ねむり

おはこんばんにちは!(死語

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熱を帯びた葦と、誰もいない校舎。

その日は帰り道で雨が降りました。 ワイシャツに生ぬるい雨が染み込んでくる。 僕は荒い呼吸で自転車をこいでいます。 青々と繁った草とアスファルトが、雨に濡れて匂いたっていました。 遠雷。 確かに遠くの方から、近付いてくる。 ペダルにかけていた力を、さらに強めました。 カーブミラーを横目に自転車はいっそう加速します。 この調子ならずぶ濡れになる前に帰れるだろう。 そんな風に楽観したところでした。 前振りもなく雨脚が強くなったのです。 それはもう前が見えないほどの豪雨。

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      調査記録:地元出身男性の日記

      • 一緒に居れる気がしていた、夜。 それが長く続かないと分かっていたから私は唄っていた。 夜が終わらないための唄。 夜が終わらなければ、いつまでも偽物たちの街。 私たちのための街。 うたにあわせてあなたがおどって。 そのうでのきどうが、あさひをおびてたしかになっていく。 ね。

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          調査記録1

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        熱を帯びた葦と、誰もいない校舎。

        • 調査記録:地元出身男性の日記

        • 一緒に居れる気がしていた、夜。 それが長く続かないと分かっていたから私は唄っていた。 夜が終わらないための唄。 夜が終わらなければ、いつまでも偽物たちの街。 私たちのための街。 うたにあわせてあなたがおどって。 そのうでのきどうが、あさひをおびてたしかになっていく。 ね。

        • 調査記録1

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          大きな使命を背負わされたドラマチックで美しい人生なんかより、あなたひとりの為に簡単に生きて死んでいける人生が良かった。

          大きな使命を背負わされたドラマチックで美しい人生なんかより、あなたひとりの為に簡単に生きて死んでいける人生が良かった。

          寂しくなって、虚しくなって。(連作詩)

          生活の軌跡と停滞の爪痕。 日が昇って、また沈んで。 そこに不条理があっても、それは美しく機能していました。 壁に掛けられた絵画は、季節を追うごとに少しずつ表情を変えて。 それが内的なのか外的なのか測りかねています。 もしそんな流動性が、命だとしたら。 過去に還す光を見つめている。 今は過去だし、過去は今だから。 だけどそれ以上に、大切なままだから。 それでも時間は有限で、いつまでも暖かいままの記憶の中には居させてくれないみたい。 私はそれが悲しくなって、大切なはずの今ですら

          寂しくなって、虚しくなって。(連作詩)

          言の柱。

          夜。 街は黒く渦を巻いて。 でも、寂しくなんかありません。 聞こえる音の中には、確かに誰かの声が含まれていたから。 明日が来るような確度で希望が降る街。 雨の音。 歩道を満たした雨水は、ぼやけた光を反射して。 帰り道を忘れた僕を、何処かに導いてくれます。 街灯に集った羽虫たち。 その、暗い瞳。 光は無個性な白色をたたえて。 僕を見放すみたい。 くらい、くらい。 数多の輪郭が溶けた、暗闇。 背を見送って。 テールランプか、何かの看板か、分からないような暖色の光。 夜にはあ

          言の柱。

          円環を外れることさえ予定調和の、安易な祝祭日。

          氷水の中で溶けていく氷は、自分の温度にも耐えられないで溶けていく。 苦しむために生きているみたい。 窓辺に、花を飾ろう。 それは小さく日々を彩って、 そういった小さな優しさを、全て壊してしまうみたいな衝動を浮き彫りにした。 「自罰的な感情で何が生まれるの?」 魔が差したみたいに、あるいは木漏れ日みたいに、それは間欠的な理性だった。 「黙れ。お前が一番私を罰するくせに。」 私は悪態で返す。 ただし、あくまでそれは親愛を伴って。 だって、全てに意味がないこの世界で意味を

          円環を外れることさえ予定調和の、安易な祝祭日。

          ずっと底へ。

          フラスコに収まった右脳。 0と1を繰り返す左脳。 発光する酸素と金剛。 トライアングラーな、命。 監視し合う、パノプティコンの、自意識。 炭酸水を床に溢した。 床で弾けた二酸化炭素、気化した、私。 床に染み込んだ、水、私。 分離して、元にもどって、はなから、私。 何処からと、何処までが私? それは花瓶に活けられた命。 いいえ。命も、人間も、特別じゃない。 ただ違う役割をこなすだけ。 ただ、続いていくだけ。 それは美しい、目まぐるしい、苦しい世界。 私は、それを愛す

