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約100人ぐらいの従業員が働いている会社の社内SEはどんな感じ?

私は新卒で社内SE(情シス)として一般企業のシステム部に入社した。
別に意識してこの職業を目指した訳ではなく、流れに身を任せたらそうなっていた。
入社時に作って貰った名刺の肩書きには「システムエンジニア」と書かれていた。
結局は辞めてしまったが、振り返ると自分の原点であり、エンジニアという存在は何かという自分なりの答えも見えた会社だった。
IT系の仕事の経験を積むなら、システム会社の方が良かったのではないかと考える事もある。
結果としては、自分が開発したシステムを使う社員(ユーザー)がすぐ側に居てくれて、使い勝手や仕様変更の提案などの言葉を直接貰える環境に、身を置けた事は良かったと思う。

なんの経験もない新卒文系女子にも社内SEは務まったのか。
今回はこの先自分が働き続ける為にも、初めてのことの連続で不安いっぱいだった当時の自分の仕事に対する思いや、実際に経験した社内SEの仕事について、現在の状況について振り返りなど、気持ちを整理してみようと思う。


正常に動かないプログラムを書く私

プログラミングの経験は大学の授業が初めてだった。
プログラミングが出来るってカッコいいと、興味本位で授業を受けたが、成績は最悪だった。
教科書に記載してあるコードをそのまま写して書いても、プログラムが正常に動かない。
先生のお情けで単位は貰えたが、制作物の内容は酷いものだった。
授業に付いていくことが出来ない私は、絶対にプログラムを作る仕事には就けないと思っていた。

IF文が分かるなら大丈夫と言われた

面接の時、上司から言われた言葉は「自分は教えるのが上手い。だから未経験でも大丈夫。ちゃんと最初から教育するから心配しないで。」だった。
私はエクセルに関する資格を色々持っていた。
それを知った上司の評価は「エクセルのIF文が分かるなら、プログラムは書ける」だった。
そんな簡単な話なのかと思ったが、分からないので頷くしかなかった。

授業で自分が書いたプログラムが全く動かなかった経験があったので、システムエンジニアなんて私に務まるのかと疑問だったが、教育環境が整っている事は面接で伝わってきたし、そこまで言って貰えるならと思って入社を決めた。
当時は、明確にエンジニアになりたいという強い意識は全くなかった。
技術職で手に職だし、技術を身につけたら、安定してそう…という、よくある浅はかな考えからの入社だった。

マンツーマンの研修

システム部に入社した社員は私ひとりだった。
上司もひとり。
ふたりだけのシステム部だった。
研修が始まると上司がマンツーマンで丁寧に教えてくれた。
社内システムは汎用機。
汎用機を知らない方は業務用の大型コンピュータを想像して欲しい。
ほぼ社内で全て内製、言語はCOBOLやRPGという古いシステムだった。
実際の研修は、予想していた以上に上司の説明が分かりやすかった。
紙にフローチャート図を書きながら、エクセルの仕組みをシステムの造りに例えて説明を進めてくれる。
上司からの説明があって、自分で考えて実際に手を動かしてコードを書いてみる。
その後、上司との答え合わせのコードレビュー、その繰り返し。
自分が書いたプログラムが初めての動いた時、とても感動した事を今も覚えている。

丁寧な研修だが、未経験が付いていくのはやはり大変だった。
入社後3ヶ月は生きた心地がしなかったが、自分が知らない世界が少しずつ広がっていく感覚が意外にも楽しかった。

プログラミング以外の仕事

社内SEだったので社内のIT関連の仕事を担当する必要があった。
プログラミングだけやってる訳ではない。
ヘルプデスク対応、パソコン管理、タブレット管理、電話(外線・内線)管理、プリンター管理、ネットワーク管理、工場の機械の管理。
コンセントを挿す機械は何故か全部システム部の担当だった。
当時はその事に何も疑問を持たなかったが、今思えば何でもかんでもシステム部に頼りすぎだろう。
工場の機械なんて管轄外だと思う。
その機械を保守してくれてる会社に電話して勝手に聞いてくれ。
のちにSNSなどでシステム部で働いている人の話を見ると「なんでも屋」はシステム部あるあるみたいだった。

社内ヘルプデスク

ヘルプデスクの電話も社内の色々な部署から毎日かかってくる。
パソコンが動かない、エクセルが固まった、システムのデータがおかしい、プリンターのインクがない、携帯の調子がおかしい、様々だ。
システム部なんて社内の便利屋みたいな部署ではある。
Wi-Fiのことを「ウィーフィー」という人や、本当にPCが苦手で毎回同じ内容で電話をかけてくる人、変なアプリをインストールしてしまった人など本当に様々な電話が毎日かかってくる。
電話先で何が起こっているか想像して解決策を提案をする必要がある。
トラブルを正確に聞き取り、的確に対応しなければならないので、聞く力は鍛えられたと思う。
ヘルプデスクで感じたことは、電話をかけてくる人達は怒られるかもしれない…という申し訳なさそうな声で喋る人が多かった。
ここで私たちシステム部が、一瞬でも怒りを見せてはいけない。
次からトラブルがあっても隠そうとしてしまうからだ。
隠されるよりは正直に話してくれた方が良い。
私自身も「なんでこんなことしたんですか!?」と内心では言いたい時でも明るく「大丈夫ですよー!落ち着いて話してください!」と対応していた。
入社した時に上司から「君は気が長い方か?」と確認されたことを思い出す。
人の失敗を許せる人間でないとイライラしてしんどいと思う。
この明るく怒らない対応が後々の信頼に繋がっていくことになる。

