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「NT」に言葉は不要~6.7大阪城の煽りコラム~

リーグ戦やトーナメントではなく、王座や挑戦権も懸っていない。特殊な試合形式でもない。そんなただの「スペシャルシングルマッチ」がこんなに楽しみなのはいつ以来でしょうか。

前哨戦も見応えがあって毎度驚かされていますが、試合後の様子がまた興味深い。飯伏選手とジェフ・コブがリング上に正座して向き合い、何やら細かく会話するのです。

たぶん飯伏選手はさほど英語がわかるわけじゃないし、コブも日本語はほとんど話せないはず。でも互いに互いの感情を理解し合っている様子。この日はコブが笑みを浮かべ、飯伏選手は途中で項垂れるようなしぐさを見せました。

↑の記事によると「覚醒モードのおまえを出せ」「ものたりない」的な発言でハッパをかけたものと推察されます。

私は飯伏選手というのは恐ろしく頭の回転の速い人だと思っています。感性がぶっ飛んでいることに加え、頭に浮かんだことを即身体で実践できるタイプ。イコール理屈や論理を飛び越え、一足飛びの直観で最適解へ到達してしまう。

彼のマイクやコメントが時々意味不明なのはそのせい。彼の中では言語化するまでもなくわかりきった話なので、後から適切な言葉に変換して他人へ伝える作業がスムーズに運ばない。F1のマシンにローギアで徐行させるようなものなのでしょう。

前に書いたかもしれませんが、サッカーのヨハン・クライフもこういう人でした。とにかく言葉がわかりにくい。たとえば「イタリア人は私たちに勝つことはできない。でも、私たちは彼らに負けることができる」とか。

おかげでメディアから「クライフ語」と呼ばれ、「彼の言葉には翻訳が必要」「思考があまりに速過ぎる」「まだ前の説明が終わっていないのに、もう次の話に進んでいる」と評されました(詳しくは↓をどうぞ)。

彼らからしたら直観が先で、言葉は後から来るもの。だから飯伏選手は異なる言語の壁とは無関係にコブの言わんとすることを把握し、「俺が悪いんだろ?」と逆ギレしたのだと思われます。コブの方も飯伏の意志を正確に掴んでいる。つまりどちらも「機動戦士ガンダム」における「ニュータイプ」みたいな存在なのです。

エンターテインメントであるプロレスでは試合と同じくらい、前後のコメントが重要視されます。今後への期待感を煽るために。でも彼らに関してはある意味それは不要で、むしろ無粋ですらあります(本当はこんなコラムも書かなくていいのかもしれない)。ただ惜しいことに、私も含めた多くの人間はいまだオールドタイプ。こういったアナログ且つロジカルな理解が欠かせないのです。

「飯伏幸太 vs ジェフ・コブ」理屈や理解を超越した激闘が見られます。ぜひ。


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