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ソクラテスのすゝめ:Spotify誕生物語から考える同社の中長期的な展望

こんばんは。前回記事からしばらく時間が空いてしまいましたが、本日はこちらの書籍をご紹介させていただければと思います。

「Spotify:新しいコンテンツ王国の誕生」

読んだ感想は以下4点です。

・Spotify誕生物語である同書は、個人的には技術的な話が前半多い点・登場人物が多い点から少し読みづらいところがあった。

・一方で、Spotify TVのような世に出てない失敗談や音楽業界に変革をもたらした同社がどのような苦難と向き合ってきたかについて学ぶことが多かった印象

Podcast市場の開拓を通じて同社が”第2のNetflix”になれる期待を持っていたのですが、扱っているコンテンツの構造上、一概にはそうは言えない

・音楽配信プラットフォーム単体で運営を続ける同社がどこまで求心力を維持できるかが同社を中長期的に見るにあたっての1つのポイント

ソクラテスの戯言:音楽業界はやはり難しい...

音楽業界ビジネスモデル

とにかく同書を読んでて思いましたのが、一見名実ともにAppleと並ぶ同社ですらこれだけ多くの壁を乗り越え、今も問題が山積みであるということです。同書でも細かく描かれていますが、ソニー・ワーナー・ユニバーサル等の主要レーベル会社にレコード売上→ダウンロード売上→ストリーミング売上という構造変化を受け入れてもらうための苦難、フリーミアムモデルを導入した同社に対してボブ・ディランやテイラースウィフトのような著名アーティストによる同社プラットフォームへの配信停止、強いてはジェイ・Z/ビヨンセに代表された著名アーティストがチームを組んで直接的な競合会社であるタイダルを設立したなど、常にステークホルダーが多い同業界におけるビジネスの難しさがよく理解できるものでした。

また、目先の権利関係だけではなく中長期的な成長ストーリーを描くにあたっても、同社の立ち位置が難しいことを改めて感じさせられました。まず、シンプルですが、同社が相対するのは無数の類似業者だけではなく世界最大のIT企業であるAppleだということ。やはり音楽の単一プラットフォームを運営する同社にとって世界中のapple製品を通じてハードとソフトの両輪からユーザーを掌握しているApple社との競争は容易ではないということが同書を通じてわかります。また、同書には言及されていませんが、最近では米津玄師が世界的人気ゲームFortniteにてライブを行うなど、音楽の享受される方法そのものが多様化しています。音楽及びそれを創作するアーティストの配信/活躍の場がソーシャルネットワークを中心に広がる中、音楽配信プラットフォーム単体で運営を続ける同社がどこまで求心力を維持できるかは1つのポイントになると思います。

最近の同社の動きとして、Podcast関連企業の買収を進めて音の一大プラットフォームを築き上げようとしています。確かに同市場は今後も大きな成長性が見込める魅力的な市場ですが、それゆえコンテンツを直接有していない同社は高額なロイヤリティ―フィーを支払わなければなりません。筆者自身もこうしたPodcast市場の開拓を通じて同社が”第2のNetflix”になれる期待を持っていたのですが、結論一概にはそうは言えないと感じています

映像コンテンツと音声コンテンツですと同じ”オリジナルコンテンツ”だったとしてもその価値に演者が占める価値がまったく違う点を留意しなければなりません。例えばNetflixがオリジナルコンテンツを作成するにあたって演者1人がボイコットしたところでそれは演者、企画、音楽といった数多くの要素からなる集合体の全体価値の一部に過ぎません。一方でPodcastや音楽に代表される音声コンテンツに関してはその演者1人がそのコンテンツのほぼ全てを占めています。プラットフォームとして発揮している価値が配信にとどまっており、オリジナルコンテンツを生み出すアグリゲーターとしての価値はNetflixなどに比べて弱い印象を受けざるを得ません

個人的にはSpotifyユーザーでもあり、中長期的に同社を応援したい気持ちは強いのですが、Appleと双璧をなす音の帝国だからといって安易に同社が伸び続けると結論付けるのは少し安易なのかなと思った次第です。今回の記事を面白いと思っていただいた方は類似した内容の記事を下記にまとめさせていただきましたので、是非ともお手すきに読んでみてください!

少し長くなりましたが、本日も最後までお読みいただいた方はありがとうございました。気に入っていただいた方は是非ともフォローお願い致します!既にいつもお読みいただいている方は引き続き宜しくお願い致します!皆さんのご意見・感想・質問お待ちしております!!


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