君謀る、我ら想うまで。

近づくにつれて輝きを増す常夜灯。
参道を歩く度、僕は遠い過去を思い出していた。
たぶん、それは強い光だったから。
忘れてしまった、遠い、遠い。
境内に入ると、曇天からは雫がこぼれ始めた。
神様が居るとしたら、それは僕たちのことだろう。
この参道みたいに、その道のりを歩かされる、きっと運命の奴隷みたいなもの。
祈る手と、心を止めないように。
いつか、僕たちの帰る場所が出来ますように。
祖霊達を乗せた揺り篭は、川みたいに流れる物質群に意味を与える。
僕たちの向かう先。
帰ろう。
先に行った彼らが笑っていたかも思い出せないで、ただひとつ、祈りを重ねた。













雨宿りにはちょうど良い。
森の廃屋。
不気味さとは裏腹な生活の跡と緩やかな停滞を孕んでいる。
ただそこにある、それはきっと、心の奥まった場所にある優しさ。
僕たちが発した言葉は、ただの言葉になる。
心がそのまま残ったりはしない。
だけど、だからこそ、人がもう手を加えない、歴史から解離した過去の構造物には暖かさを感じた。
街が好きだった。
それを形作るのは、確かな優しさだと思うから。
あるいは、雨が好きだった。
循環する命には、きっと意味があると感じれるから。
きっと、僕たちが帰る場所は先にしかない。
だから、思い返す。
僕らの意味を。
僕が愛した物を。













博愛みたいな、そんなもので何を語れば良いだろう?
晴れ間から射し込む光が、足元を照らしていく。
強烈な感応と、明確に分かたれた愛情をどうやって持てば良いだろう。
眩しくて目を背ける。
そこには、白とびしたような平等しか無いのに。
眩い空からは、未だ雨が降る。
天も泣くのなら、僕らだって泣いて良いだろう。
きっと、愛するために分かたれた僕ら、今度は二つのままで一つになろう。
魚が腕を生やしたみたいに、あなたを抱き締めるための器官が要る。
そうなるまで、僕らはあなたの一部だから。
自己愛が他者愛になるまで、何度でも。
ただひとつ、祈りを重ねた。

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