雪
音が聴こえる。
以前、聴こえないふりをして忘れてしまった音楽が。
私の周りは雪ばかりで、今ならその雪が全てを吸い込んで静かな世界を贈ってくれていたことがわかる。
それでも、静かすぎるのは、ちょっとばかし怖くもあって、何も聴こえない。
空っぽになったと淡く絶望のような感情を抱いたこともあった。
私は紅で白を染めるしかなかったけれど、それでも雪は静かに優しく、しへ向かうやうに、私を誘った。雪は肥大した私の自我を緩やかに、脇の下から赤子を抱くように少しだけ横に押し退けて、死にかけていた生命と身体を癒し続けた。
よく眠る。たくさん眠る。もう罪悪感も抱かずに。わたしは、新しいわたしに相成った。
世界線が一緒の詩↑
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