【掌編小説】勘違い
密かに好意を寄せている人から、バレンタインデーにチョコレートをもらったら、大抵の人は大喜びするだろう。
僕もその点に関して半分は同意する。
あと半分は……疑いを持つ。どの程度の気持ちなのか、と。
と言うのも、僕がもらったのは明らかに義理チョコっぽいものだったのだ。
谷口弥生さんは、僕が勤める会社の2年後輩で、隣りの部署に所属している。
笑顔がかわいらしく誰にでも親切で、多くの同僚から慕われている。
“堅物眼鏡”と揶揄される僕にも、丁寧な物腰ながら親しく話しかけてくれ、僕は彼女に密かな好意を寄せていた。
僕と同じ部署に所属する柳田省吾は、仕事はそれなりにこなすもののチャラついた言動が鼻につき、やり取りは仕事での必要最小限に留める関係だった。
柳田は、女性への気遣いが上手で女性社員に人気があった。
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