【国際結婚】 アルゼンチン人との結婚手続き完全ガイド
私は2022年12月にブエノスアイレス市でアルゼンチン人と結婚しました。日本人がアルゼンチン方式で結婚する方法は情報が乏しい上に、それらの情報が古くなることもあるため、私自身の経験を踏まえ日本生まれの日本人がアルゼンチン人と現地で結婚する方法について解説したいと思います。
日本では届出婚が一般的ですが、アルゼンチンでは世界の多くの国で採用されている民事婚が主流です。そのため、現地でどのような手順を踏めばいいのか不安な方もおられるでしょう。私がまさにそうでした!とはいえ今回取り上げる必要な手順を一歩づつ踏めば、現地での国際結婚は決して難しいものではありません(個人の感想)。
この記事では現地での民事婚の申請方法や流れだけでなく、日本との違いや法律の出典、そして実際によく使われる婚姻に関するスペイン語の頻出単語もカバーしています。
今回の記事が、日本生まれでブエノスアイレスに移住する又はされた方、アルゼンチン人と交際されている方、現地で国際結婚を考えておられる方の参考になれば幸いです。
申請の必須条件
(1)当事者のうち少なくとも一方がブエノスアイレス市内在住でDNI(アルゼンチンの身分証明書)を持っていること。
(2)法定年齢に達していて有効なDNIを持ち、アルゼンチン国内に住んでいる2人の証人。(役所以外で行われる場合は4人の証人)
(3)アルゼンチン人と外国人が結婚する場合、カップルのもう一方の有効なパスポート(旅券)。
海外ですでに結婚・離婚している場合、別途手続きが必要です(※1)。
必須条件ではないもの
日本の行政書士や事務所のサイトなどでは、病院での血液検査が必要と書かれることがよくありますが、2023年9月時点でそれらは任意であり必要ありません。(※2)
民事婚のオンライン予約
婚姻手続きを開始する場合、ブエノスアイレス市のサイト(下)から「miBA」のアカウントを作り、オンラインで申請に進む必要があります。必要書類をアップロードするためのリンクをメールで受け取った後、48時間以内に必要な情報を入力する必要があります。その後、空いている日付から民事婚の予約を取ります。
民事婚をする場所は各役所に応じます。市内は「Comuna」と呼ばれる役所の区分けがされていて、2023年現在市内14箇所で可能です。手続きの申請費は無料です。
当然ながら予約をする際は、ビザ(査証)なしで滞在できる90日間(延長可)、もしくは滞在許可が出ている期間内に民事婚が行われる必要がある点にご注意ください。
スペイン語ができない場合
スペイン語ができない場合は、民法第190条(※3)により、公証翻訳者に民事婚当日に通訳してもらうことが必要です。
それで政府公認の翻訳機関「Colegio de Traductores Públicos de la Ciudad de Buenos Aires」(CTPCBA)のサイトから公証翻訳者を探します。2023年9月時点で市内在住の方は2人しかおられないので、民事婚の日付に必ず来ていただくために十分前もって連絡をとっておくことをおすすめします。通訳同伴は有料です。以下のサイトから公証翻訳者を探すことができます(アルゼンチンはハイパーインフレ国なので料金は常に変動します)。
パスポートの翻訳や日本の戸籍は必要?
