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「JR3社と農業機械、水処理、ゼネコンのセクターは強気で見ている」株式投資家・おせちーず氏 後編

株式投資家のおせちーず氏に、今後の日本株について強気、弱気で見ている理由やセクターなどについて伺いました。

おせちーず氏 プロフィール

投資歴約31年の女性株式投資家。新卒でシステムエンジニアとして従事し、その後証券アナリストを経て、現在は企業に勤めながら大学で非常勤講師にも従事。『個別株でインデックス以下のローリスク・ローリターン』を追求した株式投資を行っている。
Twitter:https://twitter.com/osechies
ブログ:https://ssizehappy.exblog.jp/

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取材実施日

2023年9月14日

今後の日本株については弱気で見ている

ーー今後の日本株についてはどのように見ていますか。強気でしょうか。

私の性格上、弱気になることはあっても強気になることはありません。常にニュートラルに市場を見るように心掛けています。

そのうえで弱気と思える理由については2つ考えられます。

まずは、日本の株価が上がりすぎたことです。米国が景気後退し経済が低迷したらそれに引きずられて日本の株価も下がっていく、それが今までの日本株の歴史です。

海外投資家は米国経済に期待できないからといって日本株を買おうとはならないんです。日本は中国の代わりにはなれても、米国の代わりにはなれないということです。

次に、2023年7月の金融政策決定会合で、長期金利が0.5%を超えても容認となったこと。

参考:日銀が長期金利の上昇を容認するYCCの運用柔軟化策を決定|野村総合研究所(NRI)

金利が上がって恩恵を受ける業界はもちろんありますが、金利の上昇は企業の資金調達コストを上げるのでネガティブです。

そのため、社債の発行が増えるなど少しでも金利が安いうちに資金調達しようという動きがあるかもしれません。

ーー今後、米国の金利の動向はどのように日本株に影響すると見ていますか。

米国の金利が下がれば恐らく円高となり、理屈の上では株価指数に対してはネガティブに働くと思います。

ただ、個別株の中にはニトリのように円高歓迎の企業もあり、個別株の分析などは別と考えてください。

参考:独自の製造方法で円高の恩恵を受けるニトリ|All About

一方、素材産業、例えば化学や鉄鋼、電力業界やアルミの会社には恩恵が訪れるでしょう。

原油価格が日本で高止まりしているのは、為替の影響が大きいからだと考えています。

そのため、もし円高になれば株価指数全体にはネガティブだけど、原油価格が円高に伴って下がるようであれば、面白い業界はあると思います。

資源価格の変動で影響を受ける企業

ーー「アルミの会社」とはどういった会社でしょうか。

アルミを作って企業に卸す会社です。

アルミは製造過程で多くの電力を使うため、電力料金が上がるとまともに原価に響きます。

また、資源価格がこれから下がるなら電力系の銘柄はおもしろいと思います。原材料は輸入しているものばかりで仕入れ価格が下がりつつ販売価格はそのままとなるので。

逆に原油は上がっているので、原油を輸入してるエネルギー開発企業の株式会社INPEXは原油安だと難しいと思いますね。

INPEXは原油を掘って輸入し、例えばENEOSなどに供給している会社で、原油が安くなったり、円高になると逆風です。

ーードル円のレートのみならずコモディティの価格にも左右されるのでこのあたりの銘柄はかなり複雑です。

おっしゃるとおり、我々の意図しないところで動くので予測を立てるのが難しいです。

サウジアラビアやその辺の産油国の人たちのご機嫌次第になることも多いので。

それらについては誰も制御できないので、為替の影響が逆に大きいのだと思います。

ーー話をまとめます。日本株は現在時点で比較的好調ですが、米国の景気後退が進めば日本も遅れて景気後退を迎える可能性は無視できないということですね。

はい、そのとおりで、私はネガティブにマーケットを見るようにしているので、米国景気後退のシナリオを立て、その上で次の打ち手を考えます。

米国の好景気がいつまでも続くと思うのは簡単ですが、そんなことは絶対にない。いつかどこかで転換点が訪れるはずです。

JR3社と農業機械、水処理、ゼネコンは強気で見ている

ーー日本株の市場全体でお話を伺いました。セクター単位ではいかがでしょうか。

セクター単位で強気な領域は、1つ目はJRの3社ですね。明らかに乗客が増えています。

私は青森県在住でJR東日本をよく利用しますが、インバウンド客はまだ多くないものの、国内旅行者はとても増えています。東北新幹線で盛岡から青森まで、8割は埋まっています。コロナ禍では盛岡以北は3割も埋まっていませんでした。

今後円安が続けばインバウンド客が地方のあちこちを訪れるようになり、さらに売上が上がると予想しています。

2つ目は、農業機械です。

農業は何年も前から人手不足を抱えていますが、いま労働市場全体で人手不足を迎える中、農業で人を集めるのは大変です。それで必然的に生産性を上げるという方向性になるのですが、そこで機械に需要が出るわけです。

今後は無人トラクターやロボット農機などを販売する企業の業績が伸びると思います。

クボタは農業機械の分野で世界シェア第3位の企業です。

日本は人口が減っていますが、世界全体では人口が増えており今後深刻な食料不足が発生します。当面、食糧需要は増加する一方で、農業の効率性向上は求められ続けるでしょう。

