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朝ドラ『らんまん』の登場人物を妄想する/牧野富太郎著「牧野富太郎と、山」
ぶどう膜炎を発症してから一年が過ぎた。症状が落ち着いた昨秋、一度薬を止めたのだがすぐに再発。結局、今も検査と薬の処方のため通院している。
眼科はいつも混み合っているので、必ず本を1冊持って行く。例えば年に何度か読む「BAR 追分」シリーズ(伊吹有喜著)。気分によって持って行く本は異なるが、最近のおともは「牧野富太郎と、山」(牧野富太郎著)だ。植物採集や観察のために、日本各地の山々を訪れた牧野富太郎。この本は、その時のことを綴った中から、35のエッセイを選んで一冊にまとめたものだ。
読み始めた頃、NHK朝ドラ『らんまん』はまだ高知編。そのせいか、エッセイとドラマがつながることは正直あまりなかった。
ドラマで主人公・万太郎が東京大学に出入りするようになると、たびたび出てくるようになったのが、ロシアのマキシモヴィッチ博士の名前。実は、昨日待合室で本の続きを読んでいたら、マキシモヴィッチ博士(エッセイではマキシモウィッチ)と、彼に雇われて植物採集をしていた須川長之助の名前が出てきたのだ。
須川長之助!
先週のドラマで、田邊教授がふれたあのプラントハンター!!
待合室でひとり大興奮。
植物の情報量が半端ないこのエッセイが、急に身近に感じられてきた。
さらに読み進めると、東大で出会った池野成一郎(もしかして波多野のモデル?)と二人で、ある植物を採集しに出かけたときの回想話が出てきた。
私たちは人力車夫を傭ってきて練兵場の中に入り込んだ。私たちはナンジャモンジャの木の花を採集するのが目的だったが、何分木が高くて、登らにゃ採れんので、人力車夫に頼んで木に登らせ、その花枝を折らせた。
人力車夫?
それって、それって、車引きの倉木じゃん!
いや実際は違うのだろうけど、もう私の脳内では完全に倉木。彼なら、高い木に登って花枝を折ることぐらい簡単にやってのけるだろう。惚れ惚れするショットだった今週の倉木。一瞬、八田殿を思い出してしまった。あんなに荒んだ暮らしをしていた倉木が、どんどん魅力的になってきた。それにしても十徳長屋、賃貸なのにあんなにリフォームしていいのだろうか。
今週は、新種の植物の名づけ親になるために動き出した万太郎と、これまで田邊教授の腰巾着的な存在だった大窪が共同研究することに。まさか、大窪が東京府知事の三男だったとは。勝海舟の名前も飛び出し、大窪のバックグラウンドを想像する。今野さんの熱演、きっと女将さん(違う!)も喜んでいるはず。
植物学者の仲間や寿恵子という伴侶を得て、研究に没頭する万太郎。植物学に携わる劣等感を抱いてきた大窪や徳永助教授までもが、万太郎の「植物が好き」という気持ちに触発される。
そんな中、焦る一方の田邊教授。孤独を募らせていく彼に寄り添うのは、妻の聡子だけになるのだろうか。かたくなに西洋にこだわる田邊教授。きっと、これまで悔しい思いを何度もしてきたのだろう。彼もまた、ただシダ植物が好きなだけの自分の学問を取り戻すことができたらいいのに。
田邊教授を敵に回したらこわい。万太郎の生活を揺るがすようなことが起きなければいいが……。そんな風に危惧するほど彼はダークだが、憎めない。利己的なのは、時代や日本の近代植物学の遅れがそうさせたのかもしれないし、万太郎に対する嫉妬や実績を上げられない焦りはとても人間臭い。あんなにスッキリしてシャープなのに(要潤なので当然だけど)。
しばらくは、万太郎と田邊教授の対比が描かれそうだ。佐川の竹雄と綾は元気だろうか。たまには出てきてほしい。
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