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高校教師研修で「外国ルーツの若者の葛藤と衝突」を体感してもらいました!

お久しぶりです!Bridge Projectのゆいかです。
遅くなりましたが、2023年もよろしくお願いいたします。

さて、今回は1月14日に実施した大阪府立高校教師向けの研修についてお話します!「大阪府在日外国人教育研究協議会」さんにお声がけいただいたこと、そして私自身がイタリアと日本のミックスルーツということで、「外国ルーツの若者の葛藤と衝突」というテーマで体感型のワークショップをがっつり3時間実施。約25名の教員の方にご参加いただきました!

ワークショップの目的は外国ルーツの若者の人生をプチ体験すること。そして、教師の方々と一緒に外国ルーツの若者が過ごしやすくなる方法を考えることでした。
主な内容は
①トランプゲームで日本へ移住した時の気持ちを体感する。
②実例からアイデンティティの葛藤を知る。
マイクロアグレッションを受けた時の気持ちを体験し、解決法を考える。

①日本へ移住した時の衝突

まずは、バーンガという無言で行うトランプゲームを実施。外国から日本に移住をし、言葉が通じない、文化が異なるという場面を体験してもらいました。勝ったり負けたりすることでテーブルを移動するゲームなのですが、このゲーム内での競り合いやファシリテーターにせかされることは、全て現実社会の競争(受験や出生)や効率優先志向を再現しています。
具体的な仕組みやルールを説明するとネタバレになるので、ここでは記載しませんが、基本的なバーンガのルールはネット検索でご覧いただけます。

皆さん、ゲームに集中しています。

ゲーム終了後は、ゲーム中の気持ちをポストイットに書いてもらいました。
「話せないし、ルールも十分に分かっていないので、不安でした」
「戸惑った」「びびった」「苦しかった」「モヤモヤした」というコメントが多かったですが、「ひとつ進んだので嬉しい」「楽しかった」という意見も。そして、「負ける人は遠慮する人」だと感じた方もいました。

異文化衝突が起き、言葉が伝わらない状況はフラストレーションが溜まります。外国から日本に移住し、学校生活を始めた時、最初は楽しくても、どんどん不安になり、苦しくなることがあります。そんな気持ちを少し疑似体験してもらえたかと思います。

ゲーム中に感じた気持ちを書いてもらいました。

②アイデンティティの葛藤を知る

次に私の体験談から外国ルーツ、ミックスルーツの人が感じるアイデンティティの葛藤について話しました。私はいわゆる「ハーフ」ですが、この言葉は「半分しか日本人じゃない」という意味合いがあると個人的に感じるので、「ダブル」(ルーツが2つの場合のみ)や「ミックス」という言葉を好んで使っています。
そんな私の、今も続く葛藤についてお話しました。長くなるので、ここでは概要だけでお許しください。

私はイタリアの日本人小学校に通っていましたが、周りから完全な日本人としては扱ってもらえないと感じていました。話についていけない、学力は追いつかない、遊びに誘ってもらえない、学校を休むと取り残されるから絶対に休まない。そんな小学校生活でした。そして、周囲に溶け込もうと必死で、「自分は日本人だ」「イタリア人は嫌いだ」とイタリア人としてのアイデンティティを捨てようとしていました。
それでも、中学校からは現地のイタリアの学校に。今度は「中国人だ」「国に帰れ」と言われ、「いいよー。チケット買ってくれたら、すぐ行くから」と反論したり、男の子と殴り合いのけんかもしていました。笑
でも、中学3年生になると、「とにかく居場所がほしい」と同級生と同じような服装、髪形、行動を選ぶように。高校では初めて本当の仲間ができましたが、日本とは距離がどんどん遠くなっている気がして、罪悪感を感じていました。
そんなこともあり、大学では日本の文化や歴史が学べる学部に進学。ここで初めて、日本とイタリアのアイデンティティのバランスが整い始めました。

アイデンティティの葛藤が再開したのは、日本に移住してから。「日本人らしく振る舞わないといけない」という気持ちから自分を制御。そして、日本で会う人会う人に「ご出身はどちらですか?」「ハーフですか?」「日本語上手ですね」「あ、日本に住んでいなかったから知らないですよね」などのマイクロアグレッションを受ける日々。小学生の時の、「日本人として見てもらえない」というトラウマがよみがえってきました。だからこそ、今の活動を始めたんだろうなー、と今になっては思います。そんな話を聞いてもらい、「自分ってなにものなんだろう?」という葛藤を抱えている外国ルーツの人が多いことをお伝えしました。