          ずっと底へ。

          詩集的な。です。

          私が燃える水になって、いつかの誰かの気持ちを明るく照らしていたとしても、それはどうだっていいこと。 私が勝手に君たちを燃やすみたいに、君たちも勝手に私を燃やせばいいと思う。 愛情のかわりに確かな暖かさをあげるから。 いつまでも消えない灯りの中に私も居るって分かってる。 だけど、私の寂しさは残らないでほしい。 それは全部、人にあげた物だから。 窓の外が美しいだとか、だいたいそんな理由で朝は起きていた。 観賞用の窓。 切り取った外界。 ただ、それを嘘だなんて思うのを辞めただけ。

          詩集的な。です。

          ヴォイドロイド。

          何度も焼き直した言葉は少しずつ色を失って。 どこにも届かない言葉を、ただ忘れないように呟いている。 誰とも交わらない、衛星軌道の上で。 色の無くなった言葉、色の無い世界。 未開拓の闇で満たした、行き場の無い世界。 ただ、かつて触れた暖かさにすがり付いているだけ。 いずれ自分を忘れたら、私はどこに行くんだろう。 想いを馳せる間も無く通りすぎたデブリが、いつか星になるように願いを込めた。 あわよくば、いつかの私もそこに居たら良いと思う。 星の運行は美しく、その不規則性

          ヴォイドロイド。

          夜魔。

          誰かが階段を昇る音なのか、はたまた向こうの道路を走る車の中の音楽なのか、一定のリズムで低い音が鳴る。 少し時間を置くと、尻窄みに音は小さくなっていった。 また雨の音。 街は雨に濡れて、夜の灯りを曖昧に反射するばかり。 自販機で缶ジュースを買う。 空虚な体には丁度いい刺激物だった。 街灯がオレンジだったり白だったり、水溜まりと缶ジュースのパッケージで輝いている。 眩しくない輝き。 雨がコンクリートに当たって弾ける音が、脳ミソのノイズになって何も考えられなくなった。 それが心地よ

          眠たいのか死にたいのか、分からないような。

          校舎の白い壁に何度も反射した雨が、いつか染み込んでしまったみたい。 コンクリートの道、ずっと続いて。 新しくなった体で歩いていく。 子供たちの声、私の声。 差なんて分からないけど。 先生が言っていた。生きていくのには寂しさが必要だって。 私はそれが寂しかった。 実体の無いまま、生きていけたらよかったけど。 簡単な想像と寂しさの報復でやっと生きていけるらしい。 それでも歩いていくしかなかった。 幸せはそこら中にあったから。 でも私は、不幸せを忘れることが寂しかった。 教室では将

          眠たいのか死にたいのか、分からないような。

          生存権。

          夜が明ける頃に、世界は私に優しくする。 仄白い光が額を撫でて、忘れていた暖かさを思い出させる。 何百億もの時代、絶やされることなく灯し続けられてきた灯りは、朝の冷たい空気に混じって私を抱き締める。 苦しむことだって、私に与えられた使命なんじゃないかって、思い出して反芻する。 トラックのヘッドライトだけが照す午前五時、誰も私を見ていないのが、なぜか心地よくなって。 世界にほどけるみたいな踊りを踊った。 綻び合う、世界の指向性に身を任せて。 靴に雨水が侵食して、身体がほどける。混

          螺旋が向かう先、四季の重なり。

          高架下、四つ葉のクローバーを探した。 幸せを見つけて、押し花にして、そうやって確かな形があれば私は生きていけると思っていた。 いつだって、代替できない物を探している。 それはあるいは最初から、傷つくことを望んでいるようで。 曇り空の下、仄かに暗いそこで規定された幸せをさがした。 私たちは、いつだって世界に期待していた。 まるで意味があるみたいに、感情と心を繰り返した。 幸せに向かう力が、最初から組み込まれた物だって知らなかった。 期待と愛情の区別すらつかなかった。 なにか気持

          螺旋が向かう先、四季の重なり。

          君謀る、我ら想うまで。

          近づくにつれて輝きを増す常夜灯。 参道を歩く度、僕は遠い過去を思い出していた。 たぶん、それは強い光だったから。 忘れてしまった、遠い、遠い。 境内に入ると、曇天からは雫がこぼれ始めた。 神様が居るとしたら、それは僕たちのことだろう。 この参道みたいに、その道のりを歩かされる、きっと運命の奴隷みたいなもの。 祈る手と、心を止めないように。 いつか、僕たちの帰る場所が出来ますように。 祖霊達を乗せた揺り篭は、川みたいに流れる物質群に意味を与える。 僕たちの向かう先。 帰ろう。

          君謀る、我ら想うまで。