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「超実力派リーダー」を育む二冊

新潮社から出た「砂まみれの名将」を読みました。

まずタイトルが素晴らしいです。

野村克也さんは90~98年にヤクルトスワローズで優勝4回&日本一3回を達成しました。適材適所に人員を配する「再生工場」の妙に唸り、緻密且つ知的な弱者の兵法「ID野球」に魅了されました。マスコミを味方に引き込み、話題を作るための「ボヤキ」にも楽しませてもらいました。

しかし阪神タイガースでは99~01年と3年連続の最下位に沈みました。奥様が脱税容疑で逮捕されるなど、まさに天国から地獄(実はもっと大変なことも起きていたようです。詳しくは本書を)。でもノムさんは終わりませんでした。

東北楽天ゴールデンイーグルスの監督としてプロ野球界に復帰するまでの「砂まみれの日々」にこそ人間・野村克也の本質が詰まっていると確信しました。誰よりも野球が好きで情に厚く、義理堅い。シャイでマイナス思考。子どものように純粋でありつつ、駆け引きや根回しを厭わぬ策士の顔も併せ持つ。とにかく「人間臭い」御仁でした。

人間臭いといえば奥様も同じです。メディアの創り上げた「サッチー」とはだいぶ印象が異なりました。気性が激しく、他人に対して要求の厳しい面はたしかにあります。でも実態は気配りのできる優しい方なのです。このこともぜひ多くの人に知って欲しい。

職場ではスポーツ書の棚で落合さんの「嫌われた監督」と併売しています。

彼らは信用できるトップです。専門家としての戦術&戦略眼に加えて哲学的な深みも纏っている。と同時に狷介で口が悪く、世間が考える「いい人」の類型には必ずしも当てはまらない。煙たがる人の方が多いでしょう。でも仕事への情熱と探究心を備え、世の中を見返すための努力を惜しまぬ姿に感化されるメンバーもいるはず。確かな理論に裏打ちされた実績をちゃんと残していますし。

いま日本で求められているのは、こういう「超実力派リーダー」ではないでしょうか? 社交性や人当たりのよさ、話の巧さ、見栄えや好感度など二の次。忖度せずに正論を吐き、上にも下にも世間にも敵だらけ。それでも「各個人の人生及び組織のいまと未来にとって真に必要なこと」を判断し、粛々とおこなう。お金も栄誉も程々でけっこう。そんなストイックで果敢な指導者が待望されているのです。

「とにかく選挙で勝ちたい。正しいことをして嫌われるぐらいなら、国民に迎合して好かれたい」と顔に書いてある候補者には票を入れる気がしません。一時的に嫌われてもいいじゃないですか。公にとって有益なことを実行している自信があるのなら。わかる人はいずれわかってくれます。あれだけ毒を吐いたノムさんが多くの教え子や記者に尊敬され、慕われているように。

政治家だけではなく、後進を育てるポジションで日々奮闘されている方々にもオススメです。名将たちの名著に学び、お互いの現場で少しずつ世の中を良くしていきませんか?

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