クボタはそれを見越して2021年にインドの農機大手メーカーを買収し子会社化しました。2〜3年で結果が出るとは言えませんが、長期的に見れば有望だと思っています。

参考:【決算資料の読み方】クボタ(6326) 株式投資家・おせちーず|Burry Market Research

3つ目は、水処理です。

Rapidus株式会社は日本の半導体メーカーで、政府が次世代半導体の国産化を目指すとして計3,300億円の支援を決定しています。

参考:ラピダス補助、3300億円に 半導体「今後も支援」―経済安保に不可欠・経産省:時事ドットコム

半導体の製造には水が必要ですが、これら半導体事業が成長、増えることで連動して水処理業界の売上も上がると見ていいます。

半導体製造のためには工場も必要です。TSMCも熊本に工場を作っていますが、今後Rapidusも工場が必要になってきます。

ということで、4つ目がゼネコンです。

ちなみに私は今日鹿島の株を買い増しました。

実は、ゼネコンは30年ぐらい前には低迷する会社だと言われていました。

当時は不動産は供給過多で不動産不況も起こり、建物を建て続けなければいけないゼネコンは業績が危ぶまれていたんですね。

実際、倒産した会社もあったと思いますが、結局東京では今でも多くの建物が建設されており、そして建てたものは直すという需要もあるため、最近ではゼネコンは無くならない会社だろうと見るようになりましたね。

小売と外食、中国依存の企業には弱気

ーー弱気で見ているセクターがあれば教えてください。

1つ目は、小売業界。インバウンド需要を考慮しても私は弱気で見ています。

理由は人手不足と人口減少です。人口減少は多くの領域においてネガティブだと思いますが、特にその影響が大きいのが小売だと思います。もちろん、小売の中でも販売する商品や企業によって変わるとは思います。

2つ目は、外食産業。理由は人手不足と原材料高。円安で今が一番きついかもしれないですね。

今年の10月に最低賃金がまた上がりますが、外食産業では最低賃金で雇われてる方が多く引き上げられると人件費の負担が増加します。外食産業は概してコスト高になっていて、下がる要素がなかなか見つからない。

そのため価格転嫁ができないと業績が厳しくなりますが、ここはうまくやれている企業とそうでない企業が濃紺あるように思います。その中でもすかいらーくホールディングスは地域ごとで商品価格を変えるなど価格転嫁をうまく対処している印象です。

参考:10 月の価格改定のお知らせ|すかいらーくグループ

3つ目は、中国に業績を依存している企業です。

今大幅に株価が下落しているのが化粧品業界ですね。例えばポーラや資生堂、コーセーなどです。過去6ヶ月のチャートを見ると、日経平均株価とは大きく異なる動きになっています。

インバウンド客が爆買いしていたのが、福島第一原発の処理水問題で中国人の旅行客が減少してしまい、化粧品の売上も大きく減少していると見ています。

銀座三越のデパ地下は、高級ブランドの化粧品売り場なんですよね。普通、デパ地下と言えば食べ物が売られているのですが、銀座の三越はインバウンド客を意識して内装を作り替えました。そういう意味では、百貨店も厳しいかもしれません。

外国人からしたら円安の上免税で買えるので、日本の化粧品は人気だったと思いますが。

参考:インバウンド銘柄に冷や水、処理水放出に中国反発-旅行など影響懸念 – Bloomberg

ーー化粧品以外で中国に業績を依存する企業というのはどういった企業でしょうか。

私はあまり詳しくありません。

各企業の決算短信のセグメント情報で記載されることがあるので気になる方は調べてみることをお勧めします。

ちなみに、オンライン証券ではご自身で調べる必要がありますが、対面証券会社でおおよそ1億円ぐらい資産を預けていれば、尋ねると結構教えてくれると思います。

私もアナリスト時代に営業担当の方から顧客への回答のためにいろいろ訊かれました。

もし預け資産の額が小さくても、対面証券は取引手数料がやや高めなので、売買する回数が多ければいい対応を受けるかもしれません。

小売と外食は少額だが保有している

ーー弱気に見ているセクターでおせちーずさんが保有している株はありますか。

小売と外食は少額ですが保有しています。

小売はDCMホールディングス、ビックカメラ、アークスなどを保有しています。DCMは株主優待の商品券が魅力的で、畑での野菜作りに使う苗や支柱、生活用品などを購入しています。

DCMを同業種の中で特別に評価しているわけではありませんが、地域性があるので保有しています。

DCMに一つアドバンテージがあるとするならば、DCMは複数の会社が合併して今の形になっているということです。そのためM&Aの経験値は他の会社よりあるかもと期待しています。

参考:DCM グループ5社を2021年3月めどに統合 _小売・流通業界 ニュースサイト【ダイヤモンド・チェーンストアオンライン】

外食銘柄は、すかいらーくホールディングス、吉野家ホールディングス、トリドールホールディングスを保有しています。

外食産業は弱気と答えましたが、トリドールは以前に投資して十分に含み益が出ており今さら売る理由もないので保有しています。

吉野家は微妙ですが、すかいらーく、トリドールは価格転嫁が上手な企業だと評価しています。

参考:トリドール、今期純利益40億円に上方修正 値上げも寄与 – 日本経済新聞

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おせちーず氏のインタビュー記事、前編はこちら

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