントつまり、
ワンマン経営に依存した組織体制や
「カネ」の調達における問題が、
鈴木商店を倒産に追い込みました。

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3 焦りからの逸脱型倒産

ここでは、見たいものしか見ずに
倒産した千代田生命が紹介されています。
千代田生命は、日露戦争が勃発した
年に創業しました。

戦死者の遺族へ保険料をきっちりと
支払うことで生命保険を国内に浸透させて、
五大生保に数えられるまでに成長した。

しかし業界の競争激化の煽りを受けて、
次第にシェアを失っていきます。

そこで、「量を増やすことが全て」
と営業職員を大量雇用し、
高利率かつ高配当な商品を開発した。

それまで堅実で保守的な会社だったのに、
リスキーな案件への投融資を行ない、
それまでとは打って変わって
攻めの姿勢で展開していきました。

この取り組みで、一時的に生保業界内の
順位をぐ〜んと上げることはできましたが、
バブル崩壊とともにリスクを冒して開拓した
投融資先が一斉に焦げ付いてしまい、
倒産に追い込まれました。

現在の私たちからすると、
バブル時代の千代田生命の意思決定が
いかに危ういものかは簡単にわかります。

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しかし、過去の栄光と現在の落ちぶれ具合
のギャップに焦りと屈辱を感じていたら
どうでしょうか。

一発逆転を期待させるバブル時代で、
正常な意思決定ができたはずだと
胸を張って言えるでしょうか。

この感覚は、
確変状態のパチンコに似ていて、
大当たり連発を期待させるような状態です。

冷静な判断できる人の方が稀ですよね。

このようにして「見たいものを見る」
という状況に陥ってしまうことの
危険性を訴えています。

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4 大雑把型倒産

ここでは、攻め一辺倒が裏目に出た
スカイマークが紹介されています。

1996年、羽田沖の新滑走路完成と
規制緩和の波を受けて、ベンチャー
航空企業スカイマークが航空業界に参入しました。

長年航空業界は、大手3社の寡占状態で、
アメリカのLCCを参考に低価格化を
実現したのだが、あえなく大手の抵抗に遭い、
赤字経営に転落してしまいました。

そこで、燃費効率の良い小型機の一括導入、
サービスの簡素化、高い搭乗率を維持する
施策によって、スカイマークは
高収益体質へと生まれ変わりました。

しかし、2012年の相次ぐLCC勢の参入を受けて、
ポジショニング再構築のために下した
意思決定がその後の明暗を分ける。

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「格安・長距離国際線」への参入という
大きな賭けに出たのだが、
円安と燃料高騰の影響で一気に資金繰りが悪化し、
倒産に追い込まれてしまいました。

「リポジショニング」は非常に難易度が高いです。

そもそも航空業界は事故やテロ、燃料高騰など
「イベントリスク」が売上に与える影響が
大きいという特徴があり、必然的に「攻め」
より「守り」に比重を置かざるを得ません。

「攻め」重視の失敗が許される業界にいた経営者が、
「守り」重視の業界に移った際に
派手に失敗する例は少なくありません。

攻撃は最大の防御なり
という言葉がありますが、これはそもそも
攻撃する前に守りを固めることを
前提としたことわざです。

新規参入した弱者が、業界の大手3社に
守りを固めず攻撃するのは、最大の防御
どころかただの無鉄砲になってしまいます。

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5 機能不全型倒産

最後の型では、経営者が現場を知らずに
倒産したタカタが紹介されています。

1993年、日本でいち早く自動車用
シートベルトの開発に着手し、
2000年頃には世界第二位の
エアバッグメーカーへと成長しました。

しかしタカタの快進撃は、大規模リコール
「タカタショック」が起きたことで、
2014年6月に突如終わりを迎えます。

事の発端はタカタが2000年に下した、
ある大きな意思決定にありました。

それは、非常に扱いが厄介な
「硝酸アンモニウム」を衝突時の
ガス発生剤に選んだことです。

競合他社の追随を許さない果敢な決定により
優位性を築くことには成功したが、
実のところ物質の欠点の完全克服には
至っていなかった。

それがもとで死亡事故まで発生し、
全米規模のリコールとなり、
タカタは巨額の負債を抱えて倒産します。

リコールの原因となった部品の不具合は、
アメリカやメキシコの工場における
品質管理不備にありました。

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しかしタカタのトップは生産現場の実情

を把握しようとせず、日本における緻密な
開発状況だけで自社の品質には問題がない
と考えていました。

また、社内風土はトップがイエスと言えば
全てが決まるオーナー企業体質であったため、
不都合は隠蔽され、現場からの重要な情報が
トップまで届いていなかったことも考えられる。

このことから学べるのは、
リーダーは、勝負の時ほど、組織内部の
意思疎通が十分にできているかどうかを
確認しなければいけないということ。

組織が機能不全を起こしている中では、
大きな意思決定ほど致命傷になりかねません。

いかがでしたでしょうか?
本書には世界の倒産事例から厳選された
25社の事例が収録されています。

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それらは倒産の原因別に5つの型に分類されていて、
この動画では、それぞれの型から
1例ずつ選び出して紹介しました。

話の内容は企業という大きな組織でのことですが、
個人でビジネスをやる場合でも、
個人のキャリア形成においても
通用する内容なので、参考にしてみてください。


それでは最後におさらいしましょう。

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1 過去の亡霊型倒産

分析できないから挑戦しないのではなく、
「分析できないことにはチャンスがある。
 失敗を通じて学習していこう」
というスタンスが大切です。


2 脆弱シナリオ型倒産

ビジネスでは、「ヒト・モノ・カネ」
のバランスが重要です。
一箇所に依存している状態は、
非常に脆い体制だと認識しましょう。

3 焦りからの逸脱型倒産

過去の栄光と現在の落ちぶれ具合
のギャップに焦りと屈辱を感じていたら
冷静な判断ができなくなります。
リスクをとる戦略は、環境の変化で
一気に崩れる可能性があります。


4 大雑把型倒産

「攻め」重視の失敗が許される業界にいた経営者が、
「守り」重視の業界に移った際に
派手に失敗する例は少なくありません。

攻撃は最大の防御なり
という言葉は守りを固めた前提のことわざです。


5 機能不全型倒産

トップがイエスと言えば全てが決まる
オーナー企業体質では、不都合は隠蔽され、
現場からの重要な情報がトップまで
届かない可能性があります。

著者 荒木 博行(あらき・ひろゆき)
株式会社学びデザイン 代表取締役社長
株式会社フライヤー 取締役COO
1975年生まれ。1998年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、住友商事入社、人材育成に関わる。2003年、グロービスに入社。法人向けコンサルティング業務を経て、グロービス経営大学院でオンラインMBAの立ち上げや特設キャンパスのマネジメントに携わる。2015年、グロービス経営大学院副研究科長に就任。2018年、グロービスを退社後、株式会社学びデザインを設立し、代表取締役に就任。書籍要約サービスのフライヤー取締役COOも務める。著書に『ストーリーで学ぶ戦略思考入門』(ダイヤモンド社)、『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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