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自由詩

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創った詩を更新していきます。
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記事一覧

歩み方

一夜かけて物語をひとつ呑み込む。まだ続く道は遠くて、内側はざわざわと騒いでいる。窮屈な膜から抜け出したように暴れそうになる王さまを一旦押し込めて謝罪を贈る。ひとつの世界を返却し、ふたつの世界をまた手に帰る散歩道はとても月が綺麗で、猫に幾匹も出逢う。伸び縮みを繰り返す造形はしなやかで、ただただ美しいと思うのだけれど、あの毛並みに触れにいくにはあまりにも違いすぎて近づけない。ほてりほてりと歩いては、進

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quinque sensus-五感-

細い月

痛みの中で

白いアイス最中を齧る

酔うための酒とは別れたよ

結局酔えない

酔いたくなるほど現実を生きたけど

それはただの言い訳に成り下がる

もう煙草の受動喫煙にも

顔を顰めるようになって

私はあの銘柄が好きだったのだと思い出す

身体が壊れても愛してやると

そんな愛し方が今は出来ない

蛙と鷺が叫ぶ夜は

いつしか私の中で当たり前になった

纏わりつく生温い空気の波は

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降り積もることへの祈り

降り積もることへの祈り

静かに静かに降り積もるまで

白い吐息をゆうくり大切に吐き出して

かじかんだ手の指先をやんわり掴む

君は外套を纏っているのだろうか
それとも細く長く青白い手足を風に触れさせているのだろうか

ゆうくりゆうくりと落ちては溶けてゆく
白いわたぼうしのゆき達は

真っ赤に染まり果てた地面など知らず
ひとりひとりと落ちてゆく

降るなとどれだけ願っても
手を青空へ伸ばしても
小さな小さなわたしの手は

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音が聴こえる。

以前、聴こえないふりをして忘れてしまった音楽が。

私の周りは雪ばかりで、今ならその雪が全てを吸い込んで静かな世界を贈ってくれていたことがわかる。

それでも、静かすぎるのは、ちょっとばかし怖くもあって、何も聴こえない。

空っぽになったと淡く絶望のような感情を抱いたこともあった。

私は紅で白を染めるしかなかったけれど、それでも雪は静かに優しく、しへ向かうやうに、私を誘った。雪

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飛翔

昔は自由に翔べてたんだ。檻の中でも空が見えていたからさ。白く輝く羽で力強く羽ばたいて、胸を張って。それで。それで。それで。ある日真っ黒に染まって、私はどうにもそれが赦せなくて、翔ぶことも忘れて俯いてとぼとぼと歩いた。『あら、綺麗だったのに。それはそれでいいと思うけれど、もう翔ばないの?』って。仲の良い隣人に話しかけられた。その時、私のよき隣人は青々と茂る駅の近くにある街路樹だけだった。わたしの羽が

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contractus -契約書-

何もかもが意味を成さなくなってから久しい。意味を見出さなくなったといっても同じことだろう。何もないから自由に生きられる。流れる血潮と暖かな夜明けはいつも私を空へと飛ばしてくれる。いつまで待てばいいのかと思ったけれど、いつまででも待とうと覚悟をしたほうが幾分か楽なことにも気づく。炎を吐く獣と、氷を紡ぐ娘。悲しみの淵に見るのは、井戸の中で自由に泳ぐ極彩色のさかなたち。今一度創り出そうとして、無味乾燥な

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せめて霖雨をと

緑がいっそう深くなって、とある季節はおいていかれる。葉っぱは沢山降り積もっていくけれど、その一枚に染まる必要もなくて。他者を介在させず、自身が充足するナニカはきっと君が知る色をしていない。朝焼けと霧。底と頂き。こんなにも深く息のできる世界は美しい。山々が青く、くっきりと空との境界線をひく。葉桜と烏。海とヤシの木。斜めに日の光を取り込む、わたしのためだけの部屋。くるりくるりと回る椅子。くるりくるりと

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    あふれる

ラテン語ってなんかかっこよさそうでいい感じじゃないですか。

そんで英語と韓国語と中国語は私にとって身近な音楽でありまして、日本語は私に苦痛も併せてもたらします。なんて業が深いんだとか思いながら、接客中は英語が通じると笑顔になるくらいには意思疎通が出来ると嬉しいんです。実践。吹き替え。Google翻訳からのお勉強。そんな感じで言語を学んでいくほうが私には性に合ってましてね、それにようやく最近気づい

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蒼ノ電燈

蒼ノ電燈

わたしの蒼ノ電燈は、未だ濃い闇の中でつなぐ場所を探るように明滅しているわけですが、なかなかどうして雨粒が、地に触れる音たちと、翼を持つ鳥が囀る音たちが密かにつながり合い続けて一つの雪原を創り出すわけでありまして。

夢と現を行き来しますが、それは記憶でもありまして、過去と今とを行ったり来たりと旅をしますが、憎しみの中に微かに残った優しげな感情を、わたしは未だ宝箱に入れようと四苦八苦しているわけでし

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独白

独白

何もかも意味がなくなって
真っ白な存在に戻って

そんな感じでぶらぶらぶらと進んでゆき
それがいいんだよと自身に言葉を贈れたら

それはそれで私の中で意味がないという意味になって

ふわふわふわとどんなところへでも自由に跳んでいけるような

そんなカードを手に入れたとて

よく配られた手札で闘うしかないとも聞くが

その配られたカードを派生させるか進化させるかは努力でなんとかするとかしないとかして

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すべて

すべて

全ての野原に降りたてないかしら
全ての海原に住めないかしら

全ての夜空に在ることができるかしら
全ての川辺に挨拶できるかしら

赤い南天の実がこころを癒してくれるまで

待って待って待って
さぁ、ゆくよ、と手を伸ばす 

燃える朝日に近付いて
鳥の囀りを拾い集め

月の香りのする引き出しに蔵い
獣たちの鼓動で眠ると決めたけれど

それらは何を意するのか
それらは何を遺するのか

全てとは何かしら

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泣きたくなる音が(未完)

泣きたくなる音が(未完)

泣きたくなるような音がずっとずーっと鳴っている

その音はポンと鳴るけども
鳴ってほしくない時にポンと鳴る

ポンポンぽんと
いつもわたしを迎えにくる
連れ去ろうとする

まだ行けない
大切な人にお別れを言っていないから

まだ行けない
大切な人が大切に思ってくれていなくても

それが愛さない理由にはならないのだと
わたしの翼に囁いて
それでも騙せず苦しくて折ってしまったよ
森にあげてしまったよ

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