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「前後裁断」と「これ以上はやらない」の共存

あれは1994年の秋。

巨人が西武を破り、日本一に輝いた直後のことです。広島ファンの先生が授業前に「来シーズン、巨人は優勝しない」と予言しました。理由は「日本シリーズで酷使された桑田が不調に陥るから」というもの。

広島の佐々岡投手、ヤクルトの岡林投手といった直近の事例を挙げて説明されたので「なるほど」と納得したのを覚えています。数学教師らしいロジカルな分析でした(ちなみに95年の桑田投手は5月の試合でフライ捕球時にひじを負傷し、シーズンを棒に振っています)。

阪神タイガース・伊藤将司投手の今年の不振も、あるいは同じ原因かなと思いました。よく「投手の肩やひじは消耗品」といわれます。オフに休んで治療すれば100%に戻るというものではないのでしょう。

しかも彼は元々肩に不安を抱えていたはず。「故障したくない」という恐怖が半ば無意識にピッチングのメカニックを揺るがし、制球や球威に影響を及ぼしたのかもしれません。

どんな職業でも「無理をする」局面はある気がします。書店員でいうなら休む人が出たときや年末年始、大型連休など。ただ当たり前ですが、ピンチを乗り切った後も人生と仕事が続くわけです。

私の場合、現在進行形で働いている際は禅の「前後裁断」を貫きます。過去も未来も見ず、目の前のいまに集中する。一方、その前段階ではある程度のペース配分や線引きを定めます。「ここまでは頑張る。これ以上はやらない」と。

近視眼的な捉え方をする人には、ビジネスライクとか情に欠けると思われるかもしれない。でも長い目で見れば心と身体を壊さない方が己と会社、双方のためになる。先に述べたように「ピンチや繁忙期の後も人生と仕事が続く」からです。

伊藤投手の現状を見ていると若い頃の自分を連想し、ちょっと他人事に思えません。復活を遂げますように。

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