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【ショートショート】記念日はお忘れなく

「ただいまー」

「お帰りなさい!」

卓也は家に着くと、持っていた赤い薔薇の花束を実和子に渡し、言った。

「今日は結婚記念日だからね。いつもありがとう」

実和子は喜びの声を上げる。

「覚えてくれてたの!?嬉しい!!」

実和子は卓也に抱きついた。

卓也は微笑みながら実和子の頭を撫でた後、ソファーに腰を掛けた。

実和子は卓也に尋ねる。

「卓也さん、明日は何の記念日か覚えてる?」

卓也は答える。

「あぁ、覚えているよ。明日は、おれと実和子がケンカして離婚をした、『離婚記念日』だ」

実和子は喜びの声を上げる。

「覚えててくれたの!?嬉しい!!」

実和子は卓也に抱きついた。

卓也は微笑みながら実和子の頭を優しく撫でた。

卓也から離れ、実和子は言った。

「卓也さん、明後日は何の記念日か覚えてる?」

卓也は答える。

「あぁ、覚えているよ。離婚後、すぐに仲直りをして再婚をした、『再婚記念日』だ」

実和子は喜びの声を上げる。

「覚えててくれたの!?嬉しい!!」

実和子は卓也に抱きついた。

卓也は微笑みながら実和子の頭を優しく撫でた。

卓也から離れ、実和子は言った。

「卓也さん、明々後日は何の記念日か覚えてる?」

卓也は答える。

「あぁ、覚えているよ。その後またすぐケンカをして離婚をした、『第二回離婚記念日』だ」

実和子は喜びの声を上げる。

「覚えててくれたの!?嬉しい!!」

実和子は卓也に抱きついた。

卓也は微笑みながら実和子の頭を優しく撫でた。

卓也から離れ、実和子は言った。

「卓也さん、その次の日は何の記念日か覚えてる?」

卓也は答える。

「あぁ、覚えているよ。離婚しても怒りの治まらなかった実和子が、軍人であるお義父さんにおれのことをチクって、お義父さんが戦車に乗っておれの家を襲撃しに来た、『第一次実和子大戦 開戦日』だ」

実和子は喜びの声を上げる。

「覚えててくれたの!?嬉しい!!」

実和子は続ける。

「卓也さん、その次の日は何の記念日か覚えてる?」

卓也は答える。

「あぁ、覚えているよ。すぐさまおれが白旗を挙げて、何とか終戦した、『第一次実和子大戦 終戦日』だ」

実和子は喜びの声を上げる。

「覚えててくれたの!?嬉しい!!」

実和子は続ける。

「卓也さん、その次の日は?」

卓也は答える。

「あぁ、和解かと思われたが、実はおれが職場の同僚の女性社員と食事に行っていたことが実和子にバレて、そしてそれを実和子が再び軍人のお義父さんにチクって、お義父さんが戦車に乗って再びおれの家に襲撃に来た、『第二次実和子大戦 開戦日』だ」

実和子は喜ぶ。

「嬉しい!覚えててくれたの!?で、その次の日は?」

卓也は答える。

「あぁ。おれが土下座を1000回して何とかお義父さんの怒りは鎮まり、そしてその場で実和子と再婚をした、『第二次実和子大戦 終戦日&第二回再婚記念日』だ」

実和子は喜ぶ。

「嬉しい!さすが卓也さん!!…でもね、明日が、ちょっと変わっちゃうかもしれないの?」

卓也は実和子の顔を見る。

「明日が変わる?どういうこと?」

実和子は、先程卓也から貰った花束を卓也の前に差し出しながら言った。

「私、赤い薔薇好きじゃないって言ったよね?・・・私の好きな花も覚えてくれないなんて、卓也さん最低だと思うの。・・・だから、この事、お父さんに言っておくね」

卓也は思った。

(なるほど・・・明日は『第三次実和子大戦 開戦日』に変わるってことか…)

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