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なんとなく「縁」を感じる2冊

数日前、捨てずに残していた大昔の「週刊プロレス」を手に取りました。

発行日は2002年の6月18日。表紙は長州力さんです。

懐かしい記事がたくさんありました。いまや業界のトップスターである棚橋弘至選手が「これでボクも初めてG1に出られるかも」みたいなコメントをしていたり。あと新日本プロレスで開催中の「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」は30回目ですが、この号には9回目の同大会のレポートが載っています。

そんな中で特に読み込んでしまったページがあります。題は「プロレスラー美男子列伝」で、著者は脚本家の内館牧子さん。男性レスラーの「美しさ」を独自の角度から捉えた短いエッセイです。

のちに連載をまとめた本が出ました。購入して読んでいるはずですが、部屋のどこにも見当たらない。失業中に手離してしまったのかも。いまや絶版です。惜しいことをしました。

ちなみに上記の「週刊プロレス」に載っていたのは第62回。プロレスリング・ノアに在籍していた本田多聞選手を紹介しています。「海のような包容力を感じる」と評し、自身が作詞した「ハマナスの眠り唄」と絡めて男気のあり方について論じていました。

この連載は当時から気になっていて、いまでもかなり記憶しています。ヒールに転向して大ブレークした蝶野正洋選手を、シェイクスピアが戯曲にした「リチャード三世」になぞらえていました。これがきっかけで同作と出会えたので感謝しています。

シェイクスピアの描く悪の主人公といえば「マクベス」が有名です。しかし良心の呵責に苛まれる彼とは異なり、リチャードにはダークサイドへ堕ちる過程で迷いが見られません。野望のためなら恥も外聞も捨てるし、どれだけ罵詈雑言を浴びせられても挫けない。どこまでも卑屈になって心にもない美辞麗句を吐き通す。

やっていることこそ非道の極みですが、メンタリティの強さと信念の揺るがなさに限っては尊敬できます。私が持っているのは白水Uブックスですが、福田恒存さんの訳した新潮文庫版と読み比べてみたい。

「リチャード三世」は新刊書店で近いうちに買います。内館さんの本は図書館かな? 捨てなかった古い「週刊プロレス」のおかげで興味を抱いた2冊だから、なんとなく縁を感じます。こういう出会いは大事にしたい。

最後に「プロレスラー美男子列伝」の復刊を希望します。書き下ろしを加えての文庫化はどうでしょうか? 

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