パスポートの翻訳は、私の場合は最終的に必要ありませんでしたが、担当者によっては必要だと言われることもあり、二転三転しました。しかも民事婚まで一週間をすでに切った上でのドタバタだったので結構焦りました。もし翻訳が必要な場合は、同じように公証翻訳者に翻訳と認証までお願いする必要があります。
日本から持ってくる戸籍謄本やその翻訳も必要ありませんでしたが、民事婚のオンライン予約の際に、両親の名前や職業などの情報を入力する必要がありました。
民事婚当日
アポ当日は予約した役所に時間に余裕を持って行き、2人の証人と通訳者にもそれぞれのDNIを持参してもらいます。予約時にアップロードした書類すべての原本を持参します。定刻に担当官が来て今回の婚姻に反対意見や異議申し立てが無ければ、式が始まります。
証人は一般的に家族や近しい友人から選ぶのが一般的で、私たちの場合は妻の家族2人に証人になってもらい、アルゼンチンの法律の下に宣誓をして婚姻が成立しました。式自体はすぐに終わります。
成立すると婚姻証明書(下)と家族手帳という赤い冊子をもらうことができます。厳密には「民事上の身分及び個人の能力の登録所」(Registro del Estado Civil y Capacidad de las Personas)が発行したものです。(民法第420条)
結婚後にすべき手続き
上記のようにアルゼンチンの法律により婚姻が成立した場合は、婚姻成立の日から3ヶ月以内に、報告的届出としての「婚姻届」を日本大使館領事班に提出する必要があります(※4)。それで領事班経由の場合は早めに日本から戸籍謄本を取り寄せておくことをお勧めします。(その間に帰国する場合は本籍地又は所在地の役所で提出します。)
必要書類は(1)「婚姻届」の用紙(領事班で受け取り可)、上記の(2)婚姻証明書、(3)日本の戸籍謄本、(4)そしてアルゼンチン人の配偶者の出生証明書「Certificado de Nacimiento」と(5)DNIです。
この手続きにより、数週間ほどで戸籍謄本に婚姻が反映されます。以上で婚姻に関連するすべての手続きは終了です!
永住権の申請が可能に!
アルゼンチン人と結婚すれば、次なる永住権の申請に進むことができます。もちろん結婚しただけではアルゼンチンで長期滞在はできませんのでご注意ください。
私の場合、ビザなしで滞在できる90日間が切れる前にブエノスアイレス市内で結婚し、その後新婚旅行でアルゼンチンから出国しました。そして再び入国した後に永住権の手続きを開始しました。
婚姻に関する義務
ここで夫婦が互いに負うべき義務や権利についても簡単に説明します。アルゼンチンにおける婚姻では民法が適用されます。
民法198条(※3)により夫婦は互いに貞操、協力、扶養の義務を負わなければなりません。また例外的な状況により一時的に別居を余儀なくされる場合を除き、夫婦は同居しなければなりません。(民法199条)
婚姻後の妻の名字は、以前は妻の名字の後に夫の名字を付けることが義務付けられていましたが、現在その規定は撤廃されているようです。(※5)
覚えておくべき婚姻に関するスペイン語
普段は英語でコミュニケーションをとっている場合など、スペイン語を話せないとしても、婚姻に関するアルゼンチンのスペイン語を覚えておくと役に立つでしょう。以下の頻出単語はその一例で、私も実際にこれらの単語はすべて覚えました。
結婚式(boda、casamiento)、民事婚(casamiento civil、ceremonia )、披露宴(recepción、fiesta)、婚姻・夫婦(matrimonio)、申請する(solicitar)、申請書(solicitud)、予約をとる(sacar el turno)、証明書(certificado)、手続き(trámite)、必要条件(requisito)、パスポート(pasaporte)、書類(documentos)、翻訳(traducción)、翻訳の認証(legalización)、筆記体や漢字などの個人の署名(firma)、活字体の署名(aclaración)、無料(gratis)、価格・値段(precio)、式場(lugar)、日付(fecha)、時間(hora)、宣誓(juramento)、結婚の誓い(votos)、お祝い・挙行(celebración)、指輪(anillo)、家族手帳(libreta de familia)、招待状(invitación)、ウェディングドレス(vestido de novia)、タキシード(esmoquin)、結婚休暇(licencia por matrimonio)、新婚旅行(luna de miel)
独身者(soltero/a)、既婚者(casado/a)、離婚者(divorciado/a)、家族(familia)、夫(esposo, marido)、妻(esposa)、息子・娘(hijo/a)、配偶者(cónyuge)、証人(testigo)、婚約者(contrayente)、新郎新婦(los novios)、花嫁(la novia)、花婿(el novio)、翻訳者(traductor/a)、通訳者(intérprete)、民事婚の担当官(juez/a)、招待客(invitados)、フォトグラファー(fotógrafo/a)、幹事(director)
日本との違い
アルゼンチンはキリスト教国ですので民事婚の後に宗教婚を行う場合もあります。また結婚式のスタイルが日本よりもバラエティに溢れているので、豪邸を貸し切るような大規模な披露宴から、身内だけで行うパーティーまで、それぞれのオリジナリティが尊重されます。
