記事一覧
熱を帯びた葦と、誰もいない校舎。
その日は帰り道で雨が降りました。
ワイシャツに生ぬるい雨が染み込んでくる。
僕は荒い呼吸で自転車をこいでいます。
青々と繁った草とアスファルトが、雨に濡れて匂いたっていました。
遠雷。
確かに遠くの方から、近付いてくる。
ペダルにかけていた力を、さらに強めました。
カーブミラーを横目に自転車はいっそう加速します。
この調子ならずぶ濡れになる前に帰れるだろう。
そんな風に楽観したところでした
一緒に居れる気がしていた、夜。
それが長く続かないと分かっていたから私は唄っていた。
夜が終わらないための唄。
夜が終わらなければ、いつまでも偽物たちの街。
私たちのための街。
うたにあわせてあなたがおどって。
そのうでのきどうが、あさひをおびてたしかになっていく。
ね。
大きな使命を背負わされたドラマチックで美しい人生なんかより、あなたひとりの為に簡単に生きて死んでいける人生が良かった。
寂しくなって、虚しくなって。(連作詩)
生活の軌跡と停滞の爪痕。
日が昇って、また沈んで。
そこに不条理があっても、それは美しく機能していました。
壁に掛けられた絵画は、季節を追うごとに少しずつ表情を変えて。
それが内的なのか外的なのか測りかねています。
もしそんな流動性が、命だとしたら。
過去に還す光を見つめている。
今は過去だし、過去は今だから。
だけどそれ以上に、大切なままだから。
それでも時間は有限で、いつまでも暖かいままの記
円環を外れることさえ予定調和の、安易な祝祭日。
氷水の中で溶けていく氷は、自分の温度にも耐えられないで溶けていく。
苦しむために生きているみたい。
窓辺に、花を飾ろう。
それは小さく日々を彩って、
そういった小さな優しさを、全て壊してしまうみたいな衝動を浮き彫りにした。
「自罰的な感情で何が生まれるの?」
魔が差したみたいに、あるいは木漏れ日みたいに、それは間欠的な理性だった。
「黙れ。お前が一番私を罰するくせに。」
私は悪態で返す。
眠たいのか死にたいのか、分からないような。
校舎の白い壁に何度も反射した雨が、いつか染み込んでしまったみたい。
コンクリートの道、ずっと続いて。
新しくなった体で歩いていく。
子供たちの声、私の声。
差なんて分からないけど。
先生が言っていた。生きていくのには寂しさが必要だって。
私はそれが寂しかった。
実体の無いまま、生きていけたらよかったけど。
簡単な想像と寂しさの報復でやっと生きていけるらしい。
それでも歩いていくしかなかった。
幸せ
螺旋が向かう先、四季の重なり。
高架下、四つ葉のクローバーを探した。
幸せを見つけて、押し花にして、そうやって確かな形があれば私は生きていけると思っていた。
いつだって、代替できない物を探している。
それはあるいは最初から、傷つくことを望んでいるようで。
曇り空の下、仄かに暗いそこで規定された幸せをさがした。
私たちは、いつだって世界に期待していた。
まるで意味があるみたいに、感情と心を繰り返した。
幸せに向かう力が、最初から組
君謀る、我ら想うまで。
近づくにつれて輝きを増す常夜灯。
参道を歩く度、僕は遠い過去を思い出していた。
たぶん、それは強い光だったから。
忘れてしまった、遠い、遠い。
境内に入ると、曇天からは雫がこぼれ始めた。
神様が居るとしたら、それは僕たちのことだろう。
この参道みたいに、その道のりを歩かされる、きっと運命の奴隷みたいなもの。
祈る手と、心を止めないように。
いつか、僕たちの帰る場所が出来ますように。
祖霊達を乗せた