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「2023年本屋大賞」を見て思い出した2冊

3年ぶり2度目の受賞。

複数回は恩田陸さん以来ですね。おめでとうございます。

ちなみに私が受賞を予想していた安壇美緒「ラブカは静かに弓を持つ」は、惜しくも2位でした。

今回ノミネートされた10人の中で、唯一お名前を存じ上げなかった方です(スイマセン)。こういう書き手を見出し、広く紹介していくことが「本屋大賞」の意義ではないかと考えています。

結果に関しては、投票した全国書店員の自由意志を尊重します。関係者の皆さま、本当におつかれさまでした。一方で、埋もれてしまった名作や正当な評価を受けていない作家に光を当てることをより意識していきたい。それこそが我々の果たすべき使命のひとつだから。

担当ではないので、職場の文芸書コーナーには一切関与していません。しかしビジネス書や人文書などに関しては、上記のポリシーと売り上げのバランスを考慮しつつ選書しています(最近は少々サボりがちでしたが)。知名度こそ低いけど抜群に面白く、心に火がつく。そんな本を見つけ、紹介していきたい。たとえば↓とか。

2019年出版。でも初めて読む人にとってはどんな本も新刊なわけで、内容も古びてはいません。特に「本屋は、情報ではなく思想を一生懸命売ればいい」「われわれ人間は、困った状況をなんとか解決しようと頑張ってきた生き物の末裔」という一節に胸を打たれました。

こういう良書を少しずつ棚に増やし、売り上げに繋げたい。そこが本屋で働くうえでの重要なモチベーションになっています。

「本屋大賞」も「芥川賞・直木賞」も言ってしまえば本を売るための賞です。無論悪いことではない。商売が成り立たなければ店は潰れ、私たちは職を失ってしまいます。本屋が生き残るためには本を売らないといけない。と同時に忘れてはいけないものもある。数日前に再読した↓が思い出させてくれました。

こんなことが書かれていたのです。

「商売なんだから損得勘定は絶対必要なんだけど、だからこそ『ここから先は損得抜きで譲れない』っていうものを持っていないと、あっちの世界にどんどん取り込まれていっちゃうんだ」

貧すれば鈍する。人はそんなに強くない。守るものがあればなおさらです。頭では何が正しいかわかっていても、善意ゆえに強大な不条理の前に膝を屈してしまう。私もそんな無力なひとりに過ぎません。ただ最大限に抗いたい。「売れる本」を売って店を守り、そのうえで並行して「売りたい本」も売る。それならばできる気がするのです。

「本屋大賞」が「あっちの世界」に取り込まれたなんて思っていません。ただ取り込まれてほしくないので、自戒も込めて書かせていただきました。来年も楽しみにしています。

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