見出し画像

大橋先生!難しいことは分かりませんが、「お金」と「人生」について教えてください。

今回のゲストは、作家・編集者の大橋弘祐。代表作は、『サバイバル・ウェディング』『漫画バビロン大富豪の教え』など。大橋が出版業界に飛び込んだのは、30代後半。戦略性と努力で道を切り拓いてきた大橋の人生は、混迷の時代に人生をサバイブするためのヒントに満ちている。

(語り手)編集部:大橋弘祐
(聞き手)出版マーケティング部:中西亮

「やりたいこと」を渇望した、大手会社員時代

(中西)
大橋先生、本日はよろしくお願いします。学生時代からずっとファンでした。インタビューが出来て光栄です!

(大橋)
いえいえ。こちらこそ、よろしくです。

(中西)
大橋さんは、前職は全然違う業界でしたよね。

(大橋)
そうなんです。大学では理系の学問を学び、新卒で大手通信会社に入社しました。当時、その会社は就職ランキングが2位の超人気企業。最先端で、安定もしていて、一生安泰だと思いました。ところが、入ってみると自分が思い描いていたイメージとは違い、苦労しました。理系出身者は、本社に配属されることが多かったんですけど、僕は支店配属で、商談の同行なんかをしていました。2年半ほどやっているうちに、「自分がやりたかったことってこれだったっけ……」という焦りが出てきました。

(中西)
状況を打開するために、何かされたのですか。

(大橋)
本社の人員募集に手を挙げ、会社でホームページの運用をする新設の部署に異動しました。新製品に合わせたサイトの更新や、特設サイトの作成が仕事でした。最初はネットという新しい分野でやりがいを感じたんですけど、企業のホームページなので、自分がやりたいこともなかなかできませんでした……。ここでも、「人生このままでいいのか」という不安は消えなかったんです。でも、せっかく入った大企業ですし、特別やりたいこともなかったので、辞めようと決心するほどではありませんでした。

(中西)
何か記憶に残っている当時の出来事はありますか。

(大橋)
ある日、「自分をアピールすれば出世できる」という社内研修があったんです。上司から、「大事な研修だから頑張れよ」と言われて送り出されました。割と器用な方なので、その場では本心を抑えてパフォーマンスとして、良い発表ができたんですけど、なぜか帰りのバスで自然と涙が出てきて……。頭では、会社が安全だと分かっていたんですけど、「これ、自分のやりたいことじゃないな」という思いに、身体が拒絶反応をしてたんですよね。これ、いい話じゃないですか?(笑)

(中西)
は、はい……(笑)順風満帆のキャリアにも見えるのですが、つまるところ何が不満だったんでしょうか。

(大橋)
自分の特技が活かせていない感じはずっとあり、何かクリエイティブな仕事をしたいと思っていました。それが文章だとは、当時は気づいていなかったですけどね。

5年間の陰の努力が、ドラマ化につながる

(中西)
どうやって作家に辿りついたんですか。

(大橋) 
その頃、手に職をつけたいと思い、webデザインを学んで、自分のホームページ作り始めました。何か人と違うことを書きたいと思って、当時よく行っていた合コンを面白おかしく書いたところ、ウケが良かったんです。とはいえ、ブログの人気が少し出たぐらいで、会社は辞められないですよね。

(中西)
その時期、大橋先生は『夢をかなえるゾウ』の水野敬也先生の下で創作をされていましたが、どういったつながりだったんですか。

(大橋)
会社の同期のMくんが、水野さんの強烈なファンで、Mくん経由でお会いしました。そこから、会社員として働きながら、水野さんのアトリエで創作をすることになりました。当時、自分を含めてメンバーは5人でした。水野さんに、「大橋は恋愛が得意だから、恋愛で行こう」と言われて、恋愛小説を書いていくことになりました。でも、得意ってほどでもないし、小説は一切読んだことも書いたこともなかったので、めちゃくちゃ大変でした。

(中西)
それが、大橋先生のデビュー作である、『サバイバル・ウェディング』ですね。

(大橋)
はい。結婚したい主人公の女性に、メンターが、恋愛をブランドマーケティングにたとえて教える物語です。仕事後や休みの日に、ずっと書いていました。直して完璧なものを作るというのが、水野さんと山本さん(文響社社長)の考えでしたので、31歳から書き始めて、出版までには5年かかりました。

(中西)
5年ですか!よく気持ちが維持できましたね!

