バイバイスプリット竹内

吉本興業。芸歴7年目。バイバイスプリットの竹内です。 noteでは、短いお話を書いてま…

バイバイスプリット竹内

吉本興業。芸歴7年目。バイバイスプリットの竹内です。 noteでは、短いお話を書いてまいります。

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【ショートショート】ブレインストーミング

我が社の経営会議は今日も白熱している。 営業部長の袴田が意見を述べる。 「我が社の在庫管理システムは販路拡大をすべき段階に来ています。既存の取引先だけでなく、新規の顧客をもっと増やしていくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか」 マーケティング部長の野口が続ける。 「確かに、今までは自動車部品メーカーを中心に販売していましたが、小売業、飲食店などにも販路拡大は見込めそうな感じはしています」 営業1課長の笹井が疑問を投げ掛ける。 「商品自体のアップグレードなど

    • 【ショートショート】玉砕覚悟

      2021年3月9日。 今日で僕はこの青葉高校を卒業する。 3年間野球部で汗を流した僕は、卒業式後に教室には戻らず、いつも通り田邊と山本と野球部の部室で駄弁っていた。 「おい、佐々木、聞いてんのかよ」 田邊が僕に向かって話し掛ける。 「わ…悪い、なんだっけ?」 “田邊と山本と駄弁っている”と言ったが、実際僕は他のことが気掛かりで、彼らとの会話は上の空だった。 「だから、このあとB組の集まりすっぽかして、野球部で集まろって言ってんじゃん!高校の思い出って言ったら、クラ

      • 【短編小説】秋の夜長の新メンバー

        「うぃーっす」 遅れてきたスズムシが、公園に到着した。 「おせーぞスズムシ」 リーダーであるマツムシが喝を入れる。 スズムシは 「悪かったよ」 と言いながら草むらに腰を掛けた。 クツワムシとウマオイはチューニングをしていて、コオロギは発声練習をしている。 メンバーが揃ったところで、マツムシはメンバー全員に声を掛けた。 「今年も秋が始まったってことで、おれらの鳴き声を響かす必要があるわけなんだけどよ…ちょっといいか?」 マツムシの問い掛けに全員、マツムシの方

        • 【ショートショート】ランプの社員

          おじいちゃんちの物置小屋の中には、古めかしいランプがある。 おじいちゃんは昔から 「あのランプをこすってはいけないぞ…面倒くさいことになるからな」 と言って、小さい僕の手の届かない高さの棚の上にランプを置いていた。 僕はそのランプのことがずっと気になっていた。 きっとアラジンの話のように、ランプをこすると願いを叶えてくれる魔神が出てくるのだろうと思っていた。 そして中学生になり、背が伸びた僕は、背伸びをすればそのランプを手に取ることができるということに気づいた。 だ

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        【ショートショート】ブレインストーミング

          【超ショートショート】何も起きなかった話

          むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがいました。 おじいさんは山へ芝刈りに、 おばあさんは川へ洗濯に行きました。 すると川上の方からどんぶらこどんぶらこと、 大きな桃が流れてきました。 おばあさんは洗濯に夢中で全く気づきませんでした。 大きな桃はどんぶらこどんぶらこと川下へ流れて行きました。 そして別のあるところでは、浜辺で子供達が亀をいじめていました。 そこに通り掛かった浦島太郎という青年はそれを見て、 (物騒な世の中だなぁ…) と思いながら通り

          【超ショートショート】何も起きなかった話

          【ショートショート】力が欲しいか…

          青葉中学2年3組の柳田タカシは、放課後、体育館裏で同級生達にいじめられていた。 4人掛かりで殴る蹴るの暴行を加えられ、かけていたメガネも割られ、鞄の中の教科書、ノートはビリビリに破られていた。 いじめっ子達が去った後、タカシは泣きながら呟いた。 「くっそ…僕にもっと力があれば、あんな奴らにいじめられなくて済むのに…。力が欲しい…圧倒的な力が欲しいよ!!」 空に暗雲が立ち込める。 そしてタカシは、脳内に語り掛けてくるような声を感じた。 (力が欲しいか…!!) タカ

          【ショートショート】力が欲しいか…

          【ショートショート】正義のヒーロー『クレイジーマン』

          怪人デストロイヤーは街で暴れていた。 「ぐっへっへっへ…この地球はおれのものだ」 人々が恐怖で混乱している中、今日もあの男が現れた。 「ひゃっはっはっ!!…デストロイヤー、そこまでだよ!!ひゃっひゃっひゃっ!!」 現れたのは正義のヒーロー『クレイジーマン』。 クレイジーマンは、スキンヘッドで、上裸で黒い皮パンを履いている。 そして、全身にトライバル柄のタトゥーが入っている。 そして、両耳、眉上、鼻の間、口元、舌、全てに夥しい数のピアスを空けている。 「ひゃっはっは

          【ショートショート】正義のヒーロー『クレイジーマン』

          【超ショートショート】世界観ツヨシくん

          青葉小学校2年2組の世界観ツヨシくんは、放課後先生に呼び出されました。 先生「世界観、お前、夏休みの宿題、最後の日に一気にやったろ?」 世界観ツヨシ「なんで?僕は毎日、ちゃんと日記をつけたよ、先生」 先生「いや、お前、天気が毎日雨になってるぞ。夏休み、晴れてる日あっただろ」 世界観ツヨシ「あっ、ここって実際の天気を書くんだ。先生、僕・・・心の天気を書いてたよ」 先生「・・・は?」 世界観ツヨシ「晴れてる日でも、曇りの日でも、暑い日でも、寒い日でも…僕の心はなぜかい