③マイクロアグレッションを体感

マイクロアグレッションは「特定の集団に対する偏見が理由で、相手を傷つけてしまう言動」のことを指します。
例えば、日本育ちの外国ルーツの人に対して「日本語が上手ですね」と言ったり、アフリカ系のルーツを持っている人に「バスケやってそう!歌上手そう!」と言うこと、日本語が不得意な子が他の子と同じことができないと決めつけ「これはやらなくていいよ」と言ったり、「ふわふわだね!」と勝手に髪の毛を触ることもマイクロアグレッションです。

日本ルーツの生徒、外国ルーツの生徒、教師の立場で演技をしていただきました。

今回の研修では、ロールプレイを通して、日本ルーツの生徒が外国ルーツの生徒を無意識に傷つけてしまった場合の対処法を考えました。先生方にはそれぞれの役になりきってもらい、交代をしながら教師として「自分ならこうする!」を実践していただきました。学校で試すのはリスクが高くてできない、という方法にも挑戦できるのがロールプレイの良いところ。皆さんが考えた対応法はこちら!(字が汚いのは、個性だと思って楽しんでください。笑)

先生方が考えたマイクロアグレッションへの対応

そして、マイクロアグレッションを受けた時に外国ルーツの若者がどのような気持ちになるかを想像してもらいました。ロールプレイでマイクロアグレッションを受ける役を演じた人は、特に想像しやすかったかもしれませんね。

マイクロアグレッションを受けた生徒の気持ち

他にも、教師が外国ルーツの生徒に対して、無意識に差別的な発言をしてしまった場合、周りの教師がどのような行動をとるべきかを考えるロールプレイも準備していましたが、今回は時間が足りず、皆さんに宿題として持ち帰っていただきました。

先生方の感想

ご参加いただいた先生方の感想を一部ご紹介します。

カードゲームでは、自分が合わそうとしていたり、フラストレーションがあって、早く終わらないかなと思っている気持ちに気付き、文化に合わせて何度もしんどい思いをしている子の気持ちが少し分かった気がしました。

経験とゲームとロールプレイが見事に組み立てられた研修でした。特にバーンガは、来年度、HRでぜひやってみたいです。ありがとうございました。

バーンガをHRに取り入れたいというご意見は多かったです!
アイデンティティの葛藤に関する体験談については、こんな嬉しいコメントも。

出身、生育歴がユニークで小さい頃からのお話ではその時々の内面の思いを披露された所が興味深かったです。日本で活動されていることは大変と思いますが、今後の活躍を期待しております。

マイクロアグレッションのロールプレイも高評でした。

マイクロアグレションについてですが、自分自身も無意識に先入観で言動したかもしれません。先入観で偏見、そして暴力、最後に虐殺につながる恐ろしさを学ぶことができました。とても勉強になりました。ありがとうございました。

実際に、ロールプレイをすることで、上手く聞くことができず、教師口調で話をしていることに気付かされました。ついつい上からの口調になってしまうところを反省し、共感できるようにならなければと思いました。

そして、こんなご要望も!!

今回のような「ワークショップ」はぜひ学校の職員向けの研修時に導入してほしいです。

外国ルーツの生徒に関するワークショップを含め、教職員研修にダイバーシティーを考えるが機会がどんどん増えていったらいいですね。

私の感想

あっと言う間の3時間でした!3時間の研修と聞くと「ながっ!!」と感じる方も多いのですが、実際には体を動かす時間も多いので、いつもあっという間です。
今回は私の夢の一つであった、「先生方とダイバーシティーについて考える」貴重な機会をいただきました。先生方が真面目に生徒さんに向き合い、対応に悩む姿に心打たれました。今回、お招きいただいた大阪府在日外国人教育研究協議会の皆様、ご紹介いただいた おおさかこども多文化センターの村上様、素敵な会場を貸してくださった大阪府立住吉高等学校の皆様、そして、ご参加いただいた先生方、誠にありがとうございました!
一人一人が自分らしく、幸せに暮らせる、多様性を認め合える社会の実現のためにこれからも頑張りますので、よろしくお願いいたします!

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