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エッセイ

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「子どもの頃の感覚を文字に残しておきたい。このまま黙っておいたらなかったことになる!もったいない!」と謎の焦燥感に駆られ描き始めました。あたたかく見守ってください。
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方言が消えた日

方言が消えた日

テレビの芸能人の話し方を真似をすれば、どうせ喋れるだろうと高を括っていた標準語。

しかし、いざ声に出してみると全く喋れず、上京してすぐに訪れた中華屋で「あの、これ」「はあ」しか言えなかった。

あと4日に迫った入学式。このままでは、大学生活のスタートは無口だ。無口のつまんない女として、4年間の貴重な大学生活をやり過ごすことになってしまう。

最初が肝心なのにやらかした。上京が決まってから、標準語

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コンビニのご馳走

コンビニのご馳走

学生時代、コンビニに行くだけで遊園地に行くような"ワクワク"があった。

中学生までは、登下校の道中にコンビニはなく、都会のコンビニ寄り道に憧れていた。

高校生になると、帰り道でコンビニを通るようになった。何を買うわけではないけれど、必ず彼氏とコンビニに寄った。気遣いしいのわたしは、しょっぱいものが食べたいときも、甘党の彼が買ったスイーツやミルクティーを少し分けてもらっていた。

コンビニのおで

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映画は映画館で観たい「ある」理由

映画は映画館で観たい「ある」理由

映画は映画館で観たい。画面の大きさが〜とか、配信されるまで待てないとか、音質が〜とかそれっぽいことを言いたいのだが、それよりも大きな理由がこれ。

家で映画を観ると集中できないのだ。

私はとにかく誘惑があると、一つのことだけに集中できない。映画館だと、携帯も触れないし仕事もできないし、せいぜいポップコーンをむしゃつくくらいだが、家の中にいるとまあ、誘惑だらけで。

「ふう。」と一息つき、おとなし

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マイケルがマイクでモンキー

マイケルがマイクでモンキー

めっきり洋画を観なくなった。

中学3年生の夏休みにゴシップガールにハマっていた頃は全員の顔がわかった。高校生になってからは、再放送される韓国ドラマも逐一欠かさず録画して観て、DVDにまで焼いていた。

今はもうほとんどが見れなくなった。

顔の分別が付かない。

誰が誰か分からない。

映画の中で1日経って、着ていた服や特徴的な髪型が変わってしまうともうダメだ。

ポニーテールの優しいヒロインで

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「ごちそうさま」の教育は少女漫画で

「ごちそうさま」の教育は少女漫画で

「飲食店は、ご飯を食べさせてもらって当たり前の場所。お金を払っているんだから、ご飯を提供されてもありがとうなんていらないんだ!」

と、幼稚園生のわたしはかなり横暴な考えを持っていたので、食事後わざわざ店員さんに「ごちそうさま、ありがとうございます」と言うおばあちゃんのことを、恥ずかしいと思っていた。

そんな当時の自分が、今は恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない。実に、気づいてよかった。

成長す

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給食ダイエッター

給食ダイエッター

私は、好き嫌いが多い子供だった。

いわゆる子供が好きそうな唐揚げやエビフライ、カレーにハンバーグ、オムライスといったものも嫌いだった。ちなみに寿司屋に行くと、かんぴょう巻きとお茶を嗜んでいたそうだ。家のごはんで喜んで食べていたのは、ひじきや筍の煮物や切り干し大根らしい。どおりで晩ごはんでの出没頻度が高かったわけだ。渋い。

これだけ好き嫌いが多いわけだから、栄養バランスが満点の給食なんて、食べら

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吸ったらチャラのため息

吸ったらチャラのため息

高校生のとき、ため息を吐く度に、隣で息を「ハアッ」と吸ってくれる男がいた。「ため息を吐くと幸せが逃げる」という迷信を信じていた、彼なりの解決方法だったようだ。

「そのため息を俺が代わりに吸ったら、全部チャラになるから大丈夫」と言ってよく笑っていた。

残念ながら、当時の私にはその理屈が全くもってピンとこなかった。ため息をつくのにはそれなりの理由があって、それは来月のクラス替えが不安だとか、毎日ラ

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〈もったいない〉が産んだエッセイ

〈もったいない〉が産んだエッセイ

きっかけは「もったいない」だった。

生粋の貧乏性のわたしは、何かと「もったいない」という感情に取り憑かれる。ダイエットをしていても、賞味期限が迫っているからもったいないとお腹が苦しくても無理に食べたりするし、どこかにお出かけしても、1個のことをするためだけに行くのはもったいないから、別の用事をいくつもくっつけたり。

こういうことが重なると、”もったいない疲れ”をしてしまうことも。

そんなわた

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