現場を見ないと分からない事は多い

電話の内容によっては、社内の現場に話を聞きに行く必要があった。
上司は割とひとりでフラッと現場に行ってしまう人だったので、私は追いかけて仕事を教えてもらっていた。
当時、私が上司を追いかける姿を見た社長が私の事を「金魚の糞」と表現したこともある。
失礼だなぁと思いつつも、とにかく上司に追い付くのに必死だった。
何十年もの経験の差があるが、私は早く上司に追いつきたかった。
座学での知識も勿論大事だが、結局プログラミングもIT周りの知識も、実践に勝るものはなかった。

システム改善の要望を聞き取る力

実際仕事をしている現場からシステムの改修点を提案される時がある。
その際は実際に仕事をしている人に現在どういった仕事をしているのか、どの部分を改修すれば良いのかを聞き取って、システムに落とし込む必要がある。
コードを書く時間よりも、要望を聞き取って、仕様をまとめる時間の方が長かった。
出来上がったらテストをして、現場の人にも実際に触ってもらって、要望通りにシステムが動いているか確認。
完成した後も、不具合があれば適宜修正をしなければならない。
側にユーザー(社員)が居ると、すぐにフィードバッグが貰えて、システムに反映できるので仕事はやりやすかった。

ルーチンワークが変わることを恐れる現場との付き合い

社内SEをしていて驚いたことは、システムの改修などで普段の業務が変わってしまう事を極端に嫌がる社員さんが多いことだった。
業務の仕様が適宜変わり、自分の仕事が変わる事は仕方ないと思うが、そう思えない人が多かった。
慣れた作業は、慣れたままでやっていたい。
何かを変更したり、新しい機械や仕組みを導入する時の反発心は凄かった。
現状の仕様を変えると決める事はそこまで難しくない。
それを現場に伝えて実践してもらう事がとても難しかった。
普段からの信頼関係も大事だし、現場に理解してもらえるように説明を続ける事も大事だった。

社内SEって割と忙しい

毎日決まったルーチンで仕事がある訳ではない。
割とトラブルも多く、臨機応変に対応していく必要がある。
外部の業者さんとのやり取りも多く発生する。
大きい会社のシステム部なら仕事は細分化されていると思うが、小さい会社のシステム部は何でも屋みたいな扱いではある。
会社によって「システム部」の仕事範囲も違う。
黙々とシステム開発がしたい人には向いていないかもしれない。
システムを使用するユーザーがすぐ側に居るので、自分が作ったプログラムが仕事の役に立っていることを実感できて、やり甲斐は凄く感じる。
ITに関するお悩みを解決する部署なので、問題解決後は「ありがとう」と言ってもらえる事がある。
この言葉が私は嬉しかったし、次も頑張ろうと思えた。
思っていた以上にコミュニケーション能力が試される仕事だと感じる。
人とコミュニケーションを取りながらIT系の仕事をしたい人にはぴったりの仕事だと思う。

後継者を育ててこなかったツケ

社内SEの仕事は常に求人が出ている訳ではない。
この仕事に就くには運とタイミングが大事になってくる。
私が採用された背景は、数年後に定年退職する上司の後継者候補としてだった。
私が入社するまで上司はひとりでシステム部を運営していた。
会社は何十年も秘伝のタレの継ぎ足しのような改修を重ねて生かしてきたシステムの面倒をみる人間を育成する必要があった。
これもシステム部あるあるの事情だと思う。
今までシステムを延命させる為に後継者を育ててこなかった事が驚きだったが、正直今更感はあった。
従業員100人ぐらいの会社だったが、この状況を上司から引き継いで背負うのはとてもプレッシャーだった。
それだけが理由ではなかったが、私は退職した。

エンジニアの仕事とは何か

エンジニアの仕事って何だと聞かれると困るが、私は何かしらお困りごとを解決する仕事だと感じている。
仕事を効率よく行ったり、何かしらの課題を解決する為にIT技術が存在している。
それが何かツールなのかシステム的なものなのかは分からないが、その為のプログラミングであり、ITに関する知識であり、エンジニアだと思う。
これが正解か分からないが、私の中の結論だ。

面倒くさい仕事ではあったが、私は多分向いていたのだと思う。
障害対応以外はマイペースに仕事ができたのが良かった。
この会社には戻りたくないが、また別の会社で社内SEをやるチャンスがあれば、やってみたいと思う仕事だ。

ちなみに給料は?

月給21万+夏と冬のボーナス。
年収でいうと300万ぐらい。
基本給を低く設定し、よく分からない加給とかでボーナス、残業代を抑えようとする会社だったので、ケチな会社ではあったと思う。
まぁでも、たくさんの経験を積ませてくれたことは事実なので、今は感謝をしている。


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