(大橋)
俺は面白いんだ!と証明したかったんでしょうね。会社員をやりながら書いていたのも、気持ちの面で良かったです。会社を辞めたのは、8、9割方書き終えたタイミングでした。自分の本が書店に並んだときは嬉しかったですね。でも、それ以上に、売れなかったらと思うと怖かったです。実際、発売直後はそこまで売れなかったんですけど、営業の芳賀さんがテレビに持ち込んでくれてドラマ化したことで、ヒットにつながりました。

独自の切り口で、編集者の才能を開花させる

(中西)
作家兼編集者として、文響社に転職したのはその頃ですね。

(大橋)
『人生はニャンとかなる』が大ヒットして、会社を大きくするタイミングに、編集者として誘われました。あの時期は、初めて仕事で右も左もわからず、めちゃくちゃキツかったですね。30歳後半のスタートでしたが、幸いヒット作を出すこともできました。

(中西)
大橋先生が、編集者として強みだと思っている部分はなんですか。

(大橋)
一番は、自分で文章も書いているところです。あと、カバーのディレクションのセンスはあると思います。一般書籍は、カバーを見て一発で判断されます。だから、カバーのディレクションは非常に重要です。前職のウェブ担当時代に、ディレクションのポイントについて学べたのが活きました。

(中西)
『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』について教えてください。

(大橋)
この企画は、文響社に転職したときから温めていたものでした。投資の本って、100万円を投資して1000万にするとか、そういう大きな話になりがちじゃないですか。でも、自分が知りたかったのは、年利数%くらいで堅実に運用していく方法でした。だから、それを専門家に教えてもらうというコンセプトにしました。お金についてのすべてを網羅しようとせずに、「これとこれだけやってください」ていうように削ったのも、珍しかったと思います。

(中西)
カバーは、ひときわ目を引きますよね。

(大橋)
この本のカバーは、自分で考えました。特に「ふきだし」がこだわりです。今思えば、「増やし方」っていうのも、いいタイトルだったかもしれないですね。水野さんと、六本木の蔦屋書店で夜中の1時に相談して決めました。

中田敦彦さん絶賛!「バビロン」の誕生秘話!

(中西)
『漫画 バビロン大富豪の教え』について教えてください。

(大橋)
この本は、「隠れた名著を掘り起こす」という復刊プロジェクトの一環で始まりました。ウェブのアンケートで、オススメの古典を調査していたら、この本を挙げてくれる人がいたんです。ちょうどその頃、漫画家の坂野くんがふらっと文響社を訪れ、彼に描いてもらうという流れて動き出しました。

(中西)
すごい偶然ですね……!

(大橋)
装丁は、少年漫画っぽさ、高級感、名著感を兼ね備えてくださいと、装丁家さんにお願いしました。ストーリーの大枠は僕が考えて、ネームやセリフは坂野くんが考えてくれました。実は、ストーリーにはかなり手を加えているんです。原著は短編集なんですが、主人公は複数人出てきますし、アルカドも最初しか出てきません。これを成長物語にするために、主人公をバンシルに絞り、メンターとしてアルカドを立てたことで、ぐっと物語性が増したと思います。こういったストーリーテリングは、『サバイバルウェディング』の経験が役に立ちました。中田敦彦さんがYouTube大学で紹介していただいたこともあり、多くの方に読んでいただけました。

虎視眈々と備えた者に、チャンスは訪れる。

(中西)
本づくりは、自分の特技を生かせているという実感がありますか。

(大橋)
そうですね。本を作るのが、一番向いている気がします。皆が知った方がいいけど知らないことを、キャラクターを通して、ユーモアを交えて伝える作業は楽しいです。あと、文章の良いところは直せるところなんです。いくらでも治せるから、粘った人が勝つ世界。映画とかですと、一度撮ってしまったら、なかなか撮り直せないじゃないですか。僕はよくしつこいとか言われるタイプなので、向いている気がします(笑)

(中西)
勇敢に自らの人生を変化させる大橋先生ですが、恐れはないのですか。

(大橋)
めちゃくちゃありますよ。もともと、高校、大学、就職で道を外れたことがなかったですし、会社を辞めるときも怖かったです。今でも2年後を考えて不安になることもあります。不安症でビビり屋なんです。でも、自分の能力を活かしたかったら、人から評価されたかったら、何か現実を変えなくてはいけないんですよね。最低限の安全を確保しながら、粘り強く努力を継続して、時期を待つんです。

(中西)
最後に、大橋さんにとって「文響社」とはなんですか。

(大橋)
難しい質問ですね……うーん「学校以上会社未満」かな…。僕の中で会社って、上司に言われたことを、部下がやるところっていうイメージなんですけど、文響社は違います。自発的に仕事をすることがいつも求められる。それでいて、学校ではできない大きなことができると思います。自分の力を思う存分発揮するために、とてもいい場所だと思います。

(中西)
本日は、ありがとうございました。大橋先生の次回作を楽しみにしています!

大橋弘祐(おおはし こうすけ)
作家。立教大学理学部卒業後、大手通信会社の広報、マーケティング職を経て現職に転身。初小説『サバイバル・ウェディング』(文響社)が日本テレビの地上波ゴールデンタイムでテレビドラマ化。『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください! 』(文響社、山崎元との共著)など「難しいことはわかりませんがシリーズ」が50万部を超えるベストセラーになる。

文響社公式Twitterアカウント(ここからジャンプします)
note更新、新刊、キャンペーン情報などを更新中!ぜひフォローをお願いします!