          【超ショートショート】世界観ツヨシくん

          【ショートショート】記念日はお忘れなく

          「ただいまー」 「お帰りなさい!」 卓也は家に着くと、持っていた赤い薔薇の花束を実和子に渡し、言った。 「今日は結婚記念日だからね。いつもありがとう」 実和子は喜びの声を上げる。 「覚えてくれてたの!?嬉しい!!」 実和子は卓也に抱きついた。 卓也は微笑みながら実和子の頭を撫でた後、ソファーに腰を掛けた。 実和子は卓也に尋ねる。 「卓也さん、明日は何の記念日か覚えてる?」 卓也は答える。 「あぁ、覚えているよ。明日は、おれと実和子がケンカして離婚をした、

          【ショートショート】記念日はお忘れなく

          【超ショートショート】ひっくり返った亀

          川辺を歩いていたら、亀がひっくり返っていた。 甲羅を地面につけて足をバタバタさせている。 かわいそうだったので、私は亀を持ち上げて元通りにしてあげた。 亀は嬉しそうに、歩いて行った。 (亀も1人では生きていけないんだなぁ…) と、私は思った。 帰り道、歩道を歩いていたら、バックパッカーがひっくり返っていた。 バックパックを地面につけて、手足をバタバタさせている。 かわいそうだったので、私はバックパッカーを持ち上げて元通りにしてあげた。 バックパッカーは嬉しそ

          【超ショートショート】ひっくり返った亀

          【ショートショート】作戦会議

          「これがこの建物の平面図だ。見てわかる通り、難攻不落の城と言えるだろう」 イーグルがテーブルの上に図面を広げながら言った。 ホークが口を開く。 「正面突破は難しいか…。コンドル、見回りはどうだった?」 コンドルはノートPCを叩きながら、話し出す。 「昨日確認したけど、エレベーター前、階段前には常時見回りが立ってる感じだなぁ」 それを聞き、僕は頭に浮かんだ疑問をコンドルに投げ掛けた。 「見回りだって交替しているだろ?交替のタイミングを狙うのは?」 それに対し、コ

          【ショートショート】作戦会議

          【超ショートショート】浦島太郎できなかった話

          むかしむかし、ある村に、浦島太郎という若者がいました。 浦島太郎が海辺を歩いていると、子供たちが大きなカメを捕まえていました。 そばによって見てみると、子供たちがカメをいじめています。 浦島太郎はいてもたってもいられなくなり、子供たちを叱ろうと思いました。 「コラ!君たち!カメをいじめるんじゃ…」 そのときでした。 急にカメの手足が伸び、カメは人間のように二本の足で立ち上がりました。 そして甲羅の中からヌンチャクとオレンジのハチマキを取り出し、カメは目の周りにオ

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          【ショートショート】トシオのバタフライ

          大切な家族に見守られ、トシオは今長い人生を終えようとしている。 薄れゆく意識の中で、トシオは1つだけ心残りなことがあった。 トシオは、家族から嘘つきだと思われていた。 トシオは昔、水泳の強化指定選手であったのだが、そのことを家族が誰も信じてくれなかったのだ。 オリンピックも夢ではないと言われていたが、 怪我の影響で、志半ばにして引退を余儀なくされた。 トシオのバタフライは、当時日本一の速さを誇っていた。 しかし、トシオの過去を知るばあさんが早くに亡くなってしまったこ

          【ショートショート】トシオのバタフライ

          【ショートショート】ヒッチハイク

          「全然止まってくれないなぁ…」 両手で掲げていた“よこはま”と書いたスケッチブックを下ろし、 僕はため息をついた。 夏休みを利用して僕は、ヒッチハイクの旅に出ることにした。 いつまでもお父さんとお母さんに甘えてばかりではダメだって思って、僕は自分で決めたんだ。 心配性なお母さんは、「ミノル、本当に大丈夫なの?」なんて言ってたけど、僕は「へっちゃらだよ!」と強がった。 本当は少し怖かったんだけど。   「あっ」 トラックが近づいている。 僕は再びスケッチブックを掲

          【ショートショート】ヒッチハイク

          【ショートショート】二学期デビュー

          一学期は悲惨だった。 小学3年生になり、初めてクラス替えをした。 2年生のときに仲良かった友達とはクラスが替わってしまい、僕は1から友達作りをしなければいけなかった。 しかし、出だしで失敗してしまった。 元2年1組だった奴らがクラスの主導権を握り、 僕を含む元2年3組は完全にクラスの中で目立たない存在になってしまった。 二学期からはなんとかしたい。 何とか、クラスの目立つグループに入りたい。 だから、僕は『二学期デビュー』をすることにした。 中学生のヒトシお兄ちゃん

          【ショートショート】二学期デビュー

          【ショートショート】忙しい夏

          今年の夏は本当に忙しかった。 駐車場の猫があくびをしていたもんだから、長い長い下り坂を君を自転車の後ろに乗せてゆっくりゆっくり下っていたら、 いつの間にか走る雲の影を飛び越えていて、 気付いたら、夏の星座にぶら下がって上から花火を見下ろすことになっちゃって、 パッと光って咲いた花火を見てたら、まだ終わらない夏が曖昧な心を解かして繋いだものだから、 とりあえず四六時中も好きと言って、夢の中に連れていってって言って、 でもよく考えたら、君は常夏の楽園ベイベーだったので

          【ショートショート】忙しい夏