体裁を気にするよりも、本人たちの希望や参加者たちがエンジョイすることが優先される傾向があるように思います。時間通り、計画通りに全てが収まる事はまずありません(笑)。ちなみに、日本のように親を泣かせる花嫁の手紙はありませんが、逆に新郎新婦のダンスや親と踊る習慣は、日本には無い文化ですね。
ご祝儀事情はお金を包む日本とは異なり、招待状に銀行の振込先を記載し、家族や友人たちが好きな額を振り込むというスタイルの人もいます。インフレの影響で物品をプレゼントする人もいます。
余談ですが結婚前に独身お別れを祝して「Despedida de soltero/a」と呼ばれるパーティーを行う人も多く、その時にプレゼントを前もって送られる場合もあります。それぞれが最も近い友人と過ごす機会となります。
とにかくアルゼンチン人はパーティーが大好きです。そのため日本との決定的な違いは披露宴の長さです。午後の結婚式のあとのダンスパーティーはなんと朝方まで続くこともよくあります!もちろん出席者の中で最後まで居れない方は自分のタイミングで帰りますが、店を閉めないレストランやイベント会場もすごいなと思います(笑)。南米の結婚式は実はスタミナ勝負なのです。
新婚旅行のための有給休暇
民事婚後は、労働契約法第158条(※6)により、10日間の結婚休暇が夫婦の権利として与えられます。通常、この有給休暇の許可は民事婚後の最初の営業日からカウントされますが、土日祝日は除きます。新婚旅行が法定休暇ではない日本とは全く違いますね!
結婚式の情報収集に便利なサイト
アルゼンチンで有名な結婚サイトである「casamientos.com.ar」に登録すると、招待者リストを作成したり、ドレスのレンタルやフォトグラファーなどの情報を、場所や価格を絞って探すことができます。
また民事婚の詳細についてのコラムもあるので、アルゼンチン人のパートナーには目を通しておいてもらいましょう。(参考文献を参照)
まとめ
アルゼンチンでは、派手な披露宴からコスト削減でも十分豪華にできるものまで、型にはまらないそれぞれの結婚式のかたちがここにはあります。派手さ、シンプルさ、オリジナリティを求めるすべてのカップルに最適でしょう!
今回はアルゼンチン方式の婚姻についてかなり踏み込んで解説しました。言うまでもなく私たち外国人にとって、アルゼンチン人のパートナーの全面的なサポートほど心強いことはありません。ブエノスアイレスで今後ご結婚される方の不安や悩みの解消に、この記事が少しでも役に立つことを願っています。
参照
海外で結婚・離婚している場合(Autorización para ciudadanos casados y divorciados en el extranjero):https://buenosaires.gob.ar/tramites/autorizacion-para-concretar-matrimonio-o-union-convivencial-en-la-ciudad-de-ciudadanos
任意の血液検査(Exámenes Prenupciales Optativos):https://buenosaires.gob.ar/informacion-general-para-casarte
民法(Código Civil):https://www.argentina.gob.ar/normativa/nacional/ley-23515-21776/texto
夫婦の一方が外国人の婚姻(日本大使館):https://www.ar.emb-japan.go.jp/ContenidoJP/04.FamiliarJP.htm
配偶者の名字(Apellido de las personas casadas):https://www.argentina.gob.ar/justicia/derechofacil/leysimple/nombre-de-las-personas#:~:text=%C2%BFQu%C3%A9%20apellido%20llevan%20las%20personas,su%20marido%20a%20su%20apellido.
労働契約法(Ley de Contrato de Trabajo):https://www.argentina.gob.ar/normativa/nacional/ley-20744-25552/actualizacion
参考文献
アルゼンチン共和国における身分関係法制調査研究報告書:
https://www.moj.go.jp/content/001169907
結婚休暇:
https://www.casamientos.com.ar/articulos/el-permiso-de-vacaciones-por-casamiento--c4880
民事婚ガイド:
https://www.casamientos.com.ar/articulos/tramites-civil-argentina--c8167
アルゼンチン人と外国人が結婚する場合の必要条件:
https://www.casamientos.com.ar/articulos/requisitos-para-matrimonio-entre-un-argentino-y-un-extranjero--c5196
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