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「思い出のお店」から学んだこと

休みの日。近所の定食屋に行ったら、店主の女性が「このお店、今日で最後なんです」と教えてくれました。ほぼ毎回同じ注文をするので、たぶん顔を覚えられたのでしょう。

「ごちそうさまです」と食器を戻し、外へ出る前に頭を下げました。ああいう瞬間ってなかなか言葉が出ません(かつて職場が閉店する際、若い男性客が会計後に黙ってお辞儀をしてくれたことを思い出しました)。気持ちは伝わったと信じます。いままでありがとうございました。

でも本当に意外でした。けっこう流行っていたのに。

気になって調べると、学生時代に通った飲食店の多くがなくなっていました。携帯電話で話すとオヤジさんがマジ切れするカウンターだけのラーメン屋とか。麺が太く縮れていて、素晴らしい食感でした。チャーハンも美味しかったなあ。

他の料理を頼むと「ナスにしなよ」と店主に言われることで有名な食堂もいつの間にか閉店していました。私は何も知らずに入ってラーメンを食べたのですが、他の客が全員「ナス」しか言わないのでおかしいなと思った記憶があります。ちなみに「ナス」の正体は「ナスと豚肉の味噌炒め定食」でした。たしか。

時々無性に懐かしくなります。そして「もっと通えば良かった」と後悔に襲われる。飲食店に限った話ではありません。たとえば何度か利用した街の本屋さん。「俺が後を継げなかっただろうか」「立ち読みばかりしてごめんなさい」「司馬遼太郎『木曜島の夜会』を衝動買いさせてくれてありがとう」様々な思いが込み上げてきます。

と同時に、まだ生き残っているお店があることを知って「行こう!」と奮い立ちました。

営業していること。それ自体がファンにとっては尊い。そして考えてみると、そういうお店には続くだけの確たる理由があるのです。味、店主の人柄、空間の心地良さ、新たな発見。どれも他では得られぬもの。自分の職場にそれはあるか? またひとつ